わんこな後輩くんは、ASMR配信者さんでした

桜海(おうみ)とあ

わんこな後輩くんは、ASMR配信者さんでした(脚本)

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〇女性の部屋
KEY「それじゃあ、部屋の電気、消そうか」
KEY「おいで。ほら、俺に腕回して? ぎゅっ、ってしよう」
KEY「今日も疲れた?  いっぱい、よしよししてあげる」
白川(KEYの撫で撫で、癒される・・・)
  ベッドに横たわる私の耳へと流れ込んでくるのは、男の囁き声
  恋人に語りかけるような口調の『KEY』の声を聴きながら、今夜も眠りにつく
KEY「おやすみ、いい夢が見れますように」
白川「おやすみ、KEY」
  ASMR配信者である『KEY』の添い寝囁きボイス配信を聴き始めて、はや1年
白川(やっぱりKEYの声って、よく眠れる)
  きっかけは、ハードワークで心のバランスを崩してしまい不眠症になったからだ
  アロマや癒し動画、水音などのASMRで不眠解消をしようとしたが効果なし
  藁にもすがる思いで飛び込んだのが、『KEY』の添い寝囁き配信だった
白川(隣にいるみたいにリアルなんだよね)
  おかげで不眠症ともおさらばできた

〇異世界のオフィスフロア
  オフィス・夕方
金沢 健(カナザワ タケル)「白川先輩、もしかして来月の進行表って、営業部に流してくれました?」
白川「さっき、メールしといたよ」
金沢 健(カナザワ タケル)「うわー。すみません! つい忘れちゃ、は・・・クシュ!!」
白川「調子悪そう。早く帰りなね」
金沢 健(カナザワ タケル)「いえ、先輩を差し置いて先に帰るなんて!」
白川「体調悪い時は無理しないこと、 その代わり私が辛い時は助けてね?」
金沢 健(カナザワ タケル)「ううっ! ありがとうございます! ではお言葉に甘えます」
白川「よし、私も配信時間に間に合うように終わらせよ!」

〇女性の部屋
白川「配信、間に合ったー!」
  イヤフォンをつけてベッドに潜り込む
KEY「今晩は、今夜も君の隣でお喋りするよ」
KEYのリスナー「今日のKEYの声、いつもと違う?」
KEY「わかっちゃった? ちょっと風邪気味なんだ」
白川(声、辛そうだな、無理して配信してないかな?)
白川(毎日配信って、負担大きそうだし・・・)
  その日の夜は、KEYの体調が気になりすぎて珍しく眠れなかった

〇異世界のオフィスフロア
同僚「金沢のやつ、病欠だってさ」
白川「昨日から調子悪そうだったもんね」
同僚「あいつが休むなんて珍しいからな。 独り身だから死んでなければいいけど」
白川「ちょ、冗談でもやめてくださいよ ただの風邪ですって」

〇おしゃれな廊下
白川(とは言ったものの、心配で来てしまった)
  ピンポーン♪
  ──ガチャ
金沢 健(カナザワ タケル)「は・・・い。あれ? 先輩?」
白川「あの、お見舞いに。 これよかったら食べて」
金沢 健(カナザワ タケル)「ありがとうございます」
白川(何買っていいかわからなかったから、ついKEYが配信で言ってた風邪で食べたいベスト3を買ってきちゃった)
金沢 健(カナザワ タケル)「わぁ! どれも僕の好きなやつだぁ」
白川「なら良かった」
  ぐるると、健のお腹が鳴った
金沢 健(カナザワ タケル)「す、すみません! 昨日から何も食べてなかったので」
白川「邪魔じゃなければ、何か作ろうか?」
金沢 健(カナザワ タケル)「いいんですか!?」

〇システムキッチン
白川(後輩のキッチンで何やってるんだろ)
白川(確かKEYが好きなのは卵粥だった。金沢くんも好きかな?)
白川(って、男子の好みの参考が、推しのASMR配信者とか、女として終わってる)

