恋の神様は襟足が長い

サカミキ

第四話 夕凪の思い(脚本)

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〇教室
  小学、中学と俺の側にはいつもそーちゃんがいてくれた。
  引っ込み思案で不器用な俺を
  いつも引っ張り出してくれた。
  だから、高校に行っても当たり前のように
  一緒にいるんだと思ってた。
  でも、俺たちは別々の高校に進んだ。

〇学生の一人部屋
  高一の夏
  母が自宅で倒れ、そのまま一人で逝ってしまった。
  もっと早く帰っていれば、もっと話しておけば
  もっと優しくしてあげれば・・・
  後悔ばかりが残った。
  姉のおかげで生活の方はなんとかなった。
  けど、気持ちの方はどうしようもなくて・・・
  そんな俺を、そーちゃんが気遣ってくれた。
  夏休みに入ると、毎日のように一緒にいてくれた。
奏羽(高校生)「ゆー君」
  そーちゃんとの間に流れる友情以上の空気に
  戸惑い、怖くなった。
  寝ている俺にキスをしたのにも気づいていた。
  このまま一緒にいたら
  何かを壊してしまうような気がした。
夕凪(高校生)「そーちゃん 女の子に告白されちゃった」
  夏休みが明けて、都合よく女の子に告白された。
夕凪(高校生)「どうしよう?」
  どこかで、そーちゃんが止めてくれるのを期待していた。
奏羽(高校生)「付き合っちゃへば」
夕凪(高校生)「そうだね」
夕凪(高校生)(そーちゃんとは友達がいいんだ 友達なら、ずっと一緒にいられる)
  そう思ったのに・・・
  そーちゃんは俺から離れていった。

〇中庭
  何人かの女の子と付き合ったが、長続きしなかった。
  誰といても、そーちゃんといる時のように
  楽しいとは思えなかった。
  高二の終わり、男の先輩に告られて付き合うことになった。
  先輩にとっては卒業前でちょうどよかったんだと思う。
  それなりに好きだった。
  付き合いは半年ほど続いて自然消滅した。
  男の抱き方を、この先輩から教わった。
  この時、自分がゲイであると認めざるを得なくなった。
  先輩とのことが噂になり
  好奇の目で見られるようになった。
  もともと、馴染めている訳でも無かったので
  どうでもよかった。
  母親譲りで色素が薄く、色白で目も髪も茶色い。高校に入ると背も伸び、目立つ風貌なわりに人より何か秀でている訳でもない。
  周りの期待には応えられない。
  
  そーちゃんに会いたかった。
  
  すべてを曝け出せるのはそーちゃんだけだった。

〇おしゃれな大学
  大学に入って、空と出会った。
  
  知的で控えめな印象と違い
  ちょっと強引なアプローチをされた。
空(大学一年)「僕と付き合って!!」
夕凪(大学一年)「・・・」
空(大学一年)「もし、男同士ってことに抵抗がないなら・・・」
夕凪(大学一年)「正直、抵抗は無いけど 君のことよく知らないし」
空(大学一年)「これから、知ってくれればいいから」
夕凪(大学一年)「俺の事もよく知らないでしょ? 早くない? きっとがっかりするよ」
空(大学一年)「大丈夫 一目惚れだから」
夕凪(大学一年)(大丈夫って・・・何が?)
空(大学一年)「チャンスの神様には前髪しかないんだって」
夕凪(大学一年)(変なヤツだな)
  真っ直ぐに気持ちを伝えられる空を凄いとおもった。
  
  自分はずっと誤魔化してきたから・・・
  きっかけは、空からの告白だったけれど
  彼の一途さに惹かれ、どんどん好きになった。
  空は、俺が残念イケメンだとわかっても気にも留めていないようだった。
  一緒にいられるだけで幸せだと全身全霊で伝えてきた。
  純粋で情熱的な俺の恋人。
  心から幸せにしたいと思った。

〇学校の校門
  成人式でそーちゃんと再会した。
夕凪(わっ! そーちゃん 金髪になってる)
  チャラくなっていて驚いたけれど、
  思いきって話しかけてみた。
  そーちゃんは変わらない笑顔で応えてくれた。
夕凪「また前みたいに会いたいな」
  その時は、空を紹介しよう。

〇黒
  それなのに・・・俺は病気になった。
  そーちゃんとの友情、母さんの存在、空との幸せ
  当たり前に思っていることは簡単に
  当たり前じゃなくなった。

〇病室(椅子無し)
  病室の窓際に並んで体育座りをする奏羽と夕凪。
夕凪「ねぇ、そーちゃん」
奏羽「なぁに、ゆー君」
夕凪「これ、浮気になっちゃうかな?」
奏羽「死んでるからいいんじゃね」
  奏羽が夕凪の肩に頭を持たせかける。
夕凪「死んでるからってグイグイくるね」
奏羽「ダメ?」
夕凪「ダメじゃないけど 今じゃないっていうか・・・」
奏羽「・・・」
夕凪「そーちゃんとずっと一緒にいたかったよ 友達としてでいいから」
奏羽「ただの友達じゃ足りねーよ ゆー君の一番じゃなきゃ・・・」
夕凪「ちょっと遅かったな 空と出会っちゃったから」
奏羽「・・・とに、死んでんだからサービスしろって」
夕凪「お前が一番だよ」
奏羽「何だよ、その棒読み」
  夕凪が奏羽の頭に自分の頭を傾ける。
夕凪「とりあえず、寝たふりでもする?」
奏羽「そだな」
  二人は目を閉じる。

次のエピソード:第五話 俺がいないとダメみたい

コメント

  • 二人の目線で学生時代のお話を読んで、切なさがぐっと増しました。すれ違いすぎてて、何ていうか……もう少しお互い素直になってれば良かっただけなのに、と。
    この二人、ラストはどこに向かうのでしょう?
    夕凪には空がいるし、奏羽は自分の体に戻れないし。……どう転んでも切ない終わり方になってしまいそうですが、二人が思い合うハッピーエンドになったらいいなぁ(;_;)

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