私が■■■んになっても

なし

?イアナラワキノtンオh(脚本)

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〇古民家の蔵
小向 孝也「何度も言うけど、この蔵がいい 何だって置き放題、どんな楽器も買える」
小向 紗羅「ホント何度も言ってる 蔵と結婚するの?」
小向 孝也「住んでもいい 君、どう?」
小向 紗羅「だめよ もうちょっと、明るくないと」
小向 孝也「よーし穴を開けて光を取り込むようにしようかな」
小向 紗羅「そんなことしたら楽器の状態が悪くなるわよ」
小向 孝也「それで居心地を良くしたら、君をここに閉じ込めてやるぞ。説教部屋だ」
小向 紗羅「はいはい、それはおそろしい」
小向 紗羅「嘘ばっかり。 あなたは優しい人だから・・・」
小向 孝也「よし。蔵にしまっておくものは、一旦こんなものかな」

〇平屋の一戸建て
  人里離れた古民家を購入した。夢のマイホームというには古すぎるが、私達には最高だった。2人の世界が欲しかった。

〇綺麗なキッチン
小向 紗羅「お肉がぶつ切りになったら しょうがもミジンギリ〜よ♪」
小向 紗羅「これみ〜よがしに揉んでも 旨味が出てくるのよ♪」
小向 紗羅「片栗、薄力になっても ほんとに変わらない? とても心配だわあなたがカリカリが好きだから♪」

〇書斎
小向 孝也(締まらないな。イントロでもう一回リフ?)
小向 紗羅「あなたーご飯できたけどー」
小向 孝也「ええと、3分46秒後に行きまーす」

〇古いアパートの居間
小向 紗羅「でね、ボージョボー人形は馬鹿にできないんだって」
小向 孝也「キッチン、どう?」
小向 紗羅「高さ上げて良かった。おばあさんになっても腰まっすぐね」
小向 孝也「仕事部屋も新しくして良かったよ」
小向 紗羅「仕事といえば、明日中に郵送してって依頼が来たの 食べ終わったら仕上げなくちゃ」
小向 孝也「もう立派なプロだね。君の作業部屋、なくてほんとによかった?」
小向 紗羅「手先の器用さが要るけど、どこでもできるから」
小向 孝也「からあげ、何か変えた?」
小向 紗羅「片栗粉切らしてて・・・嫌だった?」
小向 孝也「前のじゃなきゃ食べな〜い」
小向 孝也「ごちそうさまでした」
小向 紗羅「安心した」
小向 孝也「好きな人が作った好物、どんな風でもうまいよ」
小向 孝也「曲も料理も、変化があるといいよね」

〇古いアパートの居間
小向 紗羅「サンタは優しい人ね ツリーを抱き寄せて ずっとこのままいようと フタをした〜♪ ──ふぅ」
小向 紗羅「もうこんな時間? 徹夜しちゃった」
小向 紗羅「コホコホ やあね風邪かしら」

〇古民家の居間
小向 紗羅「起きてる? 今日、朝から収録でしょ」
小向 紗羅「あ・な・た」
小向 孝也「ユーロビートはクラシックかって? そうかも」
小向 紗羅「あ・な・た あ・さ」
小向 紗羅「コホ、コホ」
小向 紗羅「ア・タ・ナ」
小向 紗羅「ア・サ」
小向 孝也「収録だ 起こしてくれてありがとう」
小向 紗羅「エティサミサティウオd」
小向 紗羅「?」

〇広い玄関(絵画無し)
小向 孝也「じゃ、いってきます 帰りは7時過ぎかな」
小向 紗羅「エテクトイk」
小向 孝也「なんだって?」
小向 紗羅「エ・テ・ク・ト・イk」
小向 紗羅「コホコホ」
小向 孝也「遊んでる表情じゃないな」
小向 孝也「今日断ろう」
小向 紗羅「エディアニシニk」
小向 孝也「止めないで。お医者にかかろう」

〇病院の診察室
医師「奇妙だが、見たところ喉が腫れているわけでもない 咳止めを飲んで様子を見ましょう」
小向 孝也「こういうことはよくあるんですか? どこが悪いんです」
医師「うーんうまく発音できない、構語障害となると──脳ですかな」
小向 紗羅「ウオn」
医師「脳のことはまだまだわからんことも多い。あるいは、心因性か 何にせよ、様子を見るほかないでしょうな」

〇車内
小向 孝也「お昼、僕が作ろうかな」
小向 紗羅「オメトゥカニセダモコs」
小向 孝也「遠慮しないで 僕たちは2人で生きてるんだ」
小向 紗羅「?オヌラカw」
小向 孝也「日本語が変になっただけだからね、なんとなくわかるさ」
小向 紗羅「ウオs・・・」

〇古いアパートの居間
小向 紗羅「イイシオ イイシオ」
小向 孝也「ごめんね・・・」

〇古民家の居間
小向 孝也「おはよ──」
小向 紗羅「ウオヤホ」
小向 孝也「髪が、それに目も」
小向 紗羅「エティスオディサタw」
小向 紗羅「エティスオd」

〇広い玄関(絵画無し)
小向 孝也「僕が出る」
小向 孝也「はい小向」
久田 千代子「久田ですけど」
小向 孝也「お義祖母(ばあ)さん」
久田 千代子「小向さん、お盆以来ね〜 娘のネックレスが出てきたもんでね、急なんだけども渡しがてら新しいお家見に行こうかしらと思って」
小向 孝也「お、送っていただくとか」
久田 千代子「お邪魔させてもらうのは迷惑?」
小向 孝也「いえ、そういうわけじゃ、ないですけども」
小向 紗羅「コホコホ」
久田 千代子「紗羅いるかしら? 久しぶりに声聞きたいわ」
小向 孝也「紗羅は今出かけ──」
小向 紗羅「コホコホ」
小向 孝也「──風邪気味で」
久田 千代子「そう、体に気をつけてね小向さんも 何かあったらいつでも飛んでくからね では紗羅ちゃんによろしく」
小向 孝也「はい・・・失礼します」
小向 紗羅「?オヌルkンアチャアボ」
小向 孝也「まずい、遅かれ早かれ──」
小向 紗羅「アリサクロアニチュオノs」
小向 孝也「そうだ、僕だって音楽家の端くれじゃないか」

〇書斎
小向 孝也「何回聴いてもわからない。外国語? ここまで発音が崩れて、見た目まで・・・」
小向 紗羅「ンエモg」
小向 孝也「この言葉は謝ってくれているんだよね 言葉と発音は対応してる。法則がわかればなあ」

〇古民家の居間
小向 紗羅「イアサンンエモg」
小向 孝也「いっそ諦めようか」
小向 紗羅「・・・アウィアナマル」
小向 孝也「嘘だよ 明日にはきっと話せるようになる」

〇古民家の居間
小向 紗羅「ウオヤホ」
小向 孝也「ああ、おはよ──」
小向 孝也「紗羅をどこへやった」
小向 紗羅「イサタウォヨコk」
小向 孝也「同じ声・・・」
小向 紗羅「?アゲマティマタm」
小向 孝也「待って、見るな 見なくていい」
小向 孝也「どこも変わらないから」
小向 紗羅「・・・」
小向 孝也「気晴らしに音楽でも聴こう」

〇書斎
小向 孝也「そーだRainってこれだった。傑作だけど、耳障りで嫌いだなあこのフェードアウト──」
小向 紗羅「オミサタw」
小向 孝也「”ぃさたぅ”って「私」だよね」
  うん。わたし
小向 孝也「──Rainか? 私って言ってみて」
小向 紗羅「イサタw」
レコーダー「ワタシ」
小向 紗羅「!アワデオコネアm」
レコーダー「マエノコエダワ!」
小向 孝也「逆回転だ、勝手に逆再生の声が出るようになってしまってたんだ」
小向 孝也「あはははは 前の声だ、君の綺麗な声! 久しぶりに聞いた気がする・・・」
小向 紗羅「イイセル エノヌレサナハタm (嬉しい また話せるのね)」
小向 紗羅(嬉しいのに涙が出ない・・・)

〇綺麗なキッチン
小向 紗羅「ンオミイソへティソトギソアニクs (好きなお仕事してほしいもの)」
小向 紗羅「エテサカミニサタワウィルオyr (料理は私に任せて)」
小向 孝也「頼もしいな。体調は大丈夫?」
小向 紗羅「!オニイアギスオチョリスm (むしろ調子がいいの!)」
小向 孝也「絶好調だね」
小向 孝也(やっぱり、体が根本的に・・・)

〇古民家の居間
小向 孝也「?」
小向 孝也「紗羅?」

〇古いアパートの居間
小向 紗羅「イサタw・・・イイサコ」
小向 紗羅「イアティムツビアk」
小向 孝也「──」

〇古民家の居間
小向 紗羅「イイサコ」
小向 孝也「レコーダー使うね」
小向 紗羅「オマイェホマタナ (あなたも部屋も)」
小向 紗羅「オヌレイムカシイch (小さく見えるの)」
小向 孝也「もう気付いていると思うけど、身体が変わっていってる 今朝、身長が僕を越したね」
小向 孝也「あっ」
小向 紗羅「アッタコイェテッタヌカナガヨ (親が亡くなっててよかった)」
小向 紗羅「アラキアヌクサゴティフレサミサナk (悲しませる人が少ないから)」
小向 孝也「そんなこと言うもんじゃない」
小向 紗羅「オトノメカバnンオクシェデュカウィエメッタダタナ (あなただって迷惑でしょうこんな化け物と)」
小向 孝也「楽しいよ君がいれば」
小向 紗羅「アウィアヌバアラッタヌコユタガラキch (力が強くなったら危ないわ)」
小向 孝也「その分距離を取って話せばいいさ」
小向 紗羅「オマクラカキオソエッツルコムオキサユオnンオハクティ (いつか本能や思考も狂って襲いかかるかも)」
小向 孝也「命懸けで、君に僕や人を傷付けさせないよ」
小向 紗羅「。イアナラカワギサタワウィサタワウオm 、ウオシャメラカw (もう私は私が分からない。別れましょう、)」
小向 紗羅「アラキイオメティソロk 殺してもいいから)」
小向 孝也「ふざけるな」
小向 孝也「君と僕は夫婦なんだよ、生きていくんだよ。元から、いつどんな風に変わっても、一緒に生きると決めていたんだよ」
小向 孝也「僕と、生きてほしいよ・・・」
小向 紗羅「アタナ・・・」
小向 紗羅(エノティヒイササy)
小向 孝也「分かってくれたかい?」
小向 紗羅「アガバトk── (言葉が──)」
  変に聞こえる
小向 孝也「頭の中の言葉が、話すのと同じになった?」
レコーダー「?アッタニニザノオトヌサナハガボトコナカノナマタ」
小向 紗羅「イアティムオス」
小向 孝也「誰か来た」

〇広い玄関(絵画無し)
小向 孝也「はい」
久田 千代子「ごめんなさいね急に なんだか無性に、あの子元気かしらと心配になって」
小向 孝也「お義祖母さん!」
小向 孝也「き、着替えますね 紗羅、いなくて」
小向 孝也「蔵に隠れていて お義祖母さんに見られるわけには」
小向 紗羅「──」
  おばあさん 蔵に隠れて
小向 紗羅「ンウ」

〇平屋の一戸建て

〇平屋の一戸建て
久田 千代子「それじゃ紗羅は何ともないのね?」
小向 孝也「ええ、本当に」
小向 孝也「何も、変わりありません。気配りができて、少し繊細で」
久田 千代子「またそのうち──大晦日には会いにきてくれるかしら?」
小向 孝也「言って、おきます」
小向 孝也「必ず、2人で幸せでいます 変わらず愛しています」

〇古民家の蔵
小向 紗羅(イアティマテットゥメニショクs)
小向 孝也「君、寒くなかったかい?」
小向 紗羅「オミショクs」
小向 紗羅「イアネラレd」
小向 孝也「身体が、扉の大きさを超えたのか・・・」
  ガン! ガン!
小向 紗羅「アタナ!?」

〇古民家の蔵
小向 孝也「明るくないと、だめだろう?」
小向 孝也「嘘だよ。八つ当たり」
小向 紗羅「?オヌレティアn」
小向 孝也「泣くわけないさ」
小向 孝也「今度、からあげを──」
小向 紗羅「オヨニイオメテルサウォウィシャタワマモノk」
小向 孝也「・・・閉じ込めたからね もう来ないかもしれないな!」
小向 紗羅「イラッカボス アラカドティヒイシャサヤワタナ」
小向 紗羅「嘘ばっかり。 あなたは優しい人だから・・・」

コメント

  • セリフの言葉、それからテンポが、とても面白く、本来の会話ってこんな感じなのかも!と思えるものでした!
    この言葉とテンポは、なしさんのオリジナリティであり、私はこのリズムが大好きです!!
    このような作品を今後も描いてほしいと願わずにはいられません!!

  • 出会った頃と比べ、お互いに段々と姿は変わり、年老いていけば、いずれ体も不自由になり話すことも難しくなります。この作品で描かれていることは現実の夫婦誰にでも起こりうることです。それを怪人と逆再生と言う面白いアイデアで非日常的ストーリーとして仕上がっています。

  • 夫婦の形は千差万別と言いますが、これまた切ない・・・(/_;)
    逆再生の発想、イイですね♪

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