樹が熟し、実を結ぶ迄

ふじのきぃ

第一話 崩れゆく現実と触れ逢う幻想(脚本)

樹が熟し、実を結ぶ迄

ふじのきぃ

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〇黒
  きこえ──
  わたし──の──

〇渋谷のスクランブル交差点
イツキ(なんや? 今の声は)
イツキ「あいた!?」
痛恨人「痛ってえなあ? どこ歩いて目ぇつけてんだあ!?」
イツキ「ひい! すんまへんしたあ!」
痛恨人「待てやコラァ!!」

〇黒
痛恨人「どぉ〜くぉ〜くぁ〜ぬぁ〜?」
痛恨人「そこかあ!?」
痛恨人「ち〜が〜う〜なあ〜」

〇ビルの裏
イツキ「・・・なんやねんアイツ」
イツキ「てかそれ言うんなら、 『どこ目ぇつけて歩いてんだ』やろ!」
イツキ「はあ──仕事探しは上手くいかんわ、 物価は高うなるわ、変な奴に絡まれるわ」
イツキ「ほんまツイてないな、俺」
イツキ(にしても、あの声──)
イツキ(以前、俺がハマってもうたソシャゲの 推しキャラによう似てたなあ)

〇森の中
  『一緒に育ててほしいな』
  『あなたが植えた、この苗(こ)を』

〇ビルの裏
イツキ("こねこねW(ダブリュー)"・・・ ほんま、おもろかったなー)
イツキ(せやけど、もうサ終してもうたんや)

〇血しぶき
  理由は経済悪化。極め付けはウィルス蔓延。
  人類を何年も苦しめ続けた流行り病。
  最近ではワクチン供給がようやく安定し、
  マスクの着用も任意となったが・・・

〇黒
  ウィルスは人命は勿論、
        "声"も奪ってきたのだ。

〇雑踏
  結果、声優界に大打撃を受けてしまった。
  アニメは言わずもがな、
  ソーシャルゲームにも悪影響を及ぼした。

〇ビルの裏
イツキ(ソシャゲはボイス付きが当たり前だった)
イツキ(ボイスはキャラクターの魂と言っても 過言やないんや)
イツキ(俺は、そんな掛け替えのない魂を蔑ろにするウィルスを絶対許さへんで!)
イツキ(こねこねWも犠牲になったソシャゲの一つ)
イツキ(もうアンストせなあかんが・・・)
イツキ(気が引けてもうて、そのまんま残してたな)

〇木の上
  ユーカリツリー・・・
  『素敵な名前だね!』

〇渋谷のスクランブル交差点
イツキ(また、会いたいなあ)
イツキ(なんてな。こんなんじゃいつまで経っても 踏ん切り付けへんな──)
  世界は──

〇渋谷のスクランブル交差点
  前触れなく崩壊し出す──
イツキ「な、なんや? 何が起こっとるんや!?」
  景色は色彩を失い、たちまち錆のように
  ぼろぼろと剥がれ始める。
  空や高層ビル、信号機に街路樹、車さえも。
  目に映る全てのものが文字化けし、
  空へと舞い上がっていく。

〇水の中
男性「俺達の、身体が!?」
女性「イヤよ、消えるなんて!」
イツキ「アカン・・・アカンて」
イツキ「これが俗に言う世界の終わりちゃうんか!?」
イツキ「止まれ! 止まれや!!」
  どんなに叫んでも、崩壊は止まらない。
  まるで最初から決められていたかのように、無慈悲に壊されていく。

〇黒背景
  とうとう、自分の番がやって来た。
  足先から徐々に分解されていくのを、
  ひたすら見届けるしかないと思った。

〇黒
  『わたしのこえ』
  『きこえますか』
  薄れゆく意識下で
  俺のスマホから聲-こえ-が聞こえた。
  Welcome to the new world...

〇白

〇木の上
イツキ「ここ、は・・・」

〇森の中
イツキ「見覚えがあるような・・・」
イツキ「無性に、懐かしい気持ちになるなあ──」
???「るんるんるん〜」
???「元気にな・あ・れ♪」

〇木の上

〇森の中
イツキ「ユカリナ・・・?」

〇木の上
ユカリナ「あ!」
ユカリナ「また逢えたね」
ユカリナ「今日も一緒に冒険に行こっか!」

〇木の上
  『また逢えたね』
  『今日も一緒に冒険に行こっか!』

〇森の中
イツキ(同じや・・・ログインの時の台詞と)
イツキ(それに、さっきのは季節を操る力。 季節によって属性も髪色も変わる様子)
イツキ(間違いない。 ここは"こねこねW"の世界や)
イツキ(そしてこの子の名前は、 "ユカリナ・ツリィコネクター")
イツキ(俺の、推しキャラ・・・!)
イツキ(って、なに泣いてんねん俺! どんだけ推し好きやねん!)
ユカリナ「どうしたの? イツキ。 悲しいことがあった?」
イツキ「ああ、ごめんな?」
イツキ「嬉しくて、つい泣いてもうたわ」
イツキ「ユカリナに逢えて」
ユカリナ「私も、嬉しいよ」
ユカリナ「画面の向こう側だった、貴方に逢えて」

〇花模様
ユカリナ「えへへ」
ユカリナ「イツキの手、あったかいね」
イツキ「ホンマや・・・」
イツキ(ゲームのキャラクターなのに)
イツキ(ちゃんと、あったかいんやなあ)
  どこからどこまでが現実なのだろう。
  目覚める前、現実世界が崩壊するのを
  はっきりと体感したはず。

〇黒背景
  そして気がつけば、
  サービス終了したソーシャルゲームの世界。
  感覚があまりにも現実味があって、
  本当にゲームの世界なのか疑心暗鬼だった。

〇木の上
  この子と触れ逢うまでは。
ユカリナ「あ、忘れてた!」
ユカリナ「あのね? 貴方と私が育てた樹のことなんだけど」
イツキ「この樹の事か?」
ユカリナ「うん。なんだか元気がないみたいなの」
イツキ「そうなんやな・・・だから水やりを」
イツキ(この樹は確かギルドの──)

〇黒
  認証中・・・
  ユーザー名:イツキ
  ID:****
  所属樹界:ブレスオブグリーン
  認証完了致しました。
  お帰りなさいませ。
  ギルドマスター・イツキ。
  カムバック特典を贈呈します。
  メニューを開き、
  プレゼント一覧をご確認ください。

〇木の上
イツキ(なんやろ、今のは)
ユカリナ「わ! 元気になってる!」
イツキ「そうなんか?」
ユカリナ「うん! 喜んでるみたい!」
ユカリナ「ねえイツキ、どうやったの?」
イツキ「どうって言われても、 ただ手を当てただけやしなあ」
イツキ「なんか、カムバック特典っちゅうモンを 手に入れたみたいなんや」
イツキ「メニューを開くとか言うてたけど、 どないすればいいんやろ」
ユカリナ「あ、それはね。手をかざして・・・ 指でトントンってしてみて?」
イツキ「こうか?」

〇電脳空間
イツキ「お、画面が出てきたで!」
ユカリナ「うん、その調子!」
ユカリナ「次は、プレゼント箱を押してみて」
イツキ(ほんま、ソシャゲやっとるかのようやな)
  【固有スキル】
  "ラーンイット・ウィズバディ"を
  取得しました!

〇木の上
イツキ「なんやろコレ、固有スキル?」
ユカリナ「わあ! 固有スキルを覚えたんだあ」
ユカリナ「それはね、"その人だけが使用できる" スキルなんだよ」
イツキ「俺だけのスキルっちゅう事か?」
ユカリナ「うん! 私も固有スキル持ってるよ」
イツキ「"シーズン・コネクター"やな。 もちろん知ってるでえ」
ユカリナ「覚えてくれてたんだ!」
イツキ「"当たり前見た光景さん"や。 ユカリナは俺の推しなんやで」
ユカリナ「え〜? なあにその言葉〜! 初めて聞いたよ〜」
ユカリナ「でも、嬉しいな! 今でも私を推してくれるんだね」
ユカリナ「えへへ」
イツキ(てぇてぇなあ)
イツキ(にしても、名前を呼ばれるなんてな)
イツキ(なんか、照れてまう──)
ユカリナ「いやあっ!!」

〇森の中
ユカリナ「ごめんなさい・・・捕まっちゃった」
ゴブリンボス「オンナ、オレタチノモノ」
「オンナ! ゴブ! オンナ! ゴブ!」
イツキ「な、なんやねんコイツら!?」
イツキ「ユカリナ! 大丈夫か?」
ユカリナ「大丈夫・・・! でも──」
ユカリナ「身体が自由に動けないの」
ゴブリンボス「ゴハハハ! オレノスキル"テリブル・プレッシャー"!」
ゴブリンボス「オンナ、ウゴケナイ。 スキル、ツカエナイ」
ゴブリンボス「オレノホウガ、ツヨシ! コイツ、イワシ!」
イツキ「そりゃ魚やろがい!」
イツキ(スキル封印に行動制限か・・・厄介やな)
イツキ「ユカリナ、今助けにいくで!」
イツキ「くっ!」
ゴブリンボス「ゴッハッハ! オマエモ、イワシダナァ!」
ゴブリンボス「オマエタチ、ソイツト、アソンデロ。 オレ、タカラ、サガス」
「アソブ! アソブ!」
イツキ(コイツらの所為で身動き取れんで!)

〇木の上
ゴブリンボス「タカラ、ドーコーカーナアー?」
ゴブリンボス「コンナ、ボウキレ・・・」
ゴブリンボス「ジャマダ!!」
ユカリナ「やめてよー!」
(ユーカリツリー・・・力を借りるよ!)

〇森の中
  スキル発動を目認。一時取得しました。
  【スキル:ブランチ・ランス】
  木属性/威力:中/回数:残2
イツキ(あの枝木・・・スキルなのか?)
イツキ(ユーカリツリー・・・おおきにな)
イツキ(それなら──)
イツキ「ブランチ・ランス!」
イツキ「っしゃあ! 上手くいったで!」
イツキ「あいった!?」
イツキ「なにすんねん!」

〇木の上
ゴブリンボス「ヨクモ、オレノ、コブンタチヲ!」

〇森の中
イツキ(しまった! さっきのスキル、使い切ってもうた──)
ゴブリンボス「コレガ、オレノ、 モウヒトツノ、スキル──」
ゴブリンボス「"ボス・インパクト"ダァ!」

〇白

〇白
イツキ(ほんま、何やってんやろ)
イツキ(女の子一人も守れんのか、俺は!)
  スキルを『体感』しました。取得します。
  【スキル:ボス・インパクト】
  無属性/威力:大/発動後1ターン待機

〇黒
  覚えたで──

〇森の中
イツキ「ボス・インパクト!」
ゴブリンボス「ソレ、オレノ、スキル──」
ゴブリンボス「ゴブワアァァッ!!」

〇森の中
イツキ「あのゴロツキ、だったんや」
イツキ「でも、なんとか、勝てた──」
イツキ「で」
(あかん・・・力入らへん)

〇黒
  ありがとう
  この世界に来てくれて──

〇森の中

〇黒
  貴方は
  この世界の希望だから
  負けないで──

〇森の中

〇電脳空間
「ようこそ。 "コーネリアズ・コネクト・ワールド"へ」
電脳神「私は電脳神コーネリア。 世界を管理する者」
電脳神「争いの無い、平和な世界を築く者」

〇森の中

〇電脳空間
電脳神「私は力を手にし、現実世界を電子化させた」
電脳神「現実の凡ゆるしがらみを抹消する為に」

〇赤いバラ
電脳神「私は其れを可能にする」

〇黒
  To be continued...

次のエピソード:第二話 麗しき狩人

コメント

  • ゲームみたいな感覚でサクサク読めちゃいました。またみたいです。ありがとうございます

  • ユカリナちゃん、いやユカリナさん、てぇてぇ...
    舞台設定の解像度が高く、夢中でタップしてました!ソシャゲの中に入る世界観、憧れます!!

  • 通行人もとい痛恨人がゴブリンのボスだったとは驚きでした。
    (スキル名がインパクトだったので納得)
    能力を我が物にできる主人公の異能がどう活かされるか、楽しみですね。

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