消えゆく世界の茜色

しがん

第一話(脚本)

消えゆく世界の茜色

しがん

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消えゆく世界の茜色
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  ──────
  ───二ヶ月後、世界が終わる。
  それは突然に、俺らの日常に
  突きつけられた。
  事の始まりは、何かの雑誌の記事
  だったらしい。
  「世界が終わる!!」と銘打たれた
  その記事は、
  「二ヶ月後に世界が無に飲み込まれ、
  終末を迎える」なんて、まことしやかに
  謳っていた。
  まだそのときは、誰も信じて
  いなかった。・・・けれど。
  次の日から変化が起きた。

〇空
  ───空だ。
  夜になっても、朝を迎えても。
  空が、茜色に染まっているのだ。
  新聞も、テレビも、雑誌も。
  どうしてこんな現象が起きているのか? 
  という内容で盛り上がる。
  そして、誰かが突き止めた。
  期限は二ヶ月。
  二ヶ月で、世界は、終わる。

〇教室
  机の上に広げた雑誌に目を落とす。
  雑誌なんて普段は買わないけれど、
  世界の終末特集なんてチープなタイトルに
  まんまと惹かれてしまった。
  ・・・まあでも、知りたいことは
  書いてなかったけど。
「くーれっ」
  ぼーっとしていた俺に、声がかかる。
  彼女は茜と言って、俺の幼馴染みだ。
茜「呉、放課後だよ。帰ろ?」
  ・・・ああ、と返事をし、俺は雑誌を
  閉じて立ち上がった。

〇通学路
  帰り道を、茜と歩く。
茜「そういえば・・・テレビで見たんだけど、 残りの人生でやりたいことがあれば、 今のうちにやっておきましょうって」
  自分も同じような番組を見たな、と
  ぼんやり思う。
  世界が終わるとわかってから、テレビや
  報道はその話題で持ちきりだ。
茜「私はいっぱいあるんだけどさ。 いろんなところに旅行に行ったり、 食べたいものを食べてみたり・・・」
  続けて、いくつも挙げていく。
  両手の指が足りなくなって、
茜「二ヶ月もあれば、けっこう色んなこと できるよね」
  そう言う茜の目はキラキラしている。
  楽しそうだ。
  けれど直後、諦めるように手をぱっと
  開いた。
茜「まあ、学校があるからできないけどさ」
  本当に世界が終わるなら、学校なんて
  無意味だからサボるという選択肢も
  あるのに。妙なところで真面目だ。
  それか、学校に行っていたいのかも
  しれない。茜は交友関係が広いから。
茜「世界が終わるっていうのに、まだ学校は いつも通りだねえ」
  「世界が終わるっていうのに」、
  というのは、最近の茜の口癖だ。
  茜の言う通り、いつも通りの学校生活が
  続いていた。
  ・・・メディアと同じで、話題が、
  「世界の終末」で持ちきりである
  こと以外は。
茜「ところで、呉は何かないの?  やりたいこと」
呉「俺は・・・」
  茜の方を見る。
呉「秘密」
茜「え、なんで」
呉「なんでも」
  隣を歩く茜を、少し追い越す。
  そのままずんずん進んでいくと、
  茜は早足で付いてきた。
茜「教えてよ」
  今度は逆に、急に立ち止まる。
  茜が驚いて転びそうになった。
呉「・・・じゃあ、世界最後の日になったら 教えてやるよ」
茜「え・・・」
茜「でも、それじゃあ意味が・・・」
呉「・・・意味?」
茜「あ、や・・・なんでもない」
  また、ゆっくりと歩き出す。
  ほどなくして、隣同士で建つ
  俺らの家に着いた。
茜「じゃあ、また明日ね」
呉「・・・・・・ああ」
  そんな明日が、来なくなる日が来る。
  今の俺には、想像もつかなかった。

次のエピソード:第二話

コメント

  • 10人目の読者でした。
    青春と切なさを予感させる……!
    ラノゲをちょっと思い出して懐かしい気持ちです。

  • ラノゲツクール懐かしいです😊
    「終わり」がテーマだった、しがんさんの作品をまた読めるなんて嬉しく思います!
    思い出したら涙腺に来ました💦
    続きを楽しみにしております!

  • 作品の世界観に引き込まれそうになります。呉と茜の関係性は、ずっと見続けたくなります。2人は2ヶ月間をどのように過ごしていくのかとっても気になりますね。

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