旅立ちの村(脚本)
〇黒
毎日が同じ繰り返しだった。
〇山並み
寝る。
山を見る。
寝る。
〇山間の集落
ところが最近──
〇寂れた村
唯一、変わったことがあって──
〇屋敷の牢屋
キヌ「げほっ、げほっ」
ヨーヘイ「母さん、大丈夫?」
母が病気になった。
キヌ「げほっ、げほっ、げほっ」
ヨーヘイ「母さん、薬は?」
キヌ「もういいの」
ヨーヘイ「よくないよ。ちゃんと薬は飲まないと──」
キヌ「薬はもう無いの」
ヨーヘイ「え・・・」
キヌ「近頃はもう薬草が手に入らないんですって」
キヌ「魔物が外をうろつくようになって・・・」
キヌ「げほっ、げほっ、げほっ・・・」
ヨーヘイ「・・・・・・」
〇村の広場
母は気管支の病気だった。
医者の話じゃ「打つ手なし」
〇村に続くトンネル
ようし!ならば俺が村の外へ薬草を──
──とはならない。
〇黒
何故なら俺は──
〇木の上
「やい! グータラ野郎!」
〇大樹の下
タツオウマル「ま~たそんなところで昼寝か!?」
タツオウマル「遊びの邪魔なんだよ!」
シンノスケ「万年寝太郎」
コトネ「クズ」
ヨーヘイ「・・・・・・」
俺は今まで──
〇原っぱ
一度も村の外に出たことが無い。
〇山間の集落
まともに働いたこともなく──
〇寂れた村
親に甘え──
〇山中の川
何の生き甲斐もなく──
〇草原の道
ずーっとグータラ生きてきた。
〇屋敷の牢屋
げほっ、げほっ、げほっ
げほっ、げほっ、げほっ、げほっ
隣の間から聞こえてくる母の苦しそうな咳
ヨーヘイ「・・・・・・」
げほっ、げほっ、げほっ
げほっ、げほっ、げほっ、げほっ
ヨーヘイ「・・・・・・」
〇原っぱ
俺はその日の夜──
〇村に続くトンネル
初めて村の外に出た。
〇黒
村の外には魔物が出る。
噂では何度も聞いてきた。
図鑑も見たことがある。
図鑑にはこれまで村の者が戦ってきた魔物が記録されている。
レベル1「野犬」
レベル2「大蛇」
レベル3「熊」
こんな具合に──
〇けもの道
だいぶ歩いた。
とはいえ厳密にはまだ村の統治範囲内だ。
村には魔物の襲来に備え、防御柵や罠なんかが至る所に張り巡らされている。
〇霧の立ち込める森
霧が出て来た。
さすがにもう村の支配は及ばない。
もはや「勘」で歩いている。
そもそも何故「夜」に来たのか──
それは、お目当ての薬草が「夜にしか光らない」からである。
薬草の名前は「月のかけら」といった。
普段は雑草のような緑色をしているが──
夜、月の光を浴びることで白く輝く。
〇森の中の沼
そう、ちょうどあんな風に──
あった!
アレだ!
「月のかけら」!!
「月のかけら」を手に入れた。
これだけあれば2週間はもつだろう。
あとはこれを持ち帰って医者に──
〇手
死死死死死死死死死死死死死──
〇森の中の沼
──の恐怖で身体が凍る。
う、動けない。殺──
──される!と思うよりも先に身をかわす。
「う、うわぁぁぁぁぁ──!!!!」
〇血しぶき
レベル10「アンドロギュノス」
通称「首狩り」
補足「遭ったら逃げろ」
〇霧の立ち込める森
「うわぁぁぁぁぁ──!!!!」
ヤバイ!
「首狩り」だ!
人とカマキリの交雑種!
想像よりもデカイ! 速い!
鋭い鎌による斬撃──
「だ、誰かぁぁぁぁ──!!!!」
〇けもの道
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ──」
ここまで来れば、さすがに撒い──
!?
「う、うわぁぁぁぁぁ──!!!!」
こ、殺さ──
「く、来るな!」
「来るなぁぁ──!!!!」
「うわぁぁぁ──!!!!」
RPGの世界観が好きなので、サクサク楽しく読めました!続きが楽しみです!
前半のゆったりとしたシミュレーションゲームのような空気感から、村の外へと出るとクラシカルなRPG感、どちらも好きなので堪能しました。次話はどんな感じになるのか楽しみです。
RPG、 私はドラクエが大好きなので、ドラクエの世界観をイメージして、読ませて頂きました。特別なアイテムを探すミッションにわくわく心が踊りましたが、Level10に遭遇はきついですね。最後のはモンスターを倒した一撃だと思いたいです。