タケルとフタバ(脚本)
〇睡蓮の花園
精霊さん「其方が探しているのはこの普通のゴリラか?」
普通のゴリラ「ウッホ」
精霊さん「それともこっちの金のゴリラか?」
金のゴリラ「ウッホ」
フタバ(どっちの子もかわいい・・・・・・でも)
フタバ「私はタケルくんがいいー!!」
「ウホ~」
〇一人部屋
フタバ「うーん、夢か・・・・・・」
夢にゴリラが出てくるのはしょっちゅうだけど、今日のは不思議だった。
フタバ「今日も授業が終わったら行こっと」
〇ゴリラの飼育エリア
動物園
フタバ(わぁ、今日もかっこいい)
みんなかっこいいんだけど、私の一番のお気に入りは「タケルくん」なのだ。
フタバ(バナナ食べてる・・・・・・!かわいい!)
私の日課はこうやってタケルくんを閉園時間まで眺めること。
〇開けた交差点
フタバ(今日もタケルくんは素敵だったなぁ)
?「あの、すみません」
フタバ「え?はい」
?「・・・・・・」
彼の方から話しかけてきたのに、もじもじして何も言わない。
フタバ「えっと?」
?「僕、あの、タケルです!」
フタバ(どこのタケルさん?私の知ってるタケルはゴリラだけだけど・・・・・・)
タケル「いつも僕のこと見に来てくれてありがとう」
フタバ「じゃあ、ゴリラのタケルくん!?」
タケル「うん。ずっと君のこと気になってて、追いかけて来ちゃった」
〇一人部屋
フタバ「今日はとりあえず泊まってもらって・・・・・・」
フタバ(ん?ちょっと待ってよ)
フタバ(男性をこんなほいほい家に入れて私ってやばい女?)
フタバ(でも本当はゴリラだしいいのか)
タケル「突然でびっくりしたよね、ごめん」
フタバ「ううん、タケルくんと話せて嬉しい」
タケル「・・・・・・フタバさんの笑った顔、好きなんだ」
フタバ(イケメンゴリラは人間になってもイケメンなんだな)
フタバ「って、私の名前知ってたんだね」
タケル「前に男の人と来てたでしょ。その時に」
そういえば一度だけ彼氏と行ったことがあったかもしれない。
タケル「その人とは今も?」
フタバ「んー、「俺よりゴリラの方が好きなんだろ」って言われちゃって、それっきり会ってない」
タケル「あはは、ひどいなあ」
こうしてしばらく他愛もない話しをした後、お互い眠くなって寝てしまった。
〇ゴリラの飼育エリア
俺たちゴリラは動物園の中では人気の方だ。
しかしフタバさんほど長い時間見ていてくれる人はいなかった。
精霊さん「あの子を好いておるのだな」
タケル「そうだよ。でも僕は人間じゃないから」
精霊さん「そんなこと!わーちの力があればどうにでもなる」
タケル「あ!」
精霊さん「さあ、追え」
タケル「ありがとう」
僕は人間になった。
〇一人部屋
フタバさんの声がする。
フタバ「もー、起きてよ」
タケル「フタバさんも一緒に寝ようよ」
フタバ「なに言ってるのよ!」
〇大学
フタバさんが大学に行くと言うので僕もついていくことにした。
フタバ「あっちには馬とか牛もいるんだよ」
フタバさんはジュウイガクブ?というところで動物の勉強をしているらしい。
僕は字は読めないけど、彼女の部屋にはそれらしき本がたくさん置いてあった。
フタバの後輩「ちょっとフタバ先輩!そのイケメンさん、彼氏ですか!?」
フタバ「残念ながら違うのよ」
フタバの後輩「そんなことより、大変なんですよ!」
フタバの後輩「近くの動物園のゴリラが行方不明みたいで大騒ぎになってるんです!」
フタバ「え?それって・・・・・・」
タケル(僕のことだ)
〇動物園の入口
動物園は休園となっていた。
僕のせいでフタバさんにも園にも迷惑がかかっている。
園長さん「君はいつもタケルを見にきてくれてる子だね」
フタバ「こんにちは、やっぱりタケルくんが・・・・・・」
園長さん「ええ、スタッフが捜索中ですが心配です」
タケル「・・・・・・」
園長さん「君は・・・・・・」
フタバ「きっと無事だと思います」
〇開けた交差点
タケル「フタバさん」
フタバ「タケルくんは戻った方がいいと思う。みんな心配してる」
タケル「そう、だよね。また来てくれる?」
フタバ「もちろん、約束」
僕たちは小指を重ね合わせた。
タケル「・・・・・・じゃあね」
〇ゴリラの飼育エリア
精霊さん「もう戻ったのだな」
タケル「どうしようもないだろ」
園長さん「やはり彼は・・・・・・」
〇一人部屋
あれから数日が経った。
今日から動物園の営業が再開される。
おそらく今見に行っても彼と過ごした短い時間を思い出してつらくなるだけだろう。
フタバ「それでも約束したもんね」
〇ゴリラの飼育エリア
タケルがいる。
フタバ(眠っちゃってる)
園長さん「あなたが言った通りタケルは無事でした」
フタバ「また眺めることができて幸せです・・・・・・」
園長さん「ゆっくりしていってくださいね」
フタバ(あ、起きた)
フタバ(バナナ・・・・・・あの時も食べてたな)
〇ゴリラの飼育エリア
タケル「フタバさん・・・・・・」
精霊さん「わーちに任せな」
タケル「どうして」
園長さん「寂しそうなあなたたちを放ってなんておけません」
タケル「2人はどういう関係?」
園長さん「これは私の妻です」
タケル「え!!」
精霊さん「いいからさっさと行くがよい」
タケル「で、でも」
園長さん「何かあったらまたいらっしゃい。さあ、女性を待たせてはいけませんよ」
タケル「ありがとう・・・・・・!」
〇開けた交差点
本当は自分でも人間よりゴリラの方が好きだと思っていた。
フタバ(あんなイケメンになって来られたら好きになっちゃうよ)
「あの、すみません」
その声は間違いなくタケルだった。
フタバ「は、はい」
フタバ(心臓の音すごい)
タケル「顔、真っ赤だよ」
フタバ「タケルくんだって」
タケル「寂しいから来ちゃった」
タケルくんは私を抱きしめた。
フタバ「・・・・・・またみんな心配しちゃうよ」
タケル「お許しはもらってるよ」
フタバ「本当でしょうね?今度確かめに行くから」
タケル「僕も行きたい」
フタバ「私がゴリラばっか見つめてても嫉妬しないでね」
タケル「大丈夫・・・・・・だってフタバさんは僕一筋でしょ?」
フタバ「そうだよ」
タケル「僕も好きだよ」
おしまい。
園長さんの奥さんが精霊さんだったとは。
タケル君とフタバちゃんのこれからも気になりますが、園長さんの過去が気になってしまいますな。
ゴリラが好きなので人間でもゴツイ感じの人がタイプなのかなと思いきや、そうでもないんですね^^;
そういえば以前イケメンで有名になった動物園のゴリラがいたことを思い出しました!
粋な妖精さんだなぁと思ってたら園長の奥さんだったとは!
もしペットが人間だったら…って妄想は大抵の人はすると思うんですが、こんなイケメンになって現れたらびっくりしますよね。笑