one phrase ~言葉より前の物語~

本間ミライ

第9話 クロスワードパズル 前編(脚本)

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本間ミライ

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〇黒背景
???(はぁ・・・はぁ・・・)
???(どうしたの?)
???(奴らが来る! 今すぐテレパシープログラムを起動させないと・・・!)
???(じゃあ・・・)
???(ああ。これでお別れだ・・・)
???(また・・・会える?)
???(どうだろう。無事プログラムが起動しても、僕はこのまま殺されてしまうだろう)
???(そんなの嫌! 私はアナタと・・・)
???(どうかみんなを・・・ この世界の人々を守ってやってくれ!)

〇古書店
バベル「それで・・・その後は?」
ミア「・・・・・・。耳を塞ぎたくなるような 激しい轟音が聞こえて来ました・・・。 バンバンバンって・・・」
バベル「それ、銃声かもしれないね・・・」
ミア「銃・・・? それって旧世界の武器のですか?」
バベル「うん・・・。 古文書によると、旧世界では昔、 大きな争いがあったと記されているんだ」
ミア「争い?」
バベル「そう。旧世界には、住んでいる土地ごとに  “国”と呼ばれるものがあって、 その国同士が激しく争っていた・・・」
ミア「・・・・・・」
バベル「国ごとに異なる文化があり、話す言葉も それぞれ違ったと言われているんだ」
ミア「それじゃあ、 お互いに言葉を話せたとしても、 分かり合えない事もあったんですね・・・」
バベル「そうかもね。だから争いが 起こったのかもしれない・・・」
バベル「言葉については、核心に触れようとすればするほど、その情報には規制がかかる。 何者かの意思によって、隠されているんだ」
  隠された情報・・・。
  一体誰が何の為に、
  そんな事をするのだろう?
  私が頭を悩ましていると、
  扉を叩く音が聞こえて来た。
中年の男性「ここが『one phrase』か?」
  私とバベルさんは驚いた。
  初めから言葉を話せる人が
  ここを訪れるのは異例の事だったからだ。
バベル「はい。ここで合っています。 あの~こんなこと僕が聞くのも変だと 思うのですが・・・なぜ言葉を?」
中年の男性「ああ。昔、ここに来たことがあるんだ。 父に連れられてな・・・。その時は爺さんが、俺にインストールしてくれたっけな」
バベル「ああ・・・なるほど。祖父の時代のお客 さんでしたか・・・。それでお名前は?」
中年の男性「マルコだ。実は君達に頼み事があるんだ」
ミア「頼みたいこと?」
  マルコさんは懐から二枚の紙を
  取り出した。
  一枚目にはタテヨコ、5×5の四角の
  マスに区切られた図形が描かれており、
  そこには単語が描かれている。
  二枚目には、数字の隣に謎かけのような
  文章が書かれていた。
ミア「これは・・・?」
バベル「クロスワードパズルだね」
ミア「クロスワードパズル?」
バベル「言葉を使ったパズルだよ。 二枚目の紙には、それを解くカギとなる ヒントが書かれているんだ」
ミア「やった事あるんですか?」
バベル「昔、祖父とこれでよく遊んだんだ。 懐かしいなぁ・・・」
マルコ「実は先月、父が亡くなってな。その父が 残した金庫があるのだが、開けるには 3ケタのパスワードが必要なんだ」
ミア「パスワード?」
マルコ「ああ。そのパスワードが、 パズルを解く事で分かるらしいのだが、 私にはサッパリでね」
マルコ「そこで、言葉の専門家である君達に お願いしに来たと言うわけだ」
バベル「なるほど」
マルコ「どうだ? 解けそうか?」
バベル「時間をかければおそらくは・・・」
マルコ「なるべく早めに頼むよ。 あのがめつい父の事だ」
マルコ「金庫には莫大な財産を 隠しているハズだからな」
  この人からはあまり気持ちの良い
  印象を受けなかった。
  父親に対しても何処か冷たい態度だ。
バベル「はい。 ちなみにお父さんのお名前を伺っても?」
マルコ「・・・・・・。ペドロだ」
バベル「ペドロ・・・。もしかしてあの資産家の ペドロさんですか?」
マルコ「ああ・・・」
ミア「知ってるんですか?」
バベル「とても偉大な人だよ! テレパシー障害の 人にも多大なる支援をしている」
マルコ「・・・・・・」
バベル「僕の祖父とも交流があってね、基本言語 プログラムが今の形になったのも、 ペドロさんの協力があったからなんだよ!」
ミア「今こうして話す事が出来るのも、 そのペドロさんのおかげなんですね!」
バベル「そうだね! でも、亡くなったなんて・・・、 全然知りませんでした・・・」
マルコ「まあ、あまり公にしなかったからな」
マルコ「それで、どうなんだ? どれくらいで解けそうだ?」
バベル「うーん。そうですね・・・」
  バベルさんは一度考える素振りを見せた後、マルコさんにあることを尋ねた。
バベル「その前に一度、金庫を見に行っても 良いですかね?」
バベル「身近な所にもヒントが あるかもしれませんし・・・」
マルコ「まあ、そう言うことなら、良いだろう」
バベル「ありがとうございます」
マルコ「よろしく頼む」
  そう言って、マルコさんは
  『one phrase』を去って行った。
ミア「また出張ですね」
バベル「そうだね。そうだ! 今回はミアちゃんにも来て貰おうかな!」
ミア「え、何でですか?」
バベル「ペドロさんの屋敷には、ここには無い 言葉に関する資料が沢山あるんだよ」
バベル「もしかしたら前にミアちゃんが言っていた “よく分からない感情”のヒントも 見つかるかもしれないよ?」
ミア「・・・・・・」
  よく分からない感情・・・。
  それは私がカナタを想うと、
  沸き上がる感情だ。
  苦しいような、もどかしいような、
  それでいて何処か
  満たされているような・・・。
  心が地に足のつかない
  フワフワした状態だった。
  様々な感情や感覚が入り交じり、
  上手く言葉には出来ない。

〇病院の廊下
  このよく分からない感情と
  向き合おうと決めてから、
  私はカナタと上手く話せずにいた。
カナタ「ミア? 聞いてる?」
ミア「え、あっごめん・・・何の話だっけ?」
カナタ「どうしたの? 最近元気ないみたいだけど・・・」
ミア「いや、ちょっと考えごとしてるだけ・・・ 気にしないで」

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次のエピソード:第10話 クロスワードパズル 後編

コメント

  • このお話を読んでいると
    本当に言葉というものは不思議で
    なぜヒトに言葉をもたらされたのか
    考えてしまいます、いいお話です。

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