星売りのメテオシスター

オカリ

1. オウムアムアの卵(脚本)

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〇諜報機関
  2017.10
長官「馬鹿げた報告書だな」
長官「『天体U-1に系外惑星の  文明が関与した可能性』」
長官「異星人のUFOってことか?」
長官「エイプリルは半年先だぞ!」
長官「──低俗だ」
ウィラメット「・・」
長官「次は地球侵略でも始まるのかね?」
ウィラメット「侵略はありませんよ」
ウィラメット「これは福音です」
長官「福音?」
ウィラメット「長官」
ウィラメット「生命の起源について考えたことは?」
長官「なんだ聖書の話か?」
ウィラメット「いいえ歴史の話です」

〇アクアリウム
ウィラメット「鳥に魚・・もちろんヒトも」
ウィラメット「進化を巻き戻せば単細胞から始まった」
ウィラメット「では、原初の単細胞」
ウィラメット「無機と生命の境界線は どこで生まれたか?」

〇諜報機関
長官「それこそ主の御業だ 人知の及ぶべくもない」
ウィラメット「かもしれません」
ウィラメット「が、こんな説もありまして」
ウィラメット「他天体から微生物の芽胞が 地球に落とされた──」
ウィラメット「俗に言う『宇宙起源説』です」
長官「ふむ・・」
ウィラメット「本題に入りましょう」

〇宇宙空間
ウィラメット「地球より2000万キロ位置を通過した」
ウィラメット「恒星間天体『U-1』」

〇諜報機関
ウィラメット「このU-1から小破片分離を確認」
ウィラメット「地球の重力圏に入りました」
長官「隕石衝突かね!?」
ウィラメット「ご安心を、終末にはサイズ不足です」
ウィラメット「空力加熱で9割は燃え尽きるでしょう」
ウィラメット「しかし気になりませんか?」

〇地球
ウィラメット「太陽系の外から来た天体が 地球に何か産み落とした」
ウィラメット「まるで意志があるかのように」

〇諜報機関
長官「落下地点はどこだ?」
ウィラメット「軌道予測では東アジア周辺」
ウィラメット「落下地点は・・」

〇黒

〇東京全景
ウィラメット「日本です」
  第1話
  オウムアムアの卵

〇山並み

〇山の中
親方「倒れるぞ〜」
親方「よーし切ってけ〜」
  は〜い
  ふ〜・・暑い

〇武術の訓練場
親方「お疲れぃ!」
親方「午後からは草むしりだ 準備しておけよ」
若手従業員「マジっすかぁ?」
中堅従業員「キツイですね〜 熱中症になりそうだ」
  親方!
親方「どうした?」
  私、午後は・・
親方「お〜そうだった」
親方「気ぃつけて帰りな」
  お先に失礼します!
中堅従業員「おや、マツリちゃんお帰りですか?」
若手従業員「俺も半休取って遊びて〜!」
若手従業員「イテテ・・」
親方「バカ、妹さんだ」
中堅従業員「妹というと?」
親方「歳の離れた妹がいるんだと 心臓が良くないそうだが・・」
親方「今日で退院だから迎えに行くってな」
若手従業員「妹の送迎で早引けっすかぁ!?」
若手従業員「そんなん親に任せればイイっしょ!」
親方「・・だからだよ」
親方「あの子、親いねぇんだ」

〇葬儀場
  2年前、親が死んだ
  崩落事故だった
  遺体は人の形に戻せず
  棺桶の中も空っぽ
  妹は不思議そうだった
長岡花陽「ねえちゃ」
長岡花陽「とうちゃとかあちゃ、どこ?」
  親の死をどう理解させるか
  気力を失ってた私は・・
  さぁね
  星にでもなったんじゃない?
  と、投げやりに答えてしまった

〇病院の入口

〇大きい施設の階段

〇病室の前
長岡花陽「は〜い」

〇病室のベッド
  たっだいま〜
長岡花陽「ねえちゃ!」
  元気してたか〜?
長岡花陽「ちょう元気〜!」
長岡花陽「ねえちゃも〜?」
  元気〜!
看護師「院内ではお静かに」
  すみませ〜ん・・
長岡花陽「いつもより早いね」
長岡花陽「木を切るお仕事は?」
  今日は終わり
  だってハナビの退院日だ!
  帰ったらお祝いだぞ〜
長岡花陽「やった〜!」
  ハナビは今日、何してた?
長岡花陽「コレよんだ!」
  なになに〜?
  『小惑星探査の展望と挑戦』
  ややこしそうな本を・・
長岡花陽「むつかしくないよ!」
長岡花陽「しょーわくせーに大昔の 星のカケラがあって」
長岡花陽「頑張って取りに行くんだ!」
長岡花陽「サンプルリターン?って言うんだけど」
長岡花陽「それで・・」
  親の葬式以来、妹はずっとこの調子

