エピソード1【国を追放された私は】(脚本)
〇西洋の城
ローザ「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
この国サルタレロの今上聖女である、【紅の聖女】ローザ様が叫ぶ。
名前に相応しい、綺麗な長い赤髪と燃えるような紅い瞳が印象的な女性。
ローザ様が着ているものも、見たこともないような仕立てのよい高級そうな赤いドレスだ。
そんなローザ様に指を突き付けられていたのは私、エリスだった。
サルベー「どういうことだ。ローザよ。この者、エリスが聖女ではないと申すのか?」
ローザ「ええ。サルベー陛下。この者が聖女であるはずがないのです。何故ならば──」
ローザ様の説明を要約するとこうだった。
聖女とは偉大なる精霊に愛された女性を指す。
偉大なる精霊は四大元素とも呼ばれ、それぞれに特有の色を持つ。
例えばローザ様なら赤、『火』の精霊に愛されたお方だ。
精霊が力を貸してくれる際の器の大きさを測る国宝【色視の水晶】に手を当ててローザ様はサルベー様に実演してみせる。
ローザ「この様に光の強さで精霊力の大きさを、そして色で自らと縁を持つ四大元素を示すのです」
サルベー「ふむ。煌々と赤い光が照っておるの。眩しくて目が痛いくらいだ」
サルベー様の言う通り、ローザ様が触れると水晶から赤い光が眩いほどに発せられた。
ローザ「お分かりになられましたか?」
ローザ「私は火の精霊と強い縁を持っています。しかしこの者ときたら……」
サルベー「だが、ローザよ。エリスが触れた時も強い光が発せられたではないか」
そう。ここに来てそうそうにサルベー様とローザ様の目の前で、私も水晶に触れていた。
問題はその結果にあったのだけれど。
ローザ「色を、色を覚えていますか? 陛下」
ローザ「四大元素の色はそれぞれ、火の赤、水の青、風の緑、そして地の黄色です」
ローザ「それなのに!」
サルベー「ふむ。エリスの光は、目を開けられぬほどであったが、色は無かったな」
目が眩む程度では足りない、見るものの目を潰すほどの強い光。
私が触れた途端、水晶から発せられた光の色は──無色だった。
ローザ「光の強さなど問題ではありません!」
ローザ「むしろ精霊に愛されずにこの様な光を出すこの者は、この国に災いをもたらすに違いありません!!」
ローザ「即刻この国から追放するべきです!!」
サルベー「し、しかしのう……エリスの村の者の話では、様々な奇跡を既に起こしていると……」
ローザ「そんなもの! 田舎者の戯言と、真の聖女である私の言葉と。陛下はどちらを信じるのですか!?」
サルベー「そ、それはローザよ。お前だ」
頭を下げながら聞いている二人の話は、何やらおかしな方向に進んでいる。
私は下手をすると国外追放されてしまうらしい。
ローザ「何より! 精霊に愛されている最たる証は! 精霊の化身たるパルを持つはず!」
ローザ「この者のそばにそれが見えますか? 陛下!」
サルベー「うーむ。何も見えんのう。ローザのその燃え盛るトカゲ、サラマンダーのようなものが居るとは思えんな」
あ、それは……。
私が弁明をしようとした瞬間、無常にも私の処遇が決まってしまった。
サルベー「あい。分かった! ローザよ。お前の言うことを全面的に信頼しよう」
サルベー「エリスよ。聖女と偽り謀った罪は重い」
サルベー「よって、この国から追放とする!!」
こうして何の弁明も出来ずに、生まれ育った村の期待を一身に背負って王都にやってきた私は、
村に帰ることも出来ずに生まれた国から追放されたのだった。
本格的なファンタジーですね!
作り込まれた世界観がすごいです。
それにしても…これからどうなっちゃうんでしょうね。
いきなり追放はひどい気が。
ストーリーが本格的に作られていてファンタジーの世界に引き込まれました。登場人物のの会話の言葉の選びもよくて楽しみながら最後まで読ませて頂きました。
話の内容がわかりやすくとても読みやすかったです。
エリスにはきっとすごい力が秘められているのですね。
どんな力か気になり早く続きが読みたくなりました。