〇明るいリビング
金沢 健(カナザワ タケル)「いただきます!」
金沢 健(カナザワ タケル)「うぁ! あっち!」
白川(ふふっ。猫舌とかKEYみたい)
白川「その食欲っぷりなら、明日は出社できそうだね」
金沢 健(カナザワ タケル)「忙しい時なのに、お休み貰っちゃって、すみません」
白川「いいの、いいの。無理して体壊したら、元も子もないしね」
白川(私みたいに不眠症なんかになったら大変。せめて後輩たちには負担ないようにしてあげたいな)
金沢 健(カナザワ タケル)「先輩だって、無理しちゃダメですからね?」
白川「あ、ありがとう」
白川(なんだろう? 風邪ひいてるせいかな? いつもと違って聞こえる)
白川(まるでKEYみたい)
白川(もうっ、何考えてるの?)
白川「ほら食べたらさっさと寝る!」
  ベッドルームに健を押し込んだ
  後片付けを終えてから扉をノックする
白川「そろそろ帰るね」
白川(・・・返事ない)
白川「金沢くん? 入るよ?」

〇一人部屋
  部屋に入ると、
  PC机の上に真っ黒な人の生首があることに気づいた
白川「ひ!!!」
  よく見ると、
  ASMR配信でよく使用されるダミーヘッドと呼ばれる人の頭部を模ったマイクだった
白川(な、なんだ、ダミヘ(ダミーヘッド)か。 いや、なんで金沢くんの部屋に?)
白川(実は金沢くんって配信者なの?)
白川(み、見なかったことにしよう)
  踵を返そうとした途端、
  カバンが机にぶつかり、背後のモニターが光る
  そこには、見知った『KEY』の配信画面が映っていた
白川(どういうこと? KEYが金沢くん?)

〇女性の部屋
白川(そんなはずないよね。気を取り直して今夜の配信を聴こうっと)
KEY「今晩は、今夜も君の隣でお喋りするよ」
KEYのリスナー「声の調子戻った?」
KEY「そうなんだ。 お粥も食べられたし、もう全快だよ」
KEYのリスナー「お粥って、自分で作ったの?」
KEY「実は職場の先輩が作ってくれて・・・」
白川(嘘でしょ、これって私のこと?)
白川(どうしよう! KEYが金沢くんだと思ったら、眠れない!)
白川(せっかく見つけた安眠方法なのに!)

〇異世界のオフィスフロア
白川「金沢くん、ちょっと聞きたいことあるんだけど」
金沢 健(カナザワ タケル)「どうしました?」
白川(実は配信者のKEYですか?)
白川(ダメ! やっぱり聞けない!)
白川(私がリスナーってバレたら恥ずか死ぬ! だったら不眠でいる方がよっぽどマシ!)
白川「げ、元気になって良かったね」
金沢 健(カナザワ タケル)「はい、先輩のおかげです! だから今度は僕が先輩を助けますからね」
白川(まあ、いっか・・・)

〇異世界のオフィスフロア
  一方、健──
金沢 健(カナザワ タケル)(ごめんなさい、先輩)
金沢 健(カナザワ タケル)(僕の配信を観に来ている先輩の足跡、気づいてました)
金沢 健(カナザワ タケル)(だから、わざとバラしたんです)
金沢 健(カナザワ タケル)(きっと、 今は眠れないかも知れないけれど)
金沢 健(カナザワ タケル)(これからは眠る先輩の隣で、ずっと囁いてあげますから)
金沢 健(カナザワ タケル)(もう少しだけ、待っててくださいね)

コメント

  • きっと実際の彼も素敵だから事実を知ってしまった彼女の夢を壊さずに済んだのかもしれませんね。これからの配信で独占力が強くならなければいいですが!

  • よく話しをせずに仲だけが深まってしまって、後から言いにくい事ってありますよね。妙に親近感がわいてしまう楽しいストーリーでした。

  • お互い相手はこのことを知らないと思っているところに人間らしさを感じました!
    でも自分なら言いたいなぁ、有名になれば人に自慢したいなぁとか考えてしまいますが笑

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