野菜の世界に落ちた天才投資家(脚本)
〇田園風景
シャインマ・勝子「はよう、引っこ抜きんシャイ!活きのええ女が出てきんマスカッツ!!!」
美濃部創一郎「だ、黙れババア!どこの世界に土で育つ女がいるというんだ!」
シャインマ・勝子「カッツゥ?兄さん。この世界は初めてシャインマス?」
夢が浮世か。浮世が夢か。
人の運命(さだめ)の、是非もなく
流れ流れて目の前、老婆。広がるは田園風景。
美濃部創一郎「き、気持ち悪い語尾はやめろ。俺はもともとこの世界の住人じゃないんだ!」
〇東京全景
鉄と数字とビルのパズル、東京。
失われた30年。経済発展のない日本。
そこで生まれし、生まれながらに不運な男、美濃部創一郎。
金、金、金だ。金こそ全てと勉強し、稀有な投資家として名が知れる。
されど、世界経済、未曽有の危機。
全世界、地獄のような不況。札も硬貨もゴミ屑となって無価値。
美濃部創一郎「何のために、、、俺は生きてきたんだ・・・」
金は腐るほどあっても、恋人もなく、友達もなく、ただただ天涯孤独。
串野串十郎「あれあれあれ、創一郎ちゃん。どうしたの?」
美濃部創一郎「く、串十郎・・・」
投資家の世界。株式の売買。売る者あれば買う者あり。買う者あれば売る者あり。高く買わされた者は損をし、安く買った者が得する
そんな世界で凌ぎを削り、一流と呼ばれた現物買いの長期投資家、美濃部創一郎。
対して、短期のトレードを得意として利益を得る凄腕トレーダー、串野串十郎。焼き鳥や【串鳥】の御曹司。
串野串十郎「あ!そっかぁ。あのショックで逃げ遅れたんだぁ。潰れた会社もいっぱいあったしぃ、凄い損害だろうねぇ」
美濃部創一郎「ぐ、、、ぐうう・・・」
串野串十郎「ウォーレン・バフェットを凌ぐと言われた天才長期投資家、美濃部創一郎も落ちたもんだぁ。経済も、企業も見る目がないねぇ」
串野串十郎「あ、そっか。友達も恋人もいないから、そもそも人を見る目もないかぁ~。あっはっはっはっは!!!!」
美濃部創一郎「ちっ。てめぇの方こそ、どうなんだよ串十郎!」
串野串十郎「おやおやおや、負け犬の遠吠えかい? 僕はもちろん、早逃げだよぉ」
串野串十郎「やばいと思ったら即逃げる。人付き合いも同じさ。君のように一途じゃないんでね。使えない奴はバッサリ。これが儲かる鉄則さぁ」
正反対の投資手法の二人。相容れぬ犬猿の仲。
串野串十郎「紙くずになる前に、僕は現物資産に切り替えたし、痛くも痒くもないのよ。むしろ、ショートしてたんまり儲かった」
ショート。株価が下がることを見越してトレードする投資手法。串十郎、この手法によって未曽有の大金を手にする。
美濃部創一郎「ちきしょう・・・いつか見てろよ・・・」
串野串十郎「はっはっは、永遠に君が僕に勝つことなんてできないよぉ。もう投資家、廃業するんだろう?」
事実。美濃部は株価の暴落によって巨額の資産を失った。住む家の家賃払えず、仕方なく実家の田舎へと戻る。
美濃部創一郎「くそ・・・くそが・・・」
串野串十郎「泣いても笑っても無駄さぁ。長期投資なんて無意味。短期トレードこそ、至高なのさぁ」
言い返せぬまま、美濃部は一人、冷たい都会の街へと飛び出した。そのまま、二度とは帰らない。田園風景広がる田舎へと直行。
田舎に帰り、自暴自棄となってやる気も出ず、他人の田んぼばかり眺める日々を過ごしているうち、
ふらふらと田んぼに近寄り、そのまま足を滑らせて田んぼへと落ちた。
すると、目の前、底なしの暗い穴。
落ちるがままに、美濃部は落ちていく。
美濃部創一郎「うわああああああああ!!!!!!!」
〇田園風景
そして出会った謎の老婆。シャインマ・勝子。
シャインマ・勝子「しゃいいいん!???兄さん。あんた、串野串男様でござりマスカッツか?」
出会って5秒で勘違い。
美濃部創一郎「し、知らん。誰だその奇妙な名前の野郎は!」
シャインマ・勝子「あたす、ここで祈ってマスカッチた。今日は串野串男様がいなくなられて丁度千年。祖母の代から毎日欠かさず祈ってマスカッチ」
シャインマ・勝子「千年に一度、我々、ヴェジタ・ヒューマンを串刺しにし、最高級の祭典、ベーベーキューを開いてくださるお方。串野串男様」
シャインマ・勝子「そしたら、どうでしょう。兄さん、あんたが空から降ってきた。あたすの願いが通じたんでマス。あんたは、串野串男様じゃ!!!」
