路地裏キングダムどっとえぐぜっ!

蒼井円

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〇男の子の一人部屋
明石照子(あかし しょうこ)「おにい、起きなよ~?」
明石照子(あかし しょうこ)「おにいってばっ!」
明石天空(あかし そら)「ん、あ・・・・・・?」
明石天空(あかし そら)「照子か、おはよう」
明石照子(あかし しょうこ)「おはよ、てか仕事 もう8時回ってるよ?」
明石天空(あかし そら)「やべ、すぐ支度しないと!」
明石照子(あかし しょうこ)「・・・・・・おにいの会社、大丈夫なの?」
明石照子(あかし しょうこ)「昨日も遅くまで働いてたんでしょ?」
明石天空(あかし そら)「あ~まあ、色々任せてもらえてるからしょうがないよ」
明石照子(あかし しょうこ)「そんなんじゃ、体壊すよ?」
明石天空(あかし そら)「まだ、若いって言ってもらえるからね 今のうちに頑張らないと・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「照子のほうこそ学校良いのか? 普段なら部活に行ってるはずだが・・・・・・」
明石照子(あかし しょうこ)「中間テストあるから、しばらくは休み~」
明石天空(あかし そら)「そっか、じゃあしっかり勉強しないとな!」
明石照子(あかし しょうこ)「うるさいな~もう」
明石照子(あかし しょうこ)「ウチはどっかの誰かさんと違って頭よくないも~ん!」
明石天空(あかし そら)「そう拗ねるなよ 分からないとこあれば教えてやるぞ?」
明石照子(あかし しょうこ)「いいよ、べつに おにい忙しそうだし・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「まあなんだ、お互い頑張ろうぜ」
明石照子(あかし しょうこ)「今日も遅いの?」
明石天空(あかし そら)「ああ、取引先との大事な交渉があるんだ」

〇シックな玄関
明石天空(あかし そら)「それじゃ、行ってきます」
明石照子(あかし しょうこ)「ん、いってら~」

〇おしゃれな受付
明石天空(あかし そら)「すみません、10時から打ち合わせ予定の明石です」
受付「明石様・・・・・・はい、承っております 向かって左側のエレベーターが社長室直通になります」
明石天空(あかし そら)「ありがとうございます」

〇豪華な社長室
明石天空(あかし そら)「──こちらがプロジェクトの詳細になります」
ハードメーカー社長「えっと、明石君だっけ?」
明石天空(あかし そら)「はい」
ハードメーカー社長「君みたいに優秀な子は個人的に好ましく思うし、協力してやりたい気持ちは山々だが・・・・・・」
ハードメーカー社長「如何せん、最先端を行き過ぎている」
ハードメーカー社長「VRが世に認知されかなり経つが、 それでもまだ、現代の人たちには受け入れられていない」
ハードメーカー社長「得体の知れないものには恐怖を覚えるだろう? それと同じさ」
明石天空(あかし そら)「ですが、我が社のプロジェクトが実現すれば──」
ハードメーカー社長「すれば、だ 妄想で仮初めの──夢物語に過ぎない」
ハードメーカー社長「事前に資料に目を通し、実際に話を聞いてみたが、いまいち実現出来そうにないのだよ」
ハードメーカー社長「もちろん、君たちが作ったというVRゲームの事も把握している」
ハードメーカー社長「だが、所詮は学生の”おままごと”だ ビジネスとはほど遠い」
明石天空(あかし そら)「・・・・・・っ!?」
ハードメーカー社長「端的に言えば、実績が足りない 無論、会社としての、ね?」
ハードメーカー社長「君の言うプロジェクトが実現した暁にはまたこうしてお話をしよう」
明石天空(あかし そら)「お待ちください!」
明石天空(あかし そら)「我々はソフトの開発しかできません ですのでこうしてハードの設計・開発をしている御社に・・・・・・」
ハードメーカー社長「君はエンジニアとしては優秀だ ウチにも君ほどの人財はいないかもね」
ハードメーカー社長「だが君は表に出てくるような人間ではない 営業には向いてないと気づいてるだろう?」
ハードメーカー社長「お引き取り願おう」
明石天空(あかし そら)「・・・・・・失礼、します」

〇中規模マンション

〇諜報機関
遠方彼方(おちかた かなた)「おつかれ、天空 その様子だとダメだった感じ?」
明石天空(あかし そら)「彼方・・・・・・もう最悪だったよ 実績作ってから出直せってさ」
明石天空(あかし そら)「その実績を作るために、ハードメーカーとの連携が必要だっての!」
遠方彼方(おちかた かなた)「ははっ! まあでも、ウチみたいな零細ベンチャーの話を聞いてくれただけでも御の字だろ?」
明石天空(あかし そら)「それはそうだが・・・・・・ くそ、上手くいかねえ!」
遠方彼方(おちかた かなた)「今日はもう、外回りはいいのか?」
明石天空(あかし そら)「ああ アポもないし、大人しく開発に専念するよ」
明石天空(あかし そら)(アーカーシャもそろそろ終盤だってのに、ハードの開発が出来ないと──)
遠方彼方(おちかた かなた)「そうだ天空、ちょうど空間構築のアルゴリズムが出来たんだが、確認してくれないか?」
明石天空(あかし そら)「ん、時間かかるだろうし仮眠してていいよ どうせ昨日も泊まったんだろ?」
遠方彼方(おちかた かなた)「はは、バレたか まあ、楽しいからさ 気づいたら深夜になって、終電逃してた」
明石天空(あかし そら)「ったく、俺たちの資本は身体だろ 無茶だけはしないでくれ」
遠方彼方(おちかた かなた)「それは天空にも言えるけどな、CEO(最高経営責任者)」
明石天空(あかし そら)「その呼び方はよしてくれ、CTO(最高技術責任者)」
遠方彼方(おちかた かなた)「確かにそう呼ばれるとなんかイヤだな 背筋がむず痒くなる」
遠方彼方(おちかた かなた)「にしても、CEOとCTOしかいない会社ってのも変な話だよな」
明石天空(あかし そら)「ははは!」
遠方彼方(おちかた かなた)「ふ、くくくっ! だめだ俺たち二人とも疲れてる! 天空も仮眠取れよ、隈がすごいことになってる」
遠方彼方(おちかた かなた)「どうせ帰った後も家で仕事してるんだろ?」
明石天空(あかし そら)「そうでもしないと回らないんだ 日中は基本、営業で開発に専念できないし」
明石天空(あかし そら)「いっそ営業担当でも雇うか ──いやそうすると採用に時間がかかる」
遠方彼方(おちかた かなた)「ほら、また思考の沼にはまってる これ飲んで一休みしようぜ?」
明石天空(あかし そら)「ん、さんきゅ」

〇物置のある屋上
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「──アーカー、ちゃんとした名前だな てっきり厨二病全開の名前つけてると思った」
明石天空(あかし そら)「俺と遠方先輩が共同で開発してるゲームエンジンあるだろ?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「あー確か、”アーカーシャ”とかそんな感じの・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「そう、今回作ったゲームでも採用してるけど、次はもっと改良して、エンジンの名を轟かせるんだ!」
明石天空(あかし そら)「だからアーカー アーカー社って呼ばれれば、エンジンのアーカーシャと併せて覚えやすいだろ?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「滅茶苦茶社長してるな・・・・・・ 本気だったんだな起業するってのは」
明石天空(あかし そら)「心外だな いつでも本気だよ、俺は!」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「どうだか・・・・・・でも応援はするよ 彼方先輩もいるし大丈夫だと思うけど」
明石天空(あかし そら)「んだよ、俺一人じゃ不安だってのか?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「そりゃあ心配するさ これまでずっと一緒にいたんだ」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「天才が馬鹿な道に進もうとしてたら、 正してやるのが普通さ」
明石天空(あかし そら)「でも普通のことしてたって凡人のままだろ」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「良いじゃん、普通で ごくありふれた職に就いて、平々凡々な生活を謳歌する」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「それじゃダメなのか?」
明石天空(あかし そら)「ははっ! Tukuyomiとして世界中に名と曲を知らしめ、外資コンサルに就職する」
明石天空(あかし そら)「──エリートコースまっしぐらのお前が言うのか?」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「僕は天空ほど特別な存在じゃない 精々凡人が頑張ればたどり着ける境地だよ」
明石天空(あかし そら)「アホ吐かせ、お前みたいな凡人がいてたまるか!」
明石天空(あかし そら)「まあでも、お前が凡人を名乗るなら、天才の俺としてはこれ以上勧誘できないな」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「自分で言っちゃうんだ・・・・・・」
明石天空(あかし そら)「お前がそう言ったんだろうが!」
明石天空(あかし そら)「そうだな・・・・・・俺が凡人に堕ちたら、その時は手を差し伸べてくれ 凡人同士、仲良くしよう!」
藤原千尋(ふじわら ちひろ)「やーだよ! 成し遂げるんだろ? 今さら弱気になってどうする?」
明石天空(あかし そら)「じゃあな・・・・・・」

〇学校の部室
明石天空(あかし そら)「遠方先輩、起業の話なんですけど」
遠方彼方(おちかた かなた)「先輩はやめろよ 起業するならお前はもう、社長なんだから」
明石天空(あかし そら)「そうですね・・・・・・じゃあ、彼方?」
遠方彼方(おちかた かなた)「はは、その調子だ」
遠方彼方(おちかた かなた)「それより、起業してなんのゲームを作るんだよ」
明石天空(あかし そら)「俺、世界を──創りたいんです」
遠方彼方(おちかた かなた)「"アーカーシャ"か?」
明石天空(あかし そら)「俺たちのエンジンならそれが可能かと」
明石天空(あかし そら)「『人喰いウルフと酔いどれ探偵』でテストは十分にできた」
明石天空(あかし そら)「VR空間上でのプレイヤーの行動リスト、思考、情動推定・・・・・・ 20万人のデータを元に人工知能を創造する」
明石天空(あかし そら)「AIを仮想空間に放てば、世界の近似モデルが完成する。そうしてできたAIしかいない近似世界にプレイヤーを放り込めば──」
遠方彼方(おちかた かなた)「なるほど、確かにそれは世界と言えるな」
明石天空(あかし そら)「プレイヤーは虚構を現実と認識し、一生を過ごす」
明石天空(あかし そら)「つまり、プレイヤーには人生そのものを”プレイ”してもらう」
遠方彼方(おちかた かなた)「傑作だよ天空 お前は俺の予想を遙かに超えてくれる!」
遠方彼方(おちかた かなた)「大手を蹴って正解だ お前ほど俺を楽しませてくれる人間はいない」
遠方彼方(おちかた かなた)「だが、VR空間上で人生をプレイするだけの長時間、どうやって人を拘束する?」
明石天空(あかし そら)「そこが今回の肝になる」
明石天空(あかし そら)「もしも、VR空間上の100年を現実世界の1時間で経験できるとしたら?」
明石天空(あかし そら)「たった1時間で別の一生を経験することができる──そんなゲームがあったら?」
明石天空(あかし そら)「遊びであるはずのゲームで、リアルワールドの経験値がたまる」
明石天空(あかし そら)「それもそのはず、VR空間上で別の人生を経験してるんだから」
遠方彼方(おちかた かなた)「だが、一体どうやって時間を圧縮するつもりだ?」
遠方彼方(おちかた かなた)「たとえ現実で1時間だとしても、VR空間上に100年も閉じ込めるわけだろ?」
遠方彼方(おちかた かなた)「流石に体感時間との乖離が大きすぎる 人間の脳が処理できるとは到底──」
明石天空(あかし そら)「理論的にはそう難しいことじゃない」
明石天空(あかし そら)「BHN(ブレインヒプノシスニューロン) 最近の研究で明らかになった、脳を催眠状態にする神経細胞」
明石天空(あかし そら)「BHNを意図的に発火させることで催眠状態を引き起こす」
明石天空(あかし そら)「これで脳を極限までリラックスさせ、負担をなくすことができる」
明石天空(あかし そら)「催眠状態になれば1時間だろうが、100年だろうが関係ない」
遠方彼方(おちかた かなた)「なるほど、確かにそれなら実現出来そうだ」
遠方彼方(おちかた かなた)「だが──」
明石天空(あかし そら)「そう、彼方も気づいてるように、 これはソフトの分野じゃない」
明石天空(あかし そら)「BHNを発火させるためにはハードの設計が必要不可欠」
明石天空(あかし そら)「それもHRTF──頭部伝達関数に基づいた特定の周波数を離散的に発生させるデバイスが必要になる」

〇諜報機関
明石天空(あかし そら)「ん・・・・・・」
遠方彼方(おちかた かなた)「起きたか」
明石天空(あかし そら)「俺、夢を見てた」
明石天空(あかし そら)「大学時代、4人でゲームを作っていた頃の」
遠方彼方(おちかた かなた)「懐かしいな、あれから1年も経つのか」
明石天空(あかし そら)「あの頃はみんなでゲームを作るのがただ楽しかった・・・・・・」
遠方彼方(おちかた かなた)「浸るなよ、感傷に 前を見ろ──創るんだろ、世界を」
明石天空(あかし そら)「はは、夢で千尋に同じこと言われたよ」
明石天空(あかし そら)(そうだ そのためにもまずはハードメーカーに──)
遠方彼方(おちかた かなた)「そうだ天空、俺も思い出したことがある」
遠方彼方(おちかた かなた)「知り合いに牛若ってのがいるんだが話を聞いてみないか?」
遠方彼方(おちかた かなた)「大学時代の先輩で、脳科学の研究をしてた人だ。かなり気難しい人だが実力は確かだぞ?」
遠方彼方(おちかた かなた)「ハード方面にも知見がある 俺たちの話にも興味を持ってくれるだろう」
明石天空(あかし そら)「Unique Softか! さんきゅ、明日訪ねてみるよ!」

コメント

  • ワクワクするストーリー展開ですね!天才であってもベンチャー故の壁にぶつかるところもリアルで。そしてゲーム領域から脳科学へと。興味がそそられます!

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