鵠と雀(脚本)
〇湖畔
女の子「これで大丈夫なんですか・・・?」
女の子「ネコさん、全然動かないんですけど」
異常者「大丈夫だよ!! きっと疲れて眠くなっているのさ!! 木陰で休ませておけば問題無いよ!!」
女の子「そ、そうなんですか?」
異常者「お嬢ちゃんも疲れたでしょう!! これでも食べて!!」
女の子「ゼリーですか? 食べてもいいんですか?」
異常者「い、いいんだけどね!! 一口で食べられるか試してみて!!」
女の子「えぇ・・・わかりました。 いただきます──」
異常者「じゃ、じゃあ!! 噛んだらいけないよ!!」
女の子「──!?」
〇湖畔
女の子「・・・」
女の子「朝だ・・・」
女の子(鏡池、夜は私を映してた・・・)
女の子(今は私を映してくれない)
女の子(きっと、何か大切なものを なくしちゃったんだ・・・)
女の子(もっと考えていれば、よかったのかも)
女の子(よく、わからないけど・・・)
女の子「汚れちゃったな・・・」
〇住宅街
女の子(お母さん、心配してくれるかな・・・)
女の子(えっ、スズメさん死んじゃってるの?)
雀「・・・ジ、ジッ・・・・・・」
女の子(生きてる!? じゃあ石に付いてた血は?)
雀「・・・ジッ・・・・・・」
女の子「て、手当てしてあげないと・・・!!」
女の子(でもどうやって!?)
女の子(わからない、わからないよ・・・!!)
雀「ギ、ィ・・・・・・・・・・・・」
女の子「あぁ・・・」
女の子「・・・」
女の子「酷い声・・・」
女の子「最期なんだよ、それでよかったの?」
女の子「・・・」
女の子「これは、運命なのかな」
女の子「きっとスズメさんと私の・・・」
女の子「私のせいだね、ごめんね」
〇おしゃれなリビング
女の子「ただいま」
母「遅かったわね」
女の子「うん」
母「・・・あんた、何その臭い?」
女の子「ごめんなさい」
母「何、やっぱりそういうこと好きなの?」
女の子「・・・」
母「とっととシャワー浴びて」
母「ロリコン野郎を、思い出すでしょ」
女の子「はい」
〇清潔な浴室
体にまとわりついていた汚れが
洗い流されて落ちていく
私はずっと汚いままだから、
いつまで経っても水が流れていく
汚い水が落ちて、下へ下へ溜まっていく
世界もきっと、こんなものなんだ
〇部屋のベッド
〇部屋のベッド
女の子(まだ日曜日か)
女の子(早くトウラ君に会いたい)
女の子(けど・・・)
〇清潔な浴室
たぶん、私は汚い・・・
〇部屋のベッド
〇部屋のベッド
女の子「やっと、会えるね」
〇教室
女の子「トウラ君・・・」
都浦(とうら)「・・・」
女の子「私、お休みの日に考えたことがあるんだ」
女の子「タラエ先生が窓から飛び降りた時、 トウラ君だけが笑ってた」
女の子「私、嬉しかったんだと思う・・・」
女の子「大人の男の人って、 すぐ暴力を振るうでしょ?」
女の子「私、トウラ君が笑うまで、 大人には絶対に 逆らえないんだと思ってたの」
女の子「でも違うんだよね?」
女の子「トウラ君が、 タラエ先生を突き落としたんだよね」
都浦(とうら)「・・・違うよ。 僕は何も殺せていないよ」
女の子「違わないよ!!」
女の子「それにトウラ君は時々、 私を凄い目で見てたもん」
女の子「そんなトウラ君のおかげで 私は生まれ変われた気がしたのに、 一体どうしちゃったの?」
女の子「弱くて汚い私が、トウラ君を守って あげたくなっちゃうくらい寂しそうだよ」
都浦(とうら)「君は汚くなんかないよ・・・」
都浦(とうら)「汚いのは僕なんだ」
都浦(とうら)「僕は、僕は・・・」
女の子「いいよ、大丈夫だよ」
女の子「その言葉だけで十分なんだよ」
女の子「やっぱりトウラ君は素敵だね」
都浦(とうら)「やめてよ」
女の子「私たち、恋人になろうよ」
都浦(とうら)「やめて」
女の子「私がトウラ君を守ってあげる」
都浦(とうら)「僕は!! 本当は!! 君も殺したいんだ!!」
都浦(とうら)「頭のおかしな人も!! タラエ先生だって!!」
都浦(とうら)「なのに・・・」
都浦(とうら)「怪我をしたネコも、死にかけのスズメも、 殺せないような人間だったんだ」
女の子「トウラ君・・・」
女の子「ついてきて!!」
〇湖畔
女の子「まだいるかな?」
女の子「あっ!!」
女の子「見てよ、トウラ君」
都浦(とうら)「カチカチだ・・・」
女の子「うぅぅ・・・」
女の子「どうかな、トウラ君・・・」
女の子「たぶん、私が殺したんだよ」
女の子「もっと早く言ってくれたら、 ちゃんと私が殺したのに」
女の子「どうかな? 恋人になろうよ」
都浦(とうら)「・・・ッ!!」
女の子「否定しないなら付き合っちゃうよ?」
女の子「よかった・・・ ネコさんを殺してあげられて、 トーラ君の恋人になれて」
女の子「ネコさんも、私も・・・」
女の子「いつかトウラ君が 殺せるようになるといいね」
女の子「私は嬉しいんだよ。 たぶん、トウラ君に殺される 初めての女の子になれるんだもん」
女の子「それってとても素敵なことでしょ?」
女の子「私が初めて自分で考えて、 トウラ君の為になることが 私の意味だって思ったんだ」
女の子「きっと私の命はトウラ君に殺されて、 初めて正しく導かれるんだよ」
女の子「だって、心がこんなに満たされること なんてこの世界にあるはずないもん」
女の子「この空が、きっと、私になるんだよ!!」
都浦(とうら)「君は・・・本当に生きてるの?」
女の子「どうして?」
都浦(とうら)「僕には、君が僕と同じように意思があって僕とは違う考え方を持った人間だって、 どうしても思えないんだよ」
都浦(とうら)「君は、何なんだ・・・?」
女の子「じゃあ私が神様だよって言ったら トウラ君は信じるのかな?」
女の子「きっと今のトウラ君は、自分を見失ってるからそんなこと考えるんだよ」
女の子「もっともっと、自分だけを信じてよ」
女の子「そうじゃないと私、 いつまで経っても殺されないよ」
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女の子にも異常な要素があったとは、驚きもありつつ逃げられない気もしていました。汚されたのであって汚れているのではないと感じましたが、本人の感じ方が決めることですね。都浦くんに神籟以外に心を見せられる相手ができてよかったと思いつつ、行く末は仄暗い感じがしました。
連載お疲れ様でした。タイトルの動物のモチーフを僕では全て読み取り切れませんでした。考察のできる深い作品でおもしろかったです。
完結おめでとうございます!
独特な死生観からの刺さるセリフ満載のシリーズでした😆
哲学的と申しますか、耽美的と申しますか、生き死にの事と美醜の事を上手く混ぜ合わされてるなぁと感じました。
素敵な作品をありがとうございました!