恋の神様は襟足が長い

サカミキ

第一話 遅すぎた再会(脚本)

恋の神様は襟足が長い

サカミキ

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〇黒背景
  ガラガラ──
奏羽(何か騒がしいな)
救急隊員「風見奏羽さん、23歳、男性 バイクで転倒して街路樹に衝突・・・」
奏羽(えっ、俺!? そっか、バイクで事故ったんだ)
奏羽(俺、死んじゃうのかなぁ? 死んじゃうんだよね 母ちゃんゴメン・・・)
奏羽(こんなことなら、ゆー君に告っとけばよかったなぁ ワンチャンあったかもしんねーし)
奏羽(最後に会いたかったなぁ・・・ ゆー君・・・夕凪)
奏羽(死ぬ前にもう一度・・・ ゆー君に会わせて 神さま〜)
  白い影に手首をつかまれ、引っ張られる。
奏羽「うわっ!」

〇病院の廊下
奏羽(えっ、ゆー君!? 神さま〜ありがと)
奏羽「ゆ、ゆー君・・・好きだ!」
  掴んでいた奏羽の手をそっと離す夕凪。
夕凪「ごめんなさい」
  ペコリと頭を下げる。
奏羽「ええー」
夕凪「『ええー』じゃない! 何ふざけてんの? 状況わかってる?」
奏羽「いや、何がなんだか・・・ ゆー君こそ何でココに?」
  周りをキョロキョロ見渡す奏羽。
夕凪「俺、さっきこの病院で死んだんだよ」
奏羽「はぁ? いや、ちょっと何いってるかわかんない はぁ?」
夕凪「『はぁ』2回言うな」
夕凪「多分、そーちゃんが見てるのは幽霊なんだよ」
奏羽「はぁ?」
夕凪「3回目!」
夕凪「病院で寝てたら体が引っ張られる感じがして 目の前が真っ白になって・・・ 気がついたら自分を見てた」
奏羽「幽体離脱〜的な?」
夕凪「そう、それ」
夕凪「で、誰かに呼ばれて・・・ 引き寄せられるように来たら、そーちゃんがいて 思わず手を掴んじゃった」
奏羽「仮にお前が幽霊だとして、じゃ、俺は?」
夕凪「・・・」
奏羽「俺は・・・ バイクでコケて 最後にゆー君に会いたいなぁって思ってたら 目の前に・・・」

〇開けた交差点
  バイクが倒れ投げ出される奏羽。
  ヤバイ、俺、死ぬ
  そーちゃん
  えっ、ゆー君
  
  コレ、走馬灯てやつ!?
  わぁ──
  街路樹にぶつかる奏羽の体を白い光が包む。

〇病院の廊下
  立ち尽くす奏羽と夕凪。
  その傍を看護師が通り過ぎる。
奏羽「てことは、俺も死んだの? 幽霊なの?」
夕凪「さっきの看護師さん、俺たちのこと気づいてなかったろ? 壁に触ってみ」
  手を壁にあてる。手が壁に吸い込まれる。
夕凪「俺が、手を引っ張っちゃったから? そーちゃんを道連れにした!?」
奏羽「むしろ逆? 俺が死に際にゆー君のこと考えたから 俺の方こそ、お前のこと引き寄せたのかも」
夕凪「俺は病気だったんだ 寿命だよ」
奏羽「・・・」
夕凪「ここにいても仕方ない とりあえずそーちゃんの体んとこ行こ」
  奏羽が運ばれて行った方向へ歩きだす。
奏羽「待て待て。幽霊なのに普通に歩いてくの? 飛んでったりできねーの?」
夕凪「出来るかもしれないけど、やり方わかんないし そーちゃんこそ体どこよ?」
奏羽「わかんね」
夕凪「自分の体でしょ 念力的なやつでわかんないの?」
奏羽「んー」
奏羽「なんも感じないな」
夕凪「何この時間? どうする?」
奏羽「ゆー君の体は?」
夕凪「まだ病室にあると思うけど」
奏羽「とりあえず、そこ行こ」
夕凪「ねぇ、そーちゃん 俺、どんな風に見えてる?」
奏羽「どんなって スーツ着てて、成人式で会った時と変わんないな」
夕凪「そっか、幽霊って思い出補正入るんだな」
奏羽「どーゆーこと?」
夕凪「夢にさ、知り合いとか出てくることあるじゃん?」
奏羽「あっ、うん」
夕凪「その人ってさ、実際そこにいるわけじゃないじゃん?  見る側のイメージ。そんな感じ」
奏羽「ん?」
夕凪「実像じゃなくて、見たい姿を見てるだけ」
奏羽(成人式の時のゆー君の写真 しょっちゅう見てたからなぁ)
夕凪「いや、自分が見せたい姿を見せてるのかも 今の俺はガリガリなんだ・・・ そーちゃんには見られたくない」
奏羽「何で? 病気のこと言ってくれなかったの? 死ぬ前に会いたかったよ!」
夕凪「弱ってく所なんて見せたくないよ」
奏羽「俺たち、小一からの仲だろ」
夕凪「高一の時、俺の母さん亡くなったじゃん 大切な人がいなくなる辛さ知ってるから」
奏羽「ああ、おばさんにはガキの頃から世話になってたからショックだった」
夕凪「その頃、高校違うのにそーちゃんしょっちゅうウチ来てくれたよな」
奏羽(それは、お前が好きだったから)
夕凪「残された人はどうしたって後悔が残るから・・・ そんな思いさせたくないよ」
夕凪「俺にとってそーちゃんは特別な・・・ 親友だから」
奏羽「なら・・・親友なら言って欲しかった」
夕凪「そーちゃんには、かっこ悪い姿見せたくなかったんだ」
奏羽「どんなお前だって、支えになりたかったよ」
夕凪「支えになってくれる人ならいたから・・・」
奏羽(だよな、彼女いたよな)
奏羽「そっか、ならよかった その人に会ってみたかったな 紹介してくれたらよかったのに」
  歩き出す夕凪。
  その後を奏羽がついていく。

〇綺麗な病室
  〈風間夕凪〉
  
  ネームプレートがついた病室の前で立ち止まる。
  部屋の中を覗く。
夕凪「あれが、俺の大事な人。空」
奏羽「・・・」
夕凪「で、隣が俺の姉貴」
奏羽「知ってるし」
夕凪「久々だし忘れてるかもって 彼女だと勘違されるかなって・・・」
奏羽「いや、お前とそっくりだし」
奏羽(てか 男! 彼女じゃなくて? 彼氏かい!?)
夕凪「そーゆーことだから」
奏羽「どーゆーこと?」
奏羽(えっ? 目あってる?)
空「誰?」
奏羽「俺? 見えてるの?」
夕凪の姉「空君、どうしたの?」
空「お知り合いですか?」
夕凪の姉「知り合いって? 誰のこと?」
夕凪「そーちゃん、ちょっと!」
  夕凪が奏羽の腕を引っ張る。

〇病院の待合室
夕凪「空、そーちゃんのこと見えてたよね?」
奏羽「ああ、何で?」
夕凪「わかんないけど、姉貴には見えてなかった」
奏羽「だよな 空君、霊感強いとか?」
夕凪「でも、俺のことは見えてない」
「・・・・・・」
夕凪「この件はとりあえず保留ってことで」
奏羽「う、うん」
奏羽「あっ! 母ちゃん」
夕凪「早く、追っかけよ そーちゃんとこ行くだろ」
奏羽「ああ、そうだな」

〇ナースセンター
奏羽の母「あのー 風見奏羽の母です」
看護師「ああ、風見さん 先程、治療が終わりまして・・・」
  奏羽と夕凪は聞き逃すまいと看護師さんににじり寄る。
「ちょっと看護師さんから離れよっか」
「だね」
看護師「今は病室で寝ていらっしゃいます」
奏羽の母「大丈夫・・・ですか?」
看護師「はい 怪我の方は大丈夫ですよ 明日、先生より詳しい説明があると思います」
「死んでない!!」

次のエピソード:第二話 ままならない魂

コメント

  • エピソードタイトル通りの、切ない恋模様でした。
    奏羽くんは夕凪と会えたけれど、色々な意味で遅かったんですね(;_;)
    また、ラストの怒涛の展開に何で?どうして?が止まりませんでした。
    続きが気になる〜!!

  • みえる人にはみえる、彼は、人間と幽霊の狭間にいたのかなぁと想像しました。大好きな人の恋人が異性だったらあきらめもつきやすいのに同性だとわかると悔しさが増しそうですね。

  • 空さんには奏羽さんが見えるんですね。そして恋人の夕凪さんは見えない…。何か行動したいとか、胸のうちを吐露したいとか、自分が当事者だったらそう思わされそうなトリガーの欠片が散りばめられていて、ハラハラするような気持ちで読んでいました。ずっと写真を見ていたから写真の姿で見えるのが、想いの丈を感じられてよかったです。

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