復讐女と特撮ヒーロー市川君

昼夜睡

初恋の定義とは…(脚本)

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〇女の子の部屋
  中学生活最後の夏休み…
  一番の思い出になるはずだった。
  当初好きだったバンドのフリーライブを一緒に見に行き、それから大和(やまと)は音信不通になった。
  2013年 8月15日…
  音信不通になって三日目の夜、大和だとすぐ分かるように設定した着信音が鳴り響く。
佐藤沙緒理(中学時代)「もしもし、ちょっと久しぶりだね・・・」
市川大和(中学時代)「ごめん、言いっ放し嫌だから言っとくね 前に沙緒理(さおり)のこと好きって言ったじゃん?」
  その後に続く言葉の想像なんてすぐついた。
  私は聞きたくない一心で空っぽの頭の中から言葉にもならない単語を繋ぎ合わせた。
佐藤沙緒理(中学時代)「無理言ったよね、LIVEついて行ってほんとにごめん」
佐藤沙緒理(中学時代)「直接だと全然話も出来なかったし、なんかもう不安になって、嫌な思いにさせてごめ…」
  彼は被せるようにはっきりといつもより強い口調で発した。
市川大和(中学時代)「俺ね、よく考えてみたら他に好きな人がいた」
  あぁ、息が出来ない。苦しい。胃に何も入っていないのに襲いかかる嗚咽。
  思うように声が出ない──
市川大和(中学時代)「沙緒理は気が合うし可愛いし、電話もメールも楽しいけど恋愛対象としては見れない」
  どうして?ほかに理由があるなら教えてよ。
  納得出来ない。心が駄々をこねる。
市川大和(中学時代)「期待みたいなことさせたし、俺のこと嫌いになって構わないからちゃんと言うね」
佐藤沙緒理(中学時代)「それでも大和のことは嫌いになれないや、その人にその想いちゃんも届くといいね!!」
  少しの沈黙後にいつも通りの言葉が続いた。
市川大和(中学時代)「おやすみなさい・・・」
  目覚めることのないおやすみなさいを最後に彼からのメールも電話も来る事はなかった。
  私はただただ泣くことしか出来なかった。
佐藤沙緒理(中学時代)「よく考えなきゃ分からないなら考えなくてもいいじゃん、もっとちゃんと直接会った時に話せてたら、自分に自信があれば……」
  ふと脳裏に大和との会話がよぎった。

〇女の子の部屋
  2013年 7月24日…
市川大和(中学時代)「来年までこうやって沙緒理と電話したりメールしたりしてたいな、沙緒理の誕生日を一番に祝うのは俺って予約しとくわ」
佐藤沙緒理(中学時代)「出来るよ、なんの根拠もないけどそんな気がする」
市川大和(中学時代)「俺がこんなこと言うの珍しいんだからね? でも、ちょっと恥ずかしいから二人だけの秘密にしてね・・・」
佐藤沙緒理(中学時代)「誰にもこんな素敵な言葉おすそ分けしたくないから絶対言わないよ」
市川大和(中学時代)「今の言葉俺の人生の財産にするわ」
市川大和(中学時代)「…これから先、沙緒理から貰う言葉を記憶の宝箱にこぼさず全部しまってく!!」
市川大和(中学時代)「そんで長く一緒に居ると忘れちゃうことも沢山あると思うから二人で時々それを開けて思い出そ?」
佐藤沙緒理(中学時代)「そんな大袈裟な・・・ 貰うってそんな大層なものじゃないよ?」
市川大和(中学時代)「俺からしたら何よりも大切なプレゼントだよ だから全部覚えていたいから沙緒理の記憶力の良さでアシスタントしてね!」
佐藤沙緒理(中学時代)「はいはい!」

〇女の子の部屋
  来年どころか大和の誕生日すらまだ来てないよ…
佐藤沙緒理(中学時代)「大和の嘘つき・・・」
  そう呟き私は最後の嫌がらせに繋がらない電話の留守電にメッセージを残した。
佐藤沙緒理(中学時代)「言い忘れてたことがあるのでこれだけは伝えさせて下さい、大和のことを好きになれてうちは幸せだったよ」
  震える親指で通話ボタンを押し電話を切った。
  四ヶ月ほど前に初めて同じクラスになった。
  面識はあるものの話すらしたこともない彼が私のメアドを知りたがっているとのことからはじまった関係だった。
  それも夏休みに入ってすぐのことだ。
  数ヶ月もない日々の中でも、今までの月日を取り戻すかのように私達は小さな電子機器の中で恋愛紛いなことをちゃんとしていた。
佐藤沙緒理(中学時代)「もう二度と誰のことも好きになりたくないや」
  恋も愛もまだ何も知らないくせにそんな言葉を口にしたことすら忘れて私は一年後の高校生活最初の夏、本当の初恋を経験するのだ。

次のエピソード:始まりは終わりの始まらないかもしれない!?

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