日本列島漫遊記

ヒロ

エピソード1いざ北国へ(脚本)

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〇事務所
  職場の昼休み。
  女性事務員2人の会話が聞こえてくる。
「え〜、○○さん北海道行ってきたんですか。いいなぁ。北海道のどこ行ったんですか?」
「仕事よ、仕事。知床に行ったの。食事はおいしかったよ」
「私も今度の旅行は知床に行きたい。冬は流氷が綺麗ですよね〜」
  北海道まで行ったんだったら、白い恋人、とかのお土産ねぇのかよ、とか心の中でツッコミながら俺はおにぎりをほおばる。
  北海道の知床かぁ。
  懐かしいと思いながら、俺は学生時代の一人旅の思い出を回想する。

〇古いアパートの一室
真田伸一「初めての一人暮らしだぜい!」
  生まれてこのかた東京から出たことがない俺は都会の喧騒から脱出したかった。
  何とかそこそこ頑張って東北地方の某国立大学に進学を決めたのだった。
  明日から始まる大学が楽しみ・・・
  な訳はなく、夏休みに予定している長期の北海道旅行を楽しみに生きていこうと決める。

〇ラーメン屋のカウンター
マスター「真田〜、味噌ラーメンと醤油ラーメンお待ち!」
真田伸一「は〜い」
真田伸一「お待たせ致しました」
「おひや、ちょうだい」
真田伸一「かしこまりました」
  俺は旅行の資金繰りの為、アルバイトを探したんだ。
  大学の掲示板に「急募」と書かれており、他を探すのも面倒だったからソッコウ連絡。履歴書もなく、ソッコウ採用された。
  今思うと信じられない位安いバイトだったがそれほどイヤな思いはせず、かつマカナイ付なのがありがたかった。
  マカナイ付き。つまり平日はタダで晩飯が食えるってことだ。

〇古いアパートの一室
  帰宅は深夜になる。
  だいぶ疲れている俺はソッコウで眠りに・・・
  つかない。やることがある。
真田伸一「う〜ん。始発の鈍行で行けるのはここまでか。やれやれ」
  俺はその昔父に連れられて行った日本海への旅を思い出す。

〇明るいリビング
父「伸一、明日の土曜日ヒマか?」
真田伸一(少年時代)「え、う、うん。まぁ暇か、なぁ」
  何か面倒なイヤな予感がして、どもりながら返事をする。
父「父さんと一緒に日本海を見に行かないか」
真田伸一(少年時代)「日本海?どういうこと?」
父「日本海の場所は分かるか?」
真田伸一(少年時代)「いや、それは分かるけどさ・・・。泊まりで行くってこと?」
父「いや、残念ながら泊まらない。日帰りだよ。鈍行だけの日帰り旅行だよ」
真田伸一(少年時代)「はあ・・・」
父「青春18切符っていうのが売られている筈なんだよ。切符5枚付で1万円。1日2千円で鈍行乗り放題だ」
真田伸一(少年時代)「へー。それって全国どこにでも行けるの?」
父「どこにでも行ける。どこか行きたいところあるか?」
真田伸一(少年時代)「いや、日本海に行きたい」
父「ハハハ。よし行こう。まぁ、電車に乗ってるだけだけどな」

〇電車の座席
  翌朝4時に起きる。あたりは静まり返っていた。
  始発の電車はけっこう混んでいてビックリした。
真田伸一(少年時代)「けっこう混んでるね」
父「そうだなぁ。皆意外に朝早くから行動しているんだな」
  上野から乗る高崎線は、始発ということもあり空いていた。
  俺達は4人用シートの一画を占領し、靴を脱ぎ対面のシートに足を投げ出した。
  高崎駅で電車を乗り換え、横川駅までたどり着く。横川駅で電気機関車と接続されるという。

〇田舎駅のホーム
  ここ横川駅で電気機関車が接続されるらしい。機関車と共に碓氷峠を登っていくのだ。
  俺達は峠の釜めしを買って電車の中で食べる。碓氷峠を眺めながら・・

〇走る列車
「うまかったぁ」
真田伸一(少年時代)「碓氷峠を見ながらのお弁当、最高!」

〇沖合
  直江津に到着したのは昼過ぎだった。俺達は電車を乗り換え、ボックスシートに座った。
  糸魚川まで車窓からの日本海を楽しむ。
  日本海の余韻を楽しみながら、新宿に到着したのは日付が変わる直前だった。

〇古いアパートの一室
真田伸一「懐かしいなぁ。あれからだよなぁ。俺の「旅」が始まったのは・・・」
  俺は時刻表を手元に置き旅行の計画を練り始める。
真田伸一「この北海道周遊券、学割使えるのか・・・。めっちゃ安くね?神だな」
真田伸一「離島にも行きたいんだよな。その間周遊券ムダになっちゃうけど・・・まぁ、いっか」

〇駅のホーム
  旅立ち当日。
  俺は誰に見送られる訳でもなく、電車に乗り込んだ。
  さあ出発だ。
  北海道周遊券は、本州は鈍行で行かなければならない。その代わり北海道内では特急の自由席に座れる。
  北海道は鈍行の接続が悪い為、特急に乗れる方が何かと都合が良いのだ。
  夜行特急もあるので、金がなくなれば車中泊も出来る。
  遂に青森の最北端の駅に来た。
  北海道はもうすぐだ。

〇街の全景
真田伸一「北海道だ!函館だ!」
  遂に北海道上陸。
  俺は丼を食らってから特急で札幌へ。
  札幌に到着後、東へと向かう。
  いざ知床へ。

〇朝日

〇旅館の受付
  知床に到着したのは夕方であった。
  前に一度来たことがある。懐かしいユースホステルだ。
ユースホステル主人「真田くん、おかえりなさい」
真田伸一「ただいま、お父さん」
  ユースホステルでは「いらっしゃいませ。」「ありがとうございました。」とは言わない。
  宿泊客が来れば「おかえりなさい。」
  客が帰るときは「行ってらっしゃい。」
  である。
ユースホステル主人「よく来たね。疲れただろう。風呂に入るといい。夜は8時からミーティングがあるからね」
真田伸一「あざっす」
  ソッコーで風呂に入り、ソッコーで飯を食い俺は8時からのミーティングに備える。
  ミーティングは憩いの場である。何か催し物があるかもしれない。
  ミーティング室は6人用のテーブルが4つあった。
  意外と混んでおり、4つのテーブルのうち、2つが満席だった。
  残り2つのテーブルのうち1つには男性5人が、もう1つには女性5人が既に座っていた。
  ある意味究極の選択。ここでの選択がその後の俺の生活を変えることになるとは・・・

次のエピソード:エピソード2新しい仲間

コメント

  • 電車に乗って風景を見ながらの旅もいいですよね。
    ゆったりとした非日常が、不思議と心を癒してくれるんです。
    そんな楽しそうな風景が浮かぶ作品でした。

  • 一人旅ならではの空気感が伝わってくる物語ですね。”鈍行”という表現は、昔はよく使っていたのですが最近は耳にすることが減り、懐かしく感じます。

  • 電車に揺られ、その土地の美味しい物を食べ、素晴らしい景色を見て、心優しいユースホテルの人情に会う。なんて素敵なんでしょう。

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