美濃部創一郎「だから知らんと言っているだろうが!」
シャインマ・勝子「だったら、引っこ抜いてくだせぇ!」
美濃部創一郎「な・・・何をだ・・・」
シャインマ・勝子「そこの土に、活きのええ女が埋まっとりマス。大事に育てた女でマス。伝説によれば、串野串男様は土から女を引っこ抜き、」
シャインマ・勝子「自らのぶっとい串で、その女を串刺しにして、ベーベーキューをしたともうしマスカッツ!!!!」
美濃部創一郎「こ・・・この世界はなんなんだ・・・」
田んぼの穴に落ちて、謎の世界に行くのは、ラノベかアニメか映画でしか見たことがない。
美濃部創一郎「俺は、東京で投資家をしていたんだ。その串野串男ってやつとは違う。美濃部創一郎という名だ」
シャインマ・勝子「み、みのべ、そういちろう・・・ それは、、、」
シャインマ・勝子「串野串男さまじゃああああ!!!!!!」
美濃部創一郎「なぜそうなる!!!!???」
シャインマ・勝子「ひょっとして、串野様は恋人も、友達も、家族もおられない、天涯孤独の投資家でございマスカッツ?」
美濃部創一郎「ぐっ・・・そうだが・・・」
シャインマ・勝子「間違いないマス!!!!兄さんは、串野串男様じゃあああ!!!!」
美濃部創一郎(なんか串野串男が可哀そうになってきたな・・・)
シャインマ・勝子「そうと決まれば話は引っこ抜いてからでマス。ほれ!引っこ抜いてぇ!」
老婆の鋭い蹴りが、創一郎の腰に入った。
〇田園風景
美濃部創一郎「ぐおおおお!!!!」
勢いそのまま、創一郎は土から生えた緑色の葉、いや、緑色の髪を引っ張った。
???「キャアアアアアア!!!!ロットォオオオオオ!!!!!」
燦燦と輝く太陽の光を浴びて、オレンジ色の服を着た女が土から現れた。
ニン・キャロット・参子「キャロットォ!?何すんのよ!もうちょっと、丁寧に引っこ抜きなさいよ!」
美濃部創一郎「し、知るか!俺は、そこのババアに蹴られて・・・」
ニン・キャロット・参子「なんなのよあんた。私が眠ってるのに強引に引っこ抜いて!名を名乗りなさいよ!」
シャインマ・勝子「これ、参子!このお方は串野串男様じゃ」
ニン・キャロット・参子「キャロッ!?この方が、串野串男様なの?勝子オババ、嘘じゃないのね?」
シャインマ・勝子「嘘じゃないシャイン。本物でございマスカッツ。このヴェジタブル・ワンダーランドの救世主。串野串男様じゃあ」
美濃部創一郎(ち、違うけど。もうめんどくせぇな・・・)
ニン・キャロット・参子「ご、ごめんなさい!とんだ無礼を働いてしまって・・・」
美濃部創一郎「いや、いい。俺はもう帰りたい。出口はどこだ」
シャインマ・勝子「ダストシュートのことでマスカッツ?この世界では、廃棄になる野菜人間はダストシュートを通って腐ってから肥料にされマス」
美濃部創一郎「きゅ、急におぞましいことを言うな!」
ニン・キャロット・参子「野菜だもの。腐るのは当たり前よ!生あるものはみな、腐って肥料になるの!」
美濃部創一郎「しゅ、宗教か何かなのか・・・」
シャインマ・勝子「と、とにかく!救世主様にはやっていただかなければならない使命がございマス。丁度、千年経って、やつらが来てもおかしくない」
ニン・キャロット・参子「そうよ。串男様。私たちを串刺しにしてベーベーキューをする前に、成し遂げなくちゃいけないことがあるの!お願い!助けて!」
美濃部創一郎(串刺しにされることはいいのかい・・・)
人生流転。美濃部創一郎の前途多難。
されど、美濃部創一郎、否、串野串男と呼ばれし男。この先に待ち受ける過酷な運命、いまだ知らず。
投資家として名を馳せた才能を遺憾なく、このヴェジタブル・ワンダーランドで発揮することはできるや否や。
その活躍、奮闘は、こののちの話。
自分にとって新しいジャンルだったので、今後の展開が楽しみです!野菜も食べます!
最初は投資の話と思ってそればそれで楽しいと思っていたら、まさかの意味不明(褒め言葉です)の世界に。投資、野菜、ラブコメ…どんな組み合わせになるのか楽しみです。あとナレーション?がすごくよかったです。
野菜と株がかかっていたり、登場人物の名前や設定がユニークで独特な味のある世界観でした。野菜人間を引き抜く世界、クローン技術が進めばありえる怖い世界なのかもしれませんね。