売らない占い師、心内オモテ

紗卦冬葉(さけとば)

Ⅲ.メイ・ストーム・デー①/風の便り(脚本)

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〇シックな玄関
  5月13日(金)、午前中
  -開校記念日(休み)-
  アタシの名前は『レラ』!
  『レラ』は『風』って意味らしい
  ──正直、よく分からないけど。
  アタシはこの名前、
  カッコイイから大好きだ。
レラ「ホロ姉、走りに行ってきまーす!!」
ホロ「お昼ご飯には帰ってきなよ〜」

〇川沿いの原っぱ
  数年前、アタシ達家族は
  この小さな町に引っ越して来た。
  理由は──、故郷に住めなくなったから。
  いわゆる、『ナンミン』って奴。
  家族みんなで、国から離れてきたんだ。
  あっちの友達とお別れする時、
  赤ちゃんみたいに泣いちゃって、
  ──恥ずかしかったな。
  正直、今でも泣きたくなる時があって・・・
  ランニングする時、
  こっそりひとりで泣いてるんだ。
  父さんも、母さんも、ホロ姉も、
  みんなが泣いてた時の事を──
  思い出しちゃうと──
レラ「ぅうう・・・」

〇空港の待合室
  数年前
  某国、空港待合所
ともだち「あーあ、 遂にレラも海外行っちゃうんだ」
レラ「・・・ごめんね? しばらく、会えなくなっちゃうね」
ともだち「ううん、だって、状況が状況だし・・・」
ともだち「────ただ、寂しいだけだよ」
ともだち「戦争終わって、学校また始まっても・・・ ────会える人が、いないだけ」
レラ「・・・」
レラ「ぜったい、いつか会おうね!」
レラ「アタシ、絶対帰ってくるから!!」
レラ「・・・戦争、 いつ落ち着くか分からないし」
レラ「どうなれば帰れるのか、 イマは分からないけど・・・」
レラ「とにかく、ぜったい会おうね!!」
ともだち「・・・・・・」
ともだち「────陸上選手」
レラ「?」
ともだち「レラ、超超、ものすごく足速いから・・・」
ともだち「スポーツの、国際大会とか・・・ ぜったい、出れるんじゃないかな?」
レラ「えぇ・・・そうかなぁ」
ともだち「いやホント、ぜったい出れるからね?」
ともだち「私は、体弱いから走れないけど」
ともだち「選手の人達、支えたり応援するみたいな、 そんなお仕事、できるようになりたくて」
レラ「そうだったんだ・・・」
ともだち「レラがそういう道、目指すなら、 すごい嬉しいなって・・・」
ともだち「勝手なお願い、なんだけどさ・・・」
レラ「そこまで”たいこばん”押されたからには、 目指してみようかな、陸上選手!」
ともだち「・・・!」
ホロ「レラ!そろそろ・・・」
レラ「時間、来ちゃった」
レラ「向こう着いたらメッセージ送るから」
レラ「──────『またね』」
  ・・・・・・
エレナ「────うん、『またね』」

〇田舎駅のロータリー
  ──時は戻り、
  再び5月13日
レラ(泣いちゃったけど〜♪ スッキリしちゃった〜♪)
農家のラクさん「あら、レラちゃん! ご機嫌だね〜!学校お休みかい?」
レラ「こんにちは!今日は開校記念日なの! ラクさんはお散歩してるの?」
農家のラクさん「子供達を狙う怪しい奴がいないか パトロールしとるんじゃぁ」
  故郷に帰りたいって気持ち
  正直、無いわけじゃないけど・・・
  外から来たアタシ達を
  嫌な顔せず受け入れてくれたこの町が──
  大好きなんだ
農家のラクさん「それじゃあねぇ〜」
レラ「またね〜!」
農家のラクさん(うぃっひっ・・・ ソロのレラちゃんは中々レアちゃん・・・ 今日は良いことありそうじゃぁ)
レラ「・・・・・・アレっ?」

〇田舎駅の待合室
???(あ〜あ・・・ な〜んでココに来ちゃうかなぁ〜)
???(『帰巣本能』って 人間にもあるのかね・・・?)
レラ「ウラナイ姉ちゃん!こんにちは!」
???「!!?!?!?!?? (ガタカタガタッッッ)」
???(えっ!?何この子・・・? 初めて見るわね・・・?)
レラ(今週は黒髪+黒ファッションの日なのかな?)
レラ「似合ってるね!」
???「?????? あ、ありがとう・・・」
レラ「・・・もしかして」
レラ「・・・アタシが第一発見者?」
???「う、うーん・・・? まぁ・・・そうだけど・・・」
レラ(普段の私服と違うし・・・ いざイメチェンしてみて 恥ずかしかったパターンなのかな?)
レラ「そうだ!! 一回アタシの家に来ると良いよ!」
レラ「ホロ姉もいるし! ちょっとずつ慣らしていこうよ! (今のファッションの事)」
ウラナイ姉ちゃん「慣らすって・・・ まぁ久々っちゃ久々だけど・・・ (里帰りの事)」
レラ「アタシ誰も知らない抜け道知ってるから! 着いてきて〜!」
ウラナイ姉ちゃん「あっ! ちょっとぉ!!」
ウラナイ姉ちゃん(ここにいても・・・ いつか誰かに見つかる・・・よね?)
ウラナイ姉ちゃん「あなた!待ちなさ〜い!!」

〇田舎駅のロータリー

〇桜の見える丘
ウラナイ姉ちゃん「何あの子!? 天下(テッペン)狙える速さじゃん!?」
「ちょっと、待ちなさいよ〜!!」
  彼女の名前は『心内 ミコト』
  家族と勘当した過去を持つ
  
  心内オモテの『双子の妹』
  孤独を抱えた『小さな風』は
  境遇は違えど同じような
  
  『孤独を抱える者』を
  
  小さな町に招き入れた。

〇空
  本日、5月13日は
  
  『メイ・ストーム・デー』
  
  ”お別れを伝える為の記念日”
  今回、語られるお話は
  
  まるで『春の嵐』のような
  積もり積もった過去の堰(せき)を
  
  すべて、吹き飛ばしてくれるような
  優しい『お別れの物語』であり
  ────────『次に進む為の物語』

次のエピソード:Ⅳ.メイ・ストーム・デー②/天のサインとテールウィンド

コメント

  • 急にシリアス路線に!?
    双子ちゃん、気になりますね!
    また読ませていただきます😊

  • ホロレラ一家がこの町に来たのはそういう経緯だったんですね😭
    心内姉妹にも何があったのか…もうすでに泣けそうな予感😭

  • レラちゃんの過去が切ない!
    次回泣いちゃいそうな予感がいっぱい。

    そして出番はなくても台詞にノストラダムス君みを感じる……!

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