オオゾラパズル

見張マコト

鶴と鵠(脚本)

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〇湖畔
神籟(じんらい)(何も感じない・・・)
神籟(じんらい)(当然だね。 そこに在るだけだから)
嬉島(きしま)「珍しいですね、僕と話してくれるなんて」
神籟(じんらい)「少し確かめたくなっただけだよ」
神籟(じんらい)「昨日さ、子供とゲームをしたんだ」
神籟(じんらい)「異常者の頭にネジを刺していく ゲームなんだけど、」
神籟(じんらい)「キシマ君はさ、僕がネジを刺した次に 自分の手番が回ってきたらどうする?」
嬉島(きしま)「それは、普通にネジを刺すと思いますよ?」
神籟(じんらい)「どうして?」
嬉島(きしま)「手番が回ってきたから?」
神籟(じんらい)「それだけのことで 人の頭にネジを刺すのかい?」
嬉島(きしま)「う~ん・・・」
嬉島(きしま)「ルール的に刺すのが正しいからですかね」
嬉島(きしま)「あとは、ジンライさんが 誘ってくれたゲームだから」
嬉島(きしま)「ゲームを楽しみたいって感じです」
神籟(じんらい)「そうかい・・・」

〇葬儀場

〇湖畔
神籟(じんらい)「君は何も変わっていないんだね」
嬉島(きしま)「ジンライさんのおかげで変われましたよ?」
神籟(じんらい)「そうかい」
神籟(じんらい)「ところで前に言ってたセレンは ちゃんと処分できたかい?」
嬉島(きしま)「ちょうどここに捨てましたよ」
嬉島(きしま)「あっさりパクれて拍子抜けでした」
神籟(じんらい)(医院長からの依頼だったから 盗めて当然なんだけどね)
嬉島(きしま)「あんなに色の濃いセレン見たことなかったんですけど、期限切れしてました?」
神籟(じんらい)「・・・そんなところだよ」
神籟(じんらい)(調剤過誤が無くならないワケだね)
神籟(じんらい)「それじゃあ僕は行くよ。 また何かあったらよろしくね、キシマ君」
嬉島(きしま)「もっとお話ししたいですよ」
神籟(じんらい)「・・・」
神籟(じんらい)「キシマ君がさ、ウチの幹部になったのって あの薬がビタミン剤だって見抜いた からって知ってる?」
神籟(じんらい)「だからしょうがなく、なんだ。 色々教えてみたけど」
神籟(じんらい)「キシマ君はウチの異常者や狂信者、 その有象無象の1人に過ぎないよ」
嬉島(きしま)「・・・」
嬉島(きしま)「でもジンライさんは僕のことを 嬉島って呼んでくれますよ?」
嬉島(きしま)「それって僕のことを嬉島だって 認めてくれていることの、なによりの 証左じゃないですか」
嬉島(きしま)「僕だって生きてもいいって ことじゃないですか」
嬉島(きしま)「それって大切にしたい 綺麗なものじゃないですか」
嬉島(きしま)「でも僕の人生を振り返ると 醜く汚れていて・・・あれ?」
神籟(じんらい)「もういいよ」
神籟(じんらい)「何でもいいよ、もう。 君たちに僕が何を言ったって 自身の幸福論に繋がるんだ」
神籟(じんらい)「とりあえず、今日はもう帰ってほしい」
神籟(じんらい)「キシマ君のお友達が、 また喋りかけてくれるはずだよ」
嬉島(きしま)「えっ!? ユミちゃんが!!」
嬉島(きしま)「じゃ、じゃあ今日は帰りますね!!」
嬉島(きしま)「でも!! 僕はジンライさんとも 友達になりたいんですよ!!」
神籟(じんらい)「そーなんだね」
神籟(じんらい)「お疲れさま。 またレコーダーに喋っておいてくれる? ・・・適当な話でいいよ」
神籟(じんらい)「・・・」
神籟(じんらい)(トーラ君となら 友達になれそうなんだけどな・・・)

〇古い畳部屋
神籟(じんらい)「え」
都浦(とうら)「──痛、ッ・・・うぅぅ・・・」
神籟(じんらい)「どうして」
神籟(じんらい)「自分の手を叩いたのかな?」
都浦(とうら)「・・・わか、りません・・・・・・」
都浦(とうら)「わから、ない・・・けど、」
都浦(とうら)「僕の、ほうが・・・傷つくべき、だって、 思った、から・・・」
神籟(じんらい)「・・・ッ!!」

〇湖畔
神籟(じんらい)(トーラ君の中には、 無自覚な2つの軸があって)
神籟(じんらい)(それを良しとできない一方で、 膨れ上がる衝動があるんだと思う)
神籟(じんらい)(狂った連続性を止められなくて 苦しいけれど、幼さ故の自動的で 過剰な防衛本能が生かしてしまう・・・)
神籟(じんらい)「あぁ、トーラ君!!」
神籟(じんらい)「僕が君を殺そうとしたら、 僕たちはどうなってしまうのか・・・!!」
神籟(じんらい)「──」
神籟(じんらい)「今、いいところだったんだ。 邪魔しないでくれるかな」
神籟(じんらい)「・・・」
神籟(じんらい)「・・・ウチのバカどもが羨ましいよ」

〇古い畳部屋
  人形がどうのこうの、
  汚いものが美しいだの
  息子が生き返らないだの
神籟(じんらい)「子は皆、無知という罪を犯し続けます。 大人はその罪に対して 老いという罰を受けるんですよー」
  救済がうんぬん
神籟(じんらい)「タナカさん、ちょっと鏡池までお嬢ちゃんを送ってあげてほしいんですけど」
異常者「本当ですかッ!! 俺と女の子が 二人きりでってことですよね!?」

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コメント

  • 宗教自体が狂っているかと思いきや、教祖側は意外とマトモな思考回路でびっくりいたしました…。(トウラくん殺す殺さないとかはさておきです。)

    結局のところ、ヤバい人は勝手にそちらに進んで行くのかなぁと腑に落ちるところもありました。
    最終回も楽しみにしております!

  • 信仰を基本的に肯定する立場なのですが、宗教の語源は酔狂というのが深いですね。教祖をやっている神藾が一番醒めている…。居場所ほしさに異常性を曝け出す信者の虚しさがリアルです。
    人物紹介、嬉島が澄んでいて都浦は小汚いんですね。境界線上にいる都浦は救済を求めて狂っているふりをせずに間違いを犯す(のを自覚できる)から小汚いのでしょうか。どんな結末に向かうのか、気持ち悪くもありつつおもしろいです。

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