侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

椎名つぼみ

1.何で?『婚約者』にはなれない私(脚本)

侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

椎名つぼみ

今すぐ読む

侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇華やかな広場
アガット(幼少期)(キレイな赤・・・)
  笑うたびに、髪がキラキラ光って揺れる。
  出逢った時から、彼は太陽みたいな人だった。
  「アガット。大きくなったら、僕の妃になれ