路地裏キングダムどっとえぐぜっ!

蒼井円

"Hello World."(脚本)

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〇怪しげな酒場
酒場の客A「知ってるか、昨日もまた喰われたって話だぜ?」
酒場の客B「毎晩一人襲うって噂の人喰い狼だろ?」
酒場の客A「ああ、医者が訪れたときには手遅れだったらしい。残ってたのは眼球だけだってよ」
酒場の客B「ひえ~恐ろしいね。 ここ十日間、毎日って話だもんな」
酒場の客A「それが三日前は犠牲者がいなかったらしい。 何でも騎士の格好をしたやつに助けられたとかで・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「その話、詳しく聞かせてくれないか?」
酒場の客B「何だ兄ちゃん、興味があるのかい? だがあまり関わらない方が・・・・・・」
酒場の客A「探偵さんかい、そりゃ失礼。 人喰い狼ってのはな──」

〇中世の街並み
???「おにいさんもあの村に行くんだ?」
明石天空(あかし そら)「君はいったい?」
???「ふふふ、探偵さんでも”役職”は持ってないんだね♡」
???「気をつけてね、おにいさん♡ 死なないといいね、ばいばい」

〇寂れた村
人喰い狼「くそ、なんでこんな所に探偵が!」
人喰い狼「あと一回喰い殺せば俺たちの勝利だったのに!」
明石天空(あかし そら)「彼を処刑台へ──」

〇電脳空間

〇学校の部室
明石天空(あかし そら)「導入は完璧、進行に不具合もなし。 おっけ、最終デバッグ完了だ!」
明石天空(あかし そら)「先輩テスト環境のデータ、本番に上げてください!」
遠方彼方(おちかた かなた)「ん、了解。 こっからは絶対に弄るなよ?」
遠方彼方(おちかた かなた)「──フリじゃねえからな?」
上江晋作(かみえ しんさく)「大丈夫ですよ。 少なくとも僕はプログラムさっぱりなので!」
明石天空(あかし そら)「晋作、広報用のイラストは出来たか?」
上江晋作(かみえ しんさく)「はい、こんな感じです!」
明石天空(あかし そら)「どれ・・・・・・うし、完璧だっ!」
明石天空(あかし そら)「やっぱ晋作のイラストはひと味違うよな~」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「ああ。見た瞬間心を掴みに来る」
上江晋作(かみえ しんさく)「恐縮ですっ!」
明石天空(あかし そら)「千尋も頼んでた曲どうだ?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「できてるよ。 ストアに乗せるPV編集も終わってる」
明石天空(あかし そら)「仕事が早くて助かるよ」
明石天空(あかし そら)「にしても、明日には公開か・・・・・・。 3年、長いようで一瞬だったな」
遠方彼方(おちかた かなた)「感傷に浸るのはゲームが売れてからにしてくれ」
遠方彼方(おちかた かなた)「田んぼの様子見てくる、とか吐かすなよ?」
明石天空(あかし そら)「そんなフラグ立てませんって! それに俺たちのゲームは誰がなんと言おうと最高ですよ」
上江晋作(かみえ しんさく)「僕もそう思います! 先輩方とご一緒できたのは一年くらいですけど──」
上江晋作(かみえ しんさく)「でもっ、間違いなく最高のゲームです!」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「ま、当然と言えば当然か。 なんせ、楽曲提供してるのが俺だからな?」
明石天空(あかし そら)「さすが、フォロワー50万超えのDTMer。†Tukuyomi†さんは言うことが違うね~!」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「ダガーをつけるな、カッコイイだろうがっ!」
遠方彼方(おちかた かなた)「ハンネの是非は置いといて、 当日はTukuyomi垢での宣伝頼むぞ?」
遠方彼方(おちかた かなた)「藤原はウチの重要なマーケリソースだからな。正直、藤原の一言で売り上げが一桁変わる」
上江晋作(かみえ しんさく)「SNSってそんなにすごいんですね・・・・・・」
遠方彼方(おちかた かなた)「・・・・・・」
遠方彼方(おちかた かなた)「見ての通りウチは機械音痴のイラスト馬鹿と、あとは飯テロしてにゃ~んと呟くだけのプログラマーが二人だ。話にならん」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「まったく、上江こそSNSをするべき人間だろうに・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「今時SNSは義務教育だからな。 絵師なら立派な仕事道具だろ?」
明石天空(あかし そら)「公式垢にキービジュ載せたときもそれだけで万バズしたし、絵師を教えろってDMが殺到したくらいだ」
上江晋作(かみえ しんさく)「なんだか別世界の話を聞いているみたいです・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「ばーか、お前の話をしてるんだよ。 それくらい魅力的なんだ晋作のイラストは」
上江晋作(かみえ しんさく)「有り難い話ですね。 僕もSNSやってみようかな?」
明石天空(あかし そら)「そうしろ。描いたイラストは公式で出した後なら好きなだけ公開していいから」
上江晋作(かみえ しんさく)「そうですね、入れてみます」
上江晋作(かみえ しんさく)「え~と、名前は・・・・・・上江晋作っと」
遠方彼方(おちかた かなた)「・・・・・・。 藤原、悪いが上江のSNSコンサルはお前に任せていいか?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「それが安全でしょうね。 上江、ちょっと貸してみろ」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「まずアイコンはだな・・・・・・」
上江晋作(かみえ しんさく)「ふむふむ──」
遠方彼方(おちかた かなた)「明石、プレスリリースはもう送ってあるんだよな?」
明石天空(あかし そら)「ええ、ソーシャルメディアを中心に10件ほど」
遠方彼方(おちかた かなた)「それだけあれば十分だ」
遠方彼方(おちかた かなた)「そうか、なら本当にいよいよだな」
明石天空(あかし そら)「ははは、先輩もどっぷり浸ってるじゃないですか!」
遠方彼方(おちかた かなた)「かもな。それだけお前たちと過ごした3年間は濃密だった」
遠方彼方(おちかた かなた)「ありがとな、おかげで充実した学生生活を送れたよ。死にそうだったけど」
明石天空(あかし そら)「やめて下さいよ、そんなお別れみたいな」
遠方彼方(おちかた かなた)「実際そうだろ? 俺はM2でお前と藤原はB4、今年卒業だ」
遠方彼方(おちかた かなた)「卒業したら就職して、社畜人生の始まりだ。はあ、働きたくねえ──」
明石天空(あかし そら)「そのことなんですけど・・・・・・」
遠方彼方(おちかた かなた)「?」
明石天空(あかし そら)「いえ、なんでもないです。 楽しみですね、リリースされるのが!!」
遠方彼方(おちかた かなた)「そうだな── よし、ストアに最新版をアップロードした。後は日付が変わったら全世界に公開される」
明石天空(あかし そら)「じゃあ今日はこの辺で。土日はこの部屋も閉めなきゃなので、次は月曜日に」
遠方彼方(おちかた かなた)「SNSでの宣伝・監視、しっかり頼むぞ?」
明石天空(あかし そら)「そこは任せて下さい、一応プロデューサーなので!」
遠方彼方(おちかた かなた)「ほんと、頼もしくなったよ」

〇男の子の一人部屋
明石天空(あかし そら)(さて、あと2分もすれば本当に公開される)
明石天空(あかし そら)(緊張するな・・・・・・。 3、2、1──F5!)
明石天空(あかし そら)「っ、本当に出てる! 俺たちのゲームが全世界に!」
明石天空(あかし そら)「公式垢のイラストも・・・・・・ってもう5,000いいね!?」
明石天空(あかし そら)(相変わらず晋作の描くイラストは訴求力が高いな)
明石天空(あかし そら)(それにPVもTukuyomiが引RTしてくれたおかげでかなり好調だ)
明石天空(あかし そら)「やっぱフォロワー53万人はえげつないな・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「プレスリリースも問題なく公開されてるし──できることはすべてやった!」
明石天空(あかし そら)(あとは、エゴサするか 『#人喰いウルフと酔いどれ探偵』っと!)
ユーザーA「ようやくプレイできる!」
ユーザーB「キービジュ見てめっちゃ惹かれた奴だ!」
ユーザーC「Tukuyomiさんが楽曲提供してるゲームってこれ!?」
明石天空(あかし そら)「ふふ、ウチのクリエイターはみんな優秀だからな・・・・・・!」
明石天空(あかし そら)「ん、これって──っ!?」

〇学校の部室
明石天空(あかし そら)「突然だが、会社を創ろう思う」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「いや、本当に突然だな!?」
上江晋作(かみえ しんさく)「先輩大手のゲーム会社から内定もらってません?」
遠方彼方(おちかた かなた)「あれだろ、京都のほら」
明石天空(あかし そら)「辞退した」
上江晋作(かみえ しんさく)「辞退──っ!? あそこ超絶ホワイトって有名じゃないですか!?」
明石天空(あかし そら)「だって遠いし、それに京都だし──いろいろ怖そうじゃん?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「京都にどんなイメージ持ってんだ。 てか、ならなんで受けた」
明石天空(あかし そら)「腕試し的な?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「これだから天才は・・・・・・」
上江晋作(かみえ しんさく)「先輩もなんか言ってやってくださいよ」
遠方彼方(おちかた かなた)「俺も同じとこ辞退したし、人のこと言えん」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「自分の受けた会社の名前も覚えてなかったんですか・・・・・・」
遠方彼方(おちかた かなた)「で、具体的には何の会社を創るんだ?」
明石天空(あかし そら)「ゲーム会社ですよ。 俺たちゲーム制作サークルなんですから」
遠方彼方(おちかた かなた)「まあ妥当なところだな」
明石天空(あかし そら)「知っての通り、一昨日リリースしたゲームがバズった」
明石天空(あかし そら)「有名Vtuberが実況したり、他にも色々重なった結果、売り上げ本数は約20万本」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「にじゅっ──!?」
遠方彼方(おちかた かなた)「起業するには十分だな」
明石天空(あかし そら)「だって作りたいじゃん、俺たちが考えた最強のゲーム!」
上江晋作(かみえ しんさく)「先輩はそういう人でしたね」
遠方彼方(おちかた かなた)「明石の企画実現力は本物だからな」
明石天空(あかし そら)「ということで先輩も来ませんか、うちの会社。先輩が来るなら、共同開発してたゲームエンジンも使えますし!」
上江晋作(かみえ しんさく)「誘い方雑ですね・・・・・・」
遠方彼方(おちかた かなた)「面白い、いいぞ」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「ええ・・・・・・」

〇物置のある屋上
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「さっきの話は本気なのか?」
明石天空(あかし そら)「さっき?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「とぼけるなよ起業の話だ」
明石天空(あかし そら)「起業自体は前々から考えていた。 今回のバズはきっかけに過ぎない」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「バズったのは運だろ。 その運にお前は人生を捧げるのか?」
明石天空(あかし そら)「だな、正直運の要素が9割だ」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「だったら──」
明石天空(あかし そら)「でも、その運を手繰り寄せたのも俺たちだろ?」
明石天空(あかし そら)「千尋の曲も、晋作のアートも、商業のレベルを遙かに超えている。客を魅了し離さない」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「それは──」
明石天空(あかし そら)「俺と先輩が共同で開発してるエンジンだってそう。二人が魅了した客を面白さでゲームの世界に閉じ込める」
明石天空(あかし そら)「魅了し、閉じ込める。 エンタメの牢獄だ!」
明石天空(あかし そら)「だから千尋、お前も俺の会社に来い。 俺たちのゲームは十分戦っていける!!」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「断る、僕は僕の道を進むよ」
明石天空(あかし そら)「はは、言うねえ~。 会社がデカくなって泣きついても採用しないぞ?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「ぜひ泣かせてくれ。 これでもかってくらい、後悔させてくれ」
明石天空(あかし そら)「・・・・・・そっか、じゃあここでお別れだな」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「──ああ、お別れだ」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「最後に聞かせてくれ、会社名は決まっているのか?」
明石天空(あかし そら)「当然だ会社名は──」

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コメント

  • 自分の周りにももし天才的な人がいたら…と少し羨ましくなってしまいます。こんな青春送りたかった!
    でも今からでも遅くない!頑張ろうかなあ!

  • インディーズゲームって、出来上がる可能性がかなり低いものですが、それをやり遂げた彼らは自信を持っていいです。
    ただ、起業となると難しいですよね。

  • 優秀な能力をもった方々は大きな会社で雇われて働くよりも、自分たちでのびのびやったほうが、才能を生かせそうですね。こういった若手の勢いのある会社こそ、新たな革命をどんどん起こしてくれそうで応援したくなります。

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