姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

第1話 あの日の約束と“氷王子”(脚本)

姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

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〇美しい草原
カレン(幼少期)「王子様とお姫様は、そして王国の国民は、いつまでも幸せに暮らしました!」
カレン「待って!」
カレン「そっちはダメ!」

〇貴族の部屋
カレン「ダメだってば!」
ハンナ「姫様!?」
カレン「はっ!」
カレン(またこの夢・・・)
ハンナ「姫様、うたた寝なんてこれっきりにしてくださいね!」
ハンナ「ジーク王子に知れてしまったら、私どうされてしまうか・・・」
カレン「ごめん、ハンナ」
カレン「ちょっと夜、眠れなくてさ!」
カレン「でも・・・そんなにジークが怖い?」
ハンナ「・・・はい」
ハンナ「この間も、敵に怯んで逃げ戻った兵士を睨みつけて、視線で殺したとか」
カレン「有り得ないでしょ!」
ハンナ「・・・有り得ちゃうかもです」
カレン「そんな訳・・・」
ハンナ「私、見てしまったんです!」
ハンナ「たまたま執務室の扉が少し開いていて、それで・・・」
ハンナ「ジーク王子が、目の前を飛び回るハエをじっと睨まれたら──」
ハンナ「そのハエ、ポトリとテーブルに落ちてしまって」
カレン「まっさかそんなぁ!」
カレン(・・・それほどの噂が立つってことか)
カレン(昔は、あんなに優しかったのに・・・)

〇美しい草原
  10年前──
カレン(幼少期)「ジーク、見て!」
カレン(幼少期)「シロツメグサの冠、作ったの!」
カレン(幼少期)「・・・似合う?」
ジーク王子(幼少期)「プリンセスみたいだ」
カレン(幼少期)「『みたい』じゃなくて、私プリンセス!」
ジーク王子(幼少期)「まだだろ。許嫁(いいなずけ)とはいえ、結婚してないからな」
カレン(幼少期)「そうだけど・・・」
ジーク王子(幼少期)「だが、いずれはカレンもプリンセス」
カレン(幼少期)「じゃあさ、私とジークもいつかは・・・」
ジーク王子(幼少期)「ああ」
ジーク王子(幼少期)「物語のおしまいはいつも──」
「『いつまでも幸せに暮らしました』」
カレン(幼少期)「ねえ、ジーク」
カレン(幼少期)「幸せにしてよね」
ジーク王子(幼少期)「もちろんだ!」
ジーク王子(幼少期)「その代わり──」
ジーク王子(幼少期)「あの・・・その・・・」
ジーク王子(幼少期)「・・・カレンも、僕を幸せにしてくれるか?」
カレン(幼少期)「ふふっ」
ジーク王子(幼少期)「笑うな!」
カレン(幼少期)「いいの、嬉しいから!」
カレン(幼少期)「もちろん、私もジークを幸せにするよ」
ジーク王子(幼少期)「カレン・・・」
ジーク王子(幼少期)「大きくなったら、いつか──」
ジーク王子(幼少期)「二人で、お話に出てくるような “愛と幸せに満ちた国”を作ろうな!」
カレン(幼少期)(ジーク・・・)
カレン(幼少期)「あ、あっちにもきれいな花咲いてる~」
ジーク王子(幼少期)「おい待て!」
ジーク王子(幼少期)「そっちは・・・」

〇空
カレン(幼少期)「うお・・・あわわ!」
カレン(幼少期)「しまった、ここ崖なんだった!」
カレン(幼少期)「ヤバイヤバイ落ちる落ちるーーっ!」
ジーク王子(幼少期)「カレン!」
  掴まれた右腕。
  引き戻される体。
  けれど、同時に──
カレン(幼少期)「ジーク!」
  ──彼の身体が、宙に投げ出された。

〇岩山の崖
カレン(幼少期)「ジーク、ジーク!」

〇城の救護室
医者「一命は取り止めましたが、いつ意識が戻るか・・・」
カレン(幼少期)「そんな・・・」
カレン(幼少期)「ジーク、起きてよ」
カレン(幼少期)「幸せにしてくれるんでしょ?」
カレン(幼少期)「私も、あなたを幸せにするから」
カレン(幼少期)「約束・・・したでしょ・・・?」
カレン(幼少期)「二人でこの国を幸せにするの!」
カレン(幼少期)「だから・・・ジーク・・・」
ルシャード国王「カレン」
カレン(幼少期)「国王様!」
カレン(幼少期)「ジークは、私を庇って・・・」
カレン(幼少期)「うう、ふえん」
ルシャード国王「・・・事情は分かった。 今回の件は、他言無用」
ルシャード国王「国民の不安を煽るからな。 決して誰にも言うな」
カレン(幼少期)「はい」
ルシャード国王「それから、今後このようなことのないよう──」
ルシャード国王「ジークとの交流を、婚儀まで一切禁止する」
カレン(幼少期)「え!?」
ルシャード国王「以上だ。分かったな」
カレン(幼少期)「・・・はい」
カレン(幼少期)(こうなってしまったのも、全て私のせい)
カレン(幼少期)(私を庇ってくれた、優しいジーク・・・)
カレン(幼少期)(ごめんなさい、ジーク。 きっと目が覚めると、信じてるから)

〇荒廃した街
  3日後、ジークが目を覚ましたと聞いた。
  しかし、目覚めたジークは性格が変わってしまったらしい。
  4年前、隣国との紛争において、彼の打ち出した戦法にて我が国は勝利を収めた。
  しかし、その勝利には多くの犠牲を伴った。
  その血も涙もない戦法に、冷徹な態度が相まって──
  ジークは“氷王子”と呼ばれ始めた。

〇貴族の部屋
ハンナ「“氷王子”ですから。きっと視線で人だって・・・」
カレン(あの頃は、虫けら一匹殺せなかったのに)
カレン「“氷王子”ねぇ」
ハンナ「わ、申し訳ございません! 旦那様に向かってなんて事を・・・」
カレン「いーのいーの。国民からもそう呼ばれてるし──」
カレン「私のことも興味ありませんって感じで放置してるし!」
ハンナ「姫様・・・」
ハンナ「あ、忘れるところでした!」
ハンナ「城下への視察のお時間です! 私、それをお伝えに参りましたのに・・・」
カレン「え! もうそんな時間!?」
ハンナ「い、急いでお支度を~」
カレン「これでいい?」
ハンナ「ええ、バッチリです!」
ハンナ「さ、参りましょう」

〇噴水広場
町人「あら、姫様!」
町人「ああ、氷王子と結婚したとかいう・・・」
町人「し! 姫様に聞こえてしまうじゃないの!」
町人「言いつけられてしまったら、私たちも・・・」
町人「ああ、すまない」
町人「可哀想なプリンセス・・・」
町人「お相手はあの“氷王子”だろう?」
町人「あの王子なら、プリンセスも視線で殺してしまうかも」
カレン(・・・初めての公務なのに)
カレン(なんだか虚しくなってきた・・・)
カレン(私、どれだけ可哀想なプリンセスなの!?)
ハンナ「姫様、大丈夫ですか?」
カレン「ええ。このくらい・・・」
ハンナ「そろそろ城に戻りましょうか」
カレン「・・・そうね」
カレン「あ、少し寄り道してもいい?」

〇美しい草原
ハンナ「わぁ、とっても素敵な場所ですね、姫様!」
カレン「でしょ?」
カレン「子供の頃、よくここで遊んだの」
ハンナ「そうなのですね! それにしても・・・」
カレン「ハンナ! そっちはダメ!」
ハンナ「わっ・・・と! 落ちるとこだった!」
ハンナ「ありがとうございます、姫様。 ここ、崖になっているのですね」
カレン「そうなの・・・気を付けて」
ハンナ「はい! ・・・そういえば姫様はどうしてここへ?」
カレン「ちょっと、昔を思い出したの」
カレン「あ、そうだ!」
カレン(これとこれを摘んで、ここをこうして・・・)
カレン「出来た!」
ハンナ「まあ素敵! 姫様にも女の子らしいところがあったのですね!」
カレン「それ、どういう意味!?」
ハンナ「あ、ついうっかり・・・」
カレン「あはは、冗談よ冗談。どう? 似合う?」
ハンナ「はい、とっても!」
カレン「ありがとう。・・・そろそろ、帰らないとね」
ハンナ「はい」
ハンナ「・・・今夜はジーク王子との、初めての晩餐ですもんね」
カレン「ジークと会えるの、婚儀ぶりなの!」
カレン「まあ、婚儀も形だけだったんたけどね」
ハンナ「姫様・・・」

〇城の会議室
カレン「ジーク!」
ジーク王子「すぐに前菜を。5分後にメインディッシュ、その8分後にデザート。15分後には全て下げてくれ」
使用人「はい、ただいま!」
ジーク王子「トーマン、20分後までに残っている決議案を執務室に用意しておいてくれ」
トーマン(王子付執事)「かしこまりました」
カレン「ちょっと、ジーク!」
ジーク王子「・・・(もぐもぐ)」
カレン「ねえってば!」
ジーク王子「話す時間など無駄。食え」
カレン(はぁ!?)
ジーク王子「・・・(もぐもぐ)」
カレン(何なの!? 妻との初めての晩餐でしょ!?)
カレン(あーーもう!)
「・・・(もぐもぐ)」
  ────
カレン(え、ジーク、もう食べ終わってる!)
カレン「ちょ、ちょっと待って!」
ジーク王子「時間は有限。用件は手短に話せ」
カレン「あ、あのさ・・・これ、久しぶりに作ってみたの!」
カレン「懐かしいでしょ?」
ジーク王子「こんなもの・・・」
カレン「え・・・?」
ジーク王子「花畑に行ってる暇があるなら、その花畑な脳ミソをもっと有意義なことに使うんだな」
カレン「ジーク・・・」
カレン「嘘でしょ、昔は・・・」
カレン(本当に変わっちゃったんだ・・・)
  思い出すのは、幼き日の約束。
  そして今日、目の当たりにした国民の姿。
カレン(皆が愛に包まれて幸せに暮らせる国にしようって・・・)
カレン(なのに、こんな未来が来るなんて・・・)
カレン「全部、私のせいだ」
  あのとき、頭を打ってしまったから。
  全部忘れて、変わってしまったんだ。
カレン(私が変えなきゃ。ジークも、この国も)
カレン(そのためには、 あの頃の記憶を・・・気持ちを・・・)
カレン(全ては、愛と幸せに満ちた王国にするため・・・)

〇宮殿の門
カレン「私、ジークに愛されてみせる!!」

〇貴族の部屋
ハンナ「急にどうされたのです!?」
ハンナ「”氷王子”に愛されようなんて」
カレン「決めたの! あんな王子じゃ国民も私も可哀想!」
ハンナ「正気ですか?」
カレン「もちろん!」
カレン「“氷王子”なんて誰にも言わせないくらい、愛に溢れた優しい王子様にしてみせるから!」
カレン(ジークはきっと、あの頃の記憶を、あの約束を、思い出してくれるはず)
カレン(そうすればきっと、この国も、私も、みんな幸せに・・・)
ハンナ「ですが姫様、どうやって──?」
カレン「そ、それは・・・」
「・・・・・・」
カレン「何かいい案ない?」
ハンナ「ある訳ないじゃないですか!」
ハンナ「だって”氷王子”ですよ、姫様!?」
カレン「ジークだって普通の男だよ!」
ハンナ「姫様・・・」
ハンナ「『愛を望むなら、まずは甘えろ』」
カレン「へ?」
ハンナ「この小説の中の名言なのですが・・・」
カレン「何その本?」
ハンナ「ご存知ないですか? 今、城下で流行っている恋愛小説です」
カレン(へえ、『甘えろ』か)
カレン「よしっ!」
カレン「ジークのところに行こう、ハンナ!」
ハンナ「えっ!?」
ハンナ「まさか本当に甘えるおつもりですか!?」
カレン「もー、ハンナが言ったんでしょ!」
ハンナ「で、ですが、・・・」
カレン「善は急げ! 行くよ、ハンナっ!!」
ハンナ「ひ、姫様〜っ!」

〇屋敷の書斎
  同刻、王子の部屋──

次のエピソード:第2話 突き付けられた剣先

コメント

  • 冷徹王子の心を溶かす!
    なんて素敵なストーリー❤️
    大好物です、攻略難易度高い方が燃え上がりますw
    これからジーク王子がどう変わっていくのか、ゆっくり読ませていただきます😆

  • カレンのブルドーザーみたいなポジティブパワー、素敵ですね!彼女なら氷をバキバキ破壊できそうです。
    王子の最後の表情は意外でした。一体何を抱えているのかな?

  • 朝永さんこんにちは!
    いつも引き込まれるお話をありがとうございます!
    今回は引きが大きくて特に続きがきになりました!王子の涙、姫に対する周りからの対応、今後気になる展開がたくさんですね!
    お話に厚みがあって普通にアニメを見ている感覚でした😄

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