〇葬儀場
  「星にでもなったんじゃない?」
  きっかけはコレ

〇星
  言葉通り親の影を星に求めたのか
  宇宙大好きっ子になってしまった

〇病室のベッド
  なので妹の夢はひとつ
長岡花陽「たんさき近づけて・・」
  ハナビ
  将来の夢は〜?
長岡花陽「宇宙飛行士〜!」
  さすが私の妹だ〜!
長岡花陽「きゃ〜!」
看護師「長岡さん」
  げ、騒ぎ過ぎた?
  声大きかったですね
  ごめんなさい・・
看護師「いえ、先生がお呼びです」
看護師「ハナビちゃんの検査結果で少し・・」
  わかりました
  ちょい待っててね
長岡花陽「うん!」

〇病院の診察室
主治医「退院はできません」
  は?
主治医「ウチの設備では不十分なので 転院をお勧めします」
主治医「紹介状を用意しましょう」
主治医「整い次第、補助人工心臓を・・」
  ま、待って下さい!
  妹は元気ですよ?さっきも笑って・・
主治医「もう一度、説明します」

〇炎
担当医「長岡花陽さんの心臓は炎症に伴い 自己免疫で抗体が現れました」
担当医「この抗体が患部のみならず 正常な心筋も壊しています」
担当医「結果、血液の送出機能が著しく低下」
担当医「今のままで放置すれば・・」

〇病院の診察室
主治医「もって・・1年」
  え、いや
  冗談ですよね?
  だって、今日は家で
  パーティーなんです
  星が好きな子だから
  望遠鏡を用意して
  一緒に観るって約束が・・!
主治医「残念ながら──」

〇病院の入口

〇田んぼ

〇平屋の一戸建て
  ただい、ま

〇和室
  ・・
  あ
  天体望遠鏡
  昨日組み立てたっけ
  退院のお祝い、だったのにな

〇病室のベッド
長岡花陽「まだ帰れないの?」
  ごめんね
  少し悪いとこ見つかったから
  治さなきゃいけなくて
  もっと大きな病院で・・
  一緒に頑張ろっか
長岡花陽「そっか〜」
長岡花陽「じゃ、ココでお祝いだね!」
  お祝い?ハナビの退院は・・
長岡花陽「ハナビじゃなーくーてー!」
長岡花陽「ねえちゃお仕事お疲れ様パ〜ティ〜」
長岡花陽「いえ〜い!」

〇平屋の一戸建て
  情けないな、私
  一番ツラいのは妹なのに
  逆に励まされちゃった
  お仕事お疲れ様パーティー、か

〇宇宙空間
  ダメだ
  1人で観ても楽しくない
  少しは落ち着くかと思ったけど
  なんだか、余計に
  あっ・・
  流れ星だ
  病室からも見えるだろうか
  そうだ、願い事
  もし星に叶える力があるなら
  何でもいい
  どうかハナビの心臓を・・
  ん?
  ゴゴゴ?
  なんか音が変・・

〇落下する隕石
  アレ流れ星じゃない
  まさか・・隕石!?

〇黒背景

〇源泉
  ゴホッ、ゴホッ
  爆発で耳鳴りが・・
  何が起きて──
  うそ、でしょ・・?
  家が消えた
  あるのは大きな凹地と
  中心で鈍く光る石のみ
  うっ
  うぅ〜っ!
  限界だ
  足に力が入らない
  ハナビと帰る場所を失った
  なんて説明すればいいんだ
  あの子はきっと・・

〇病室のベッド
  お星が落ちたの!?
  スゴイね!ちょうラッキーだ!
  やった〜!

〇源泉
  うん、きっとこう言う
  いつも前向きで
  星が大好きな子だから
  家に隕石が落ちたって伝えたら
  逆に大喜びしそう・・
  ──そうだ
  絶望には早かった
  状況は最悪・・
  じゃない!

〇原っぱ
  翌朝

〇田園風景
糸魚川教授「騒々しい」
糸魚川教授「メディア共がもう集まったか」
粟島研究員「気象台のライブカメラに 隕石落下が映ってたそうです」
粟島研究員「挨拶されますか?」
糸魚川教授「愚物どもと交わす言葉はないな」
糸魚川教授「さっさと回収するぞ」
粟島研究員「ですよね・・」
粟島研究員「相変わらずマスコミ嫌い、か」
警察官「先生がた!」
警察官「ご足労おかけしました」
粟島研究員「いえ、朝早くからご苦労様です」
粟島研究員「それで現場は?」
警察官「この先ですが・・」
警察官「少し困ったことに」

〇源泉
糸魚川教授「ふむ」
糸魚川教授「クレーター直径は10m弱 非常に小規模だが・・」
糸魚川教授「まさか島国で隕石孔を見れるとはな」
糸魚川教授「興奮で頬がゆるむ・・」
糸魚川教授「おい粟島ぁ!サンプルだ!」
糸魚川教授「根こそぎ持ち帰るぞ、急げ!」
粟島研究員「は、はい!」
糸魚川教授「さて隕石はどこに・・」
  あの〜
糸魚川教授「誰だ、野次馬か?」
  いやここ、私の家なので
  立ち入りはご遠慮頂けますか?
糸魚川教授「はぁ?」
糸魚川教授「家なんてどこにある 馬鹿馬鹿しい」
  ・・お探し物はコレですよね
糸魚川教授「なっ、回収済みか!」
糸魚川教授「まったく・・」
  ?
糸魚川教授「何を呆けとる」
糸魚川教授「調査協力は国民の義務だ よこしなさい」
  なるほど、渡せと
  イヤでーす
糸魚川教授「あのね、キミ」
糸魚川教授「隕石は宇宙の歴史を語る その価値は計り知れん」
糸魚川教授「素人には豚に真珠だ キミが持っていても・・」
  ウチに落ちたもので
  第一発見者も私です
  所有権は私にある
糸魚川教授「何を言っとる!」
粟島研究員「先生、落ち着いて下さい」
粟島研究員「・・ねぇお嬢さん」
粟島研究員「少し貸してくれないかな 詳しく調べたいんだよ」
粟島研究員「何なら買い取ってもいい 悪い話じゃないだろう?」
  ホントですか
  ちょうど良かった!
粟島研究員「ちょうど良かった?」
  ぜひ頑張って下さい!
粟島研究員「意味がよく・・」
リポーター「長岡さん!こちらお願いしまーす!」
  はーい!
  取材受けなきゃなので
  これで失礼しますね
粟島研究員「アイツ・・何をする気だ?」

〇源泉
リポーター「──こちら現場です」
リポーター「すり鉢状の跡が見えるでしょうか?」
リポーター「なんとココ、元々は民家がありました」
リポーター「実際に話を伺ってみます こちらお住まいの長岡茉莉さんです」
  ・・
リポーター「ご自宅に隕石が落下 大変な心境かと存じますが・・」
長岡茉莉「少しいいですか?」
リポーター「何でしょう」
長岡茉莉「えっとですね・・」
リポーター「これは?」
長岡茉莉「今回落ちて来た隕石です」
リポーター「えっ!?」
リポーター「何だか・・不思議な色合いですね」
長岡茉莉「さっき聞いたんですが 結構貴重らしくて」
長岡茉莉「で、決めました」
長岡茉莉「これ売りまーす」
リポーター「売る・・?」

〇病院の診察室
主治医「唯一、治療法はあります」
主治医「心臓移植です」
主治医「しかし今回は進行が早い 時間が足りません」
主治医「国内のドナーが少ないため 海外に頼らざるを得ませんが」
主治医「医療費の前払い金、渡航費 現地滞在費も考えると」
主治医「必要総額は──」

〇源泉
長岡茉莉「3億円」
リポーター「はい?」
長岡茉莉「私らの家を吹っ飛ばした隕石」
長岡茉莉「これ、オークションにかけます」
長岡茉莉「目標額は3億」
長岡茉莉「全国でご覧の皆様 奮ってご参加下さい!」
  待ってな、ハナビ

〇病室のベッド

〇落下する隕石
  ねえちゃ、少し・・
  隕石で荒稼ぎするからね!

次のエピソード:2. 疑惑の石

コメント

  • フルコースを読ませていただきこちらに伺いました!初めて読ませていただきました!気になりつつ読めていなかったのですが、読んで良かったと思いました✨☺️

    1話からじわーっとくる感動と、これからどうなっていくんだろうというハラハラと、期待感が膨らみます!!!✨

    素晴らしい1話だと感じました✨☺️
    今後少しずつ(いや、もしかしたら一気読みもさせていただくかも…)読ませていただきます✨😆

  • 改めて読みなおしています。
    自分のTapNovel作品の中で一番好きな第一話ですね。明るく健気な妹と、彼女の為に奮闘する主人公を眺め感情移入をさせたところで、TVカメラに主人公を始めて登場させる。演出が最高に素晴らしい作品なのです。
    魅力的な主人公であり、行動線が明確。
    第二回長編コンで参考にするべき作品だと思っていました(≧▽≦)

  • オカリさんこんにちは!
    いつもアニメを見ている感覚で拝見させて頂いてます!
    まつりちゃんの顔が最後に出てきて、始まった!てかんじがとてもしてドキドキしました!
    挿絵も多くてしかもうまい😲本当に凄いです!
    売る理由や金額がとても具体的でリアルに感じられました!
    さすがオカリさん、という感じの作品でした!

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