第二話 捜査開始!(脚本)
〇街中の道路
少女達の遺体が見つかった場所は繁華街に近い路地であった
ゾンビ族の少女は首を撃ち抜かれて死亡。人類側の少女はゾンビウイルスに感染した状態で街を彷徨った末に警官に処理された
痛ましい事件だな
ジュン•ユラシオ「そもそもなぜ二人は一緒にいたんでしょう」
エイジ•シラカワ「一緒にいたというのは決めつけでは?」
エイジ•シラカワ「たまたま、居合わせた可能性もあります」
エイジ•シラカワ「出来るだけ先入観を持たずに捜査しなければなりません」
ジュン•ユラシオ「ユラシオ捜査官はちょっと鼻につく堅物ですね」
エイジ•シラカワ「どういう意味だ?」
ジュン•ユラシオ「あっ!そっちの砕けた言い方がしっくりきますね」
エイジ•シラカワ「なんですか?藪から棒に」
エイジ•シラカワ「貴方の話し方だって似たようなものでしょう」
ジュン•ユラシオ「私は素ですが、シラカワ捜査官は違うようだ。もっとこう熱を秘めたような・・・」
エイジ•シラカワ「なっ!」
人を見透かしたような視線──
気に食わないな
エイジ•シラカワ「言っている意味がわかりませんね」
エイジ•シラカワ「そういえば以前からゾンビ族の少女にゾンビ化現象の兆候はあったんですか?」
ジュン•ユラシオ「確認はされていません」
エイジ•シラカワ「隠していた可能性は?」
エイジ•シラカワ「ウイルス感染後、すぐにゾンビ化が始まる人類とは異なりゾンビ族には波があると聞きます」
エイジ•シラカワ「進行スピードも緩やかなのでは?」
ジュン•ユラシオ「詳しいですね」
エイジ•シラカワ「これぐらいは常識ですよ」
ジュン•ユラシオ「いえいえ、大体の人はゾンビ因子を持っているだけで敬遠しますから」
エイジ•シラカワ「・・・」
ジュン•ユラシオ「人類側の少女が先に発症した可能性はありますか?」
エイジ•シラカワ「それはありえません。検査の結果ウイルスの蓄積時間はゾンビ族の少女の方が長いのが確認されています」
ジュン•ユラシオ「そうですか」
エイジ•シラカワ「もしや、空気感染を疑って?」
ジュン•ユラシオ「ええ。先に人類側の少女が何かしらのトラブルで外装を破損。空気感染の末にゾンビ族の少女に襲いかかった可能性もあるかと・・・」
エイジ•シラカワ「ゾンビ族はゾンビウイルスへの抗体を有しているからですか?」
ジュン•ユラシオ「そうです。だから我々はあなた方のように外装を必要とせず日常生活を送れる」
エイジ•シラカワ「しかし、残念ながらゾンビ族の被害者に傷跡は見られません」
エイジ•シラカワ「一方、人類側の少女の首には噛み跡が残っていました。これは事実です」
ジュン•ユラシオ「それを言うならゾンビ族の少女の首を落としたのは誰でしょう。彼女が第三者に殺されたのも現実です」
エイジ•シラカワ「ユラシオ捜査官。お忘れですか?ゾンビ化した者への処置は民間人にも許可されています」
ジュン•ユラシオ「・・・」
まあ、その場合、彼女を処理した民間人が名乗り出ていないのはおかしいが・・・
ここで議論しても意味はないな
エイジ•シラカワ「周囲を見て回りましょう」
〇高層ビルのエントランス
ZBI本部ロビー
エイジ•シラカワ「あまり目ぼしい情報はありませんでしたね」
エイジ•シラカワ「早くオフィスに戻って報告しましょう」
アネット•ルビナ「あっ!シラカワさん!!」
エイジ•シラカワ「げっ!ルビナさん」
アネット•ルビナ「なんです?その反応。私たちの仲じゃないですか?」
エイジ•シラカワ「またそうやって。貴方に提供できる情報はありません」
アネット•ルビナ「冷たいな。大きな事件が起きてるのは分かってるんですよ」
ジュン•ユラシオ「もしや記者の方ですか?」
アネット•ルビナ「そうで〜す」
アネット•ルビナ「そう言う貴方はGZPのユラシオ捜査官ですね」
ジュン•ユラシオ「よくご存知ですね」
アネット•ルビナ「フリー記者ですもの。アンテナの感度はビンビンですよ」
アネット•ルビナ「だから私に隠し事は無理です。さあ、白状しなさいよ!」
エイジ•シラカワ「無理です。貴方が私から情報引き出せた試しがないでしょう」
アネット•ルビナ「もう、シラカワさんは真面目なんだから」
アネット•ルビナ「そんな事じゃあ、モテませんよ」
エイジ•シラカワ「ルビナさんが心配する事ではありませんよ」
アネット•ルビナ「そうやっていっつもからかうんですから!」
アネット•ルビナ「ZBI本部全体がピリピリした空気なのは分かってるんですよ」
アネット•ルビナ「そして、仲が悪いはずのGZPの捜査官も出入りしている。いつまでも隠し通せるとは思わない事ですよ」
ジュン•ユラシオ「中々、騒がしい人ですね」
エイジ•シラカワ「ええ、彼女には申し訳ありませんがマスコミに知られるわけには行きません」
真実が確認できていない今、情報が漏れれば混乱が起きるのは目に見えているからな
〇研究施設のオフィス
人類側被害者の母「お願い!娘に会わせて」
レオ•マクシオン「落ち着いてくださいっす」
人類側被害者の兄「落ち着けるか!妹がゾンビ化したんだぞ!」
佐々木課長「あちらでお話を・・・」
エイジ•シラカワ「被害者家族かい?」
レオ•マクシオン「そうっす」
ジュン•ユラシオ「彼らにはどこまで?」
レオ•マクシオン「詳しい話はまだ・・・」
レオ•マクシオン「ただ、お兄さんの話では被害者は反抗期真っ最中だったらしくて家出を繰り返していたとか」
エイジ•シラカワ「家出か・・・」
だから、夜の街を出歩いていたのか
ジュン•ユラシオ「明日は被害者達の交友関係を調べようと思います。ゾンビ少女の方は私だけでも構いませんよ」
エイジ•シラカワ「いえ、それでは公平な捜査はできない。私も行きますよ」
レオ•マクシオン「気をつけてくださいっす。ゾンビ族区域に住む人々は俺たちに敵対心ムキムキっすから」
ジュン•ユラシオ「本当に失礼な若者ですね。彼らは善良な市民ですよ」
レオ•マクシオン「別に深い意味はないっす」
レオ・・・確かに一言余計だ
〇シックなリビング
エイジ•シラカワ「ふう〜疲れた・・・」
ベッドまで行くのがしんどい
ミリアに見つかったら怒られそうだが・・・
もう、ソファーで寝よ
〇荒廃したセンター街
シルバーシティの約3分の1の面積に広がる寂れた世界──
そこに多くのゾンビ族が住んでいる
そこに人類が足を踏み入れる事は少ない
およそ十年ぶりか
チンピラA「なんだよ。人類のおっさん!」
チンピラB「ここはアンタみたいなのが来る場所じゃねえんだよ」
絵に描いたような脅しだな
つづく