輪廻恋生

バンドマンイトーさん

読切(脚本)

輪廻恋生

バンドマンイトーさん

今すぐ読む

輪廻恋生
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇古い畳部屋
花野 ミズキ(ついにワシも最後の時か)
花野 ミズキ(ばあさんが死んで5年か)
花野 ミズキ(お前と過ごした日々は今も鮮明に思い出せるぞ)
花野 ミズキ(願わくば)
花野 ミズキ(来世でもばあさんと・・・)
花野 ミズキ(過ごせたら・・・な・・・)
花野 ミズキ「ガクッ」

〇病室
カスミ「・・・先に逝くわね」
花野 ミズキ「あぁ、ばあさん、後のことは心配するな」
カスミ「ふふふ」
カスミ「期限の約束、ちゃんと守ってくれてありがとうね」
カスミ「・・・」
花野 ミズキ「ばあさん!?ばあさん!!」

〇黒
???「おい!ミズキ!」
???「なにぼーっとしてるんだよ?」

〇おしゃれな大学
唐松 タケオ「おい!ミズキ!」
春花 ミズキ「誰じゃ!?」
唐松 タケオ「誰じゃって・・・」
唐松 タケオ「なんでじいさんみたいな口調になってるんだ?」
春花 ミズキ「お・・・おぉ」
春花 ミズキ「お前は!タケオ!」
唐松 タケオ「なんだよ、あらたまって」
春花 ミズキ「ワハハ!」
春花 ミズキ「懐かしい!久しぶりだのう!」
唐松 タケオ「いや、ずっと一緒にいただろ」
春花 ミズキ「10年前にぽっくり逝った時が最後じゃったなぁ」
春花 ミズキ「ひ孫にかっこいいとこ見せるんだって、周りの静止を振り切って保護者リレーに参加するなんて・・・」
春花 ミズキ「そりゃ死ぬわ」
唐松 タケオ「死んでねぇし!」
唐松 タケオ「何の話だよ!?」
春花 ミズキ「むむむ」
春花 ミズキ「そういえばおぬし、妙に若いな」
春花 ミズキ「もっとしわくちゃだったはずじゃ」
唐松 タケオ「ボケてんのかお前」
唐松 タケオ「俺が若かったらお前も若いだろ」
春花 ミズキ「ワシも?」
唐松 タケオ「まだ寝ぼけてんのか?」
唐松 タケオ「鏡みせてやるよ」
春花 ミズキ「!?」
春花 ミズキ「ワシが・・・・・・若い!」
春花 ミズキ(もしや・・・)
春花 ミズキ(あの世だと思ってたが、若かりし日のワシに戻ったのか?)
春花 ミズキ(なんてことだ・・・)
唐松 タケオ「急に黙ってどうした?今日の試験のことでも思い出したか?」
春花 ミズキ「むむむ」
唐松 タケオ「まぁ気を落とすな!」
唐松 タケオ「パーッと女の子と遊んで忘れちまおう!」
春花 ミズキ「いやはや・・・ワシはそんな気分でもないし」
春花 ミズキ「今更若いオナゴになぞ興味がないわい」
唐松 タケオ「そんなジジイみたいなこと言ってないで!」
春花 ミズキ「しかしじゃな・・・」
春花 ミズキ「ん?あれは・・・?」
唐松 タケオ「あ、草野カスミさんだ」
春花 ミズキ「カスミ・・・?」
唐松 タケオ「女の子と遊ぼうとはいったけど、あの子はやめとけ!」
唐松 タケオ「確かに見てくれはいいかもしれんが、誰が声をかけても冷たく睨んでくる」
唐松 タケオ「愛嬌なんて皆無の女だ!」
唐松 タケオ「あんなつまらんやつやめて別の女の子と──」
春花 ミズキ「・・・ばあさん」
春花 ミズキ「ばあさああああん!!!」
唐松 タケオ「ちょ、おい!」

〇大学の広場
春花 ミズキ「はあはあ・・・」
春花 ミズキ「心臓が爆発しそうじゃ・・・」
草野 カスミ「何か用?」
春花 ミズキ「ば、ばあさん!ワシじゃ!」
草野 カスミ「ば!?ばあさん!?」
春花 ミズキ「やはりばあさんは別嬪じゃ!一目でわかったわい!」
春花 ミズキ「さぁ、また一緒に家で暮らすかのう」
草野 カスミ「・・・誰がばあさんよ!」
草野 カスミ「私はそんなに老けてないわ!」
草野 カスミ「しかも突然一緒に暮らそうだなんて」
草野 カスミ「あなたちょっと失礼じゃない!?」
春花 ミズキ「何ツンツンしとるんじゃ?」
春花 ミズキ「それにばあさんはばあさんじゃろ。のぅ?」
草野 カスミ「・・・失礼します!」
春花 ミズキ「あれ?おーい、ばあさーん?」
春花 ミズキ「おかしいな・・・怒らせちまったわい」
春花 ミズキ「相変わらず乙女心がわからん」
唐松 タケオ「はぁはぁ・・・」
唐松 タケオ「突然走り出すなって」
唐松 タケオ「お前、カスミさんと知り合いなのか?」
春花 ミズキ「知り合いも何も、ワシが生涯惚れた女じゃ」
春花 ミズキ「あれ以上の女はこの世におらん」
唐松 タケオ「なんだかわからんが、あの偏屈女に惚れちまったのか」
春花 ミズキ「もとから惚れてるわい」
唐松 タケオ「そうか・・・」
唐松 タケオ「なら協力するぜ!」
唐松 タケオ「お前がカスミさんの心を掴めるような男にしてやる!」
春花 ミズキ「おぉ!さすが昭和の二枚目じゃ!」
春花 ミズキ「頼む!もう一度ワシをいっぱしの男にしてくれ!」
唐松 タケオ「よし!そうと決まればその変な言葉遣いからなおすぞ!」

〇黒
  それからワシはタケオの特訓を受けながら、何度もカスミにアタックし、いつしか数週間がたった

〇開けた交差点
春花 ミズキ「カスミ!ワシ・・・俺と一緒になってくれ!」
草野 カスミ「まったく・・・」
草野 カスミ「本当にしつこいわね」
草野 カスミ「こんなにしつこい人はあなたが初めてよ」
草野 カスミ「この数週間であなたの気持ちは十分すぎるほどわかったわ」
春花 ミズキ「それなら、一緒にいてくれないか?」
春花 ミズキ「俺はわかってるんだ」
春花 ミズキ「お前のことを幸せにできるのは俺だけなんだ!」
草野 カスミ「・・・ふふ、何その自信」
草野 カスミ「どこから湧いてくるわけ?」
草野 カスミ「そんなに自信満々なところ悪いけど」
草野 カスミ「私は誰とも親しくしないって決めてるの」
春花 ミズキ「?」
草野 カスミ「私、小さい頃にお母さんが死んじゃったの」
草野 カスミ「とても悲しかったけど、お父さんとお姉ちゃんがいてくれたから、なんとか立ち直ることができた」
草野 カスミ「でもね、そんなお父さんとお姉ちゃんも事故で死んじゃって・・・」
草野 カスミ「ものすごく悲しかった」
草野 カスミ「一人になっちゃったって、ずっと泣いてた」
草野 カスミ「そこで私、気付いたの」
草野 カスミ「大切な人を作るから悲しくなるんだって」
草野 カスミ「こんなに辛い最後が待っているなら」
草野 カスミ「いっそのことずっと一人でいた方がいいんじゃないかって思うことにしたの」
草野 カスミ「だから、あきらめて?」
春花 ミズキ(ボケのせいで忘れてたが、確かにそんな過去があったな、ばあさんには)
春花 ミズキ(じゃが・・・)
春花 ミズキ「じゃあ期限付きで一緒にいてくれ」
草野 カスミ「期限付き?」
春花 ミズキ「そう」
春花 ミズキ「お前が死ぬまでっていう期限付き」
草野 カスミ「それって期限じゃなくて一生じゃない!」
草野 カスミ「期限付きだろうが人と関わるなんて──」
春花 ミズキ「お前にとっては一生だろうが」
春花 ミズキ「俺にとっては期限付きだ!」
春花 ミズキ「俺はお前より先には絶対に死なない!約束だ!」
春花 ミズキ「期限がきれるまでずっとそばにいるから安心しろ!」
春花 ミズキ「今際の際まで見届けてやるから安心しろ!」
草野 カスミ「なにその告白、いまわのきわって・・・」
草野 カスミ「そこまで言うならわかったわ」
草野 カスミ「私が死ぬまで、しっかり私を見守りなさいよ!」
春花 ミズキ「おう!ワシにまかせとけ!」
春花 ミズキ「ばあさんの最後はワシがしっかりと見てやる!」
草野 カスミ「だからばあさんって言うな!」

〇古い畳部屋
  そして数十年後
花野 ミズキ(ついにワシも最後の時じゃな)
花野 ミズキ(ばあさんが死んで5年か)
花野 ミズキ(願わくば・・・来世でもばあさんと・・・過ごせたら・・・な・・・)
花野 ミズキ「ガクッ」

〇おしゃれな大学
春花 ミズキ「んんん?」
春花 ミズキ「もしや、また若い頃に戻ってる?」
春花 ミズキ「ということはまたばあさんと暮らせる!」
春花 ミズキ「よっしゃぁ!」

コメント

  • ばあさああああん!のところでめちゃくちゃ笑ってしまいました笑
    でも読めば読むほどとても奥が深くて。
    特に告白のところはすごく感銘を受けました!!

  • 一途な恋心ですね。何度転生しても一人の女性を求め続けるのは。重たくなりそうなテーマをコミカルに描いているので、読んでいて楽しくハッピーになりますね!

  • 普通の生まれかわりを想像してたので、予想の斜め上でしたが、じいさんが何度も「ばぁさん」と言ってしまう場面が可愛くてくすっと笑えました。いや確かにばぁさんなのだけれども、、。こういう幸せの続き方もいいものですね〜。

コメントをもっと見る(5件)

ページTOPへ