ゾンビ捜査ファイル!

うさみみ

第一話 出会い(脚本)

ゾンビ捜査ファイル!

うさみみ

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〇宇宙ステーション
  2XXX年──
  とある宇宙探査機が持ち帰った宇宙微生物のニュースが世界中を駆け巡った
  人々は歓喜し、地球外生命体への関心を高めたのである
  ところがまもなく得体の知れない奇病が蔓延する

〇道玄坂
  その病の発症者は、自我を失い凶暴化し他者に襲い掛かる特徴が見受けられた
  その症状からゾンビと揶揄されたこの病の原因が──
  宇宙微生物が持っていた菌である事が分かるのは発見から随分後のことである

〇黒
  それから約半世紀──
  ゾンビ化現象が日常の一部として捉えられる時代──

〇ビルの裏
通行人A「ゾンビだ!逃げろ!」
  男の掛け声で人々は血相を変えて走り去っていく
  だが、人々とは逆にゾンビに近づく男がいた
エイジ•シラカワ「やっと見つけたぞ!」
脱走ゾンビ「グルルッ!」
エイジ•シラカワ「貴方には隔離命令が出ています。速やかにご同行願います!」
エイジ•シラカワ「危ないな!」
  やはりゾンビに言葉は通じないか
  目の前のゾンビは力無くその場に崩れ落ちる
  一筋の期待を胸にゾンビの袖をまくり上げた
エイジ•シラカワ「チッ!」
  やはりあのマークはないか・・・
  再び、ゾンビのこめかみに銃を突きつける
  その場に大きな銃声が響き渡った
エイジ•シラカワ「コイツも違ったか・・・」
レオ•マクシオン「先輩。一人で行かないでくださいよ」
エイジ•シラカワ「ごめん。ごめん」
エイジ•シラカワ「でもご覧の通り隔離施設から逃げ出した個体は処理したよ」
レオ•マクシオン「えっ!感染率80%越えのA級ゾンビっすよね」
レオ•マクシオン「それを一人で倒したんすか?」
エイジ•シラカワ「ZBIの捜査官ならこれぐらいできないとね」
レオ•マクシオン「俺もその捜査官なんすけど・・・」

〇大企業のオフィスビル
  ゾンビの脅威に耐性をつけた人類──
  しかしゾンビ現象は新たな犯罪の火種を生むに至る
  その捜査を行うのがZombie Bureau Investigation──
  通称”ZBI”の捜査官達である

〇研究施設のオフィス
エイジ•シラカワ「ただいま戻りました」
佐々木課長「ご苦労だったね」
佐々木課長「隔離施設から脱走したゾンビはどうなった?」
レオ•マクシオン「凄いんすよ。先輩が瞬殺で・・・」
  ZBIの本部に戻るとオフィス内は異様なざわめきに包まれていた
佐々木課長「はぁ〜」
エイジ•シラカワ「課長どうしました?」
佐々木課長「特別事案が発生した」
レオ•マクシオン「特別事案?」
エイジ•シラカワ「おおっぴらに捜査すれば世論が騒ぐ事案って事だよ」
レオ•マクシオン「はあ?」
レオ•マクシオン「よくわからないっす」
エイジ•シラカワ「事件内容を話した方が分かるかもね」
佐々木課長「ゾンビ族の少女と人類の少女が死亡した」
レオ•マクシオン「それのどこが特別事案なんすか?」
エイジ•シラカワ「なるほど。それは厄介ですね」
レオ•マクシオン「今の説明でよく納得できるっすね」
レオ•マクシオン「どうせ、ゾンビ族の少女が暴走化して人類の少女に襲いかかっただけっすよね」
レオ•マクシオン「よくある事件すよ」
佐々木課長「はぁ・・・」
佐々木課長「そこが問題なんだよ」
エイジ•シラカワ「現代のゾンビ化発症率が一桁未満なのは有名だろう?」
レオ•マクシオン「確かに。一年間で10体出れば多い方っすね」
佐々木課長「まあ、そのせいもあってゾンビ化した人を収容する隔離施設の老朽化が問題になっているんだけどね」
エイジ•シラカワ「今の政府はゾンビ問題は解決されたというのがスタンスですからね」
佐々木課長「それでもゾンビは毎年のように収容されているのにね」
レオ•マクシオン「そうっすよ。今回の脱走ゾンビだって一般人に危害が及ぶ前に先輩が処理したからいいものを・・・」
エイジ•シラカワ「まあまあ・・・」
レオ•マクシオン「もう、先輩は呑気なんすから」
  ゾンビ化現象が確認されてから世界は暴力と殺戮の時代が続いた──
  しかし、それもすでに過去である
  人類はゾンビ化を促す因子を発見。暴走化から人々を守る術を見出したのだ
  現在ではこのゾンビ因子による暴走事案は珍しいのである
  それでも事件が起きればこれ幸いと人々は騒ぐ
  その最大の理由はゾンビ化の根本的な治療法がないからである
佐々木課長「まだ表には出てないが、ゾンビ族の少女暴走か!?なんてニュースが駆け巡ってみろ。暴動が起きかねないぞ!」
エイジ•シラカワ「反ゾンビ派には格好のネタですからね」
佐々木課長「しかも人類側の少女も感染。その場で処理されたからね」
佐々木課長「抗議運動どころの騒ぎで収まるかどうかだな」
エイジ•シラカワ「ゾンビ族連中との和平交渉が結ばれてまだ10年経っていませんからね」
レオ•マクシオン「ああ、なるほど。奴らの感情を逆撫でしたらまた戦争に逆戻りの可能性ありって事っすね」
佐々木課長「やっと理解したか」
  ゾンビ因子の発見は人類の希望とされた
  だが、それと時を同じくしてゾンビ因子を体に取り込んだにもかかわらずゾンビ化しない人々が現れる
  その事実に多くの善良な市民は恐怖を抱いたのである
  いつ、ゾンビ化するかも知れないという疑心暗鬼が世界中を包んだ
  そうして長い間、ゾンビ因子を有する者達とそうでない人々の争いが続いたのだ
佐々木課長「そこでだ。GZPと共同で捜査することに決まった」
レオ•マクシオン「えっ!冗談すよね」
佐々木課長「いや、そのまさかだ」
レオ•マクシオン「勘弁してくださいよ。何度も言うっすけどこの事件はゾンビ少女の暴走でしょう?」
ジュン•ユラシオ「その言葉は心外ですね」
ジュン•ユラシオ「貴方のようなバカな人間がいるから我々Guardian Zombi Policeがいるんですよ」
レオ•マクシオン「なっ!」
ジュン•ユラシオ「ゾンビ族と暴走ゾンビを一緒にしないでもらいたいですね」
ジュン•ユラシオ「奴らは理性を失った獣なんですから」
  暴走ゾンビか・・・
  ゾンビ族が自分達とゾンビを区別するために用いる言葉だ
レオ•マクシオン「そうは言うっすがゾンビ因子を持つ者の方が暴走しやすいという研究結果は出てるっす」
ジュン•ユラシオ「それこそ根も歯もない噂ですよ。そんな馬鹿げた話を信じるとは天下のZBIの捜査官とは思ませんね」
レオ•マクシオン「ゾンビ因子を持つ事を誇りとしてゾンビ族と名乗る連中なだけはあるっすね。口だけは達者だ」
レオ•マクシオン「ゾンビ族の暴走ゾンビ化確率は低いとほざくが・・・」
エイジ•シラカワ「そこまでだよ。これから一緒に働く仲間なんだから」
レオ•マクシオン「先輩・・・」
エイジ•シラカワ「そうですよね?」
ジュン•ユラシオ「ええ。申し遅れました。GZPから参りました。ジュン•ユラシオです。今回はお世話になります」
  このシルバーシティを二分する巨大勢力──
  ゾンビ族を守る警察機構──
  我々とは異なる思想で動く者たちか・・・
佐々木課長「じゃあ、エイジくん。ユラシオさんの世話よろしく頼むよ」
  俺が?
エイジ•シラカワ「・・・」
エイジ•シラカワ「分かりました」
エイジ•シラカワ「よろしくお願いしますね。ユラシオ捜査官」
ジュン•ユラシオ「・・・」
ジュン•ユラシオ「ええ、こちらこそ・・・」

〇走行する車内
エイジ•シラカワ「少女達が亡くなっていた現場はもうすぐです」
ジュン•ユラシオ「・・・」
エイジ•シラカワ「あの・・・聞いてますか?」
ジュン•ユラシオ「シラカワさんはゾンビ族がお嫌いですか?」
エイジ•シラカワ「なんです急に・・・」
ジュン•ユラシオ「分かるんですよね。我々に敵意を持っている人は・・・」
  好きか嫌いかで言えば・・・
  雨が窓ガラスをたたいていた
  こんな日はあの時の事を思い出す・・・

〇大きな一軒家
  十年前──

〇洋館の一室
エイジ母「こんな時間に患者?」
エイジ父「ああ、急なカウンセリングが入ってね」
エイジ「父さん。またあの人達を呼ぶの?」
エイジ父「ああ・・・」
エイジ「どうして?ゾンビは化け物なんでしょう?」
エイジ父「そんな言い方をしてはいけないよ。暴走化が始まっても軽度なら理性を取り戻せる可能性があるんだから」
エイジ「でもゾンビ族なんでしょ」
エイジ「学校のみんなが言ってるよ。ゾンビ族はゾンビに近いって・・・」
エイジ父「やめるんだ!彼らだって我々と同じ人間なんだから」
エイジ母「さあ、もう寝なさい。明日も学校でしょう」
エイジ「うん」
  父は暴走ゾンビ化した人々の治療、研究を行っていた
  当時は今よりもゾンビ族の方が暴走ゾンビになりやすいと言われていた
  そんな中でも父はゾンビ族の人々の治療も積極的に行っていた
  あの日もそうだった

〇洋館の一室
エイジ「何?」
  大きな物音でベッドから飛び降りた俺の目に飛び込んだのは倒れた両親だった・・・

〇走行する車内
  そして両親の傍らに立っていた血まみれの男・・・
  父の診療所によく顔を出していたゾンビ族・・・
  奴の腕の特徴的なマークは絶対に忘れない!
  思わず拳に力が入る
  父は甘かったんだ。凶暴な遺伝子を持つゾンビ族に善意なんて見せるから!
  しかし、だからと言って・・・
ジュン•ユラシオ「おい、聞いているのか?」
エイジ•シラカワ「もちろん。そんな事より現場が見えてきたようですよ」
エイジ•シラカワ「資料によれば二人ともゾンビ化していたとか?」
ジュン•ユラシオ「ええ。人類の少女の方は首筋の外装を貫いていたようです」
  ゾンビウイルスを通さない膜──
  その技術のおかげで人類はゾンビウイルス感染を防いでいる
エイジ•シラカワ「行きましょう」
エイジ•シラカワ「そうだ。貴方のさっきの質問にまだ答えてませんでしたね」
エイジ•シラカワ「私は捜査に事情を挟むつもりはありません。捜査は公平にやります」
  私の気持ちなど関係ない。捜査官として真実を追うだけだ!!
  つづく

次のエピソード:第二話 捜査開始!

コメント

  • 現代のウィルス感染による社会不安を想起させるような設定と展開で、深く読み入ってしまいました。エイジの凄惨な過去も示されて、読んでいて一層感情移入しました。

  • 現代のコロナウイルス以上に怖い細菌ですね…。
    特にいつ発症するかわからないなんて、とても生きてる心地がしなさそうです。もし自我を無くした大切な人を襲ってしまったらなんて考えたら…。

  • ゾンビ族に両親を殺されたにも関わらず、ゾンビ撲滅を図る組織の捜査官となったのは、長年怒りを持ちながらも、自分と同じ想いをする人が少しでも少なくなるようにという正義感からだったかもしれませんね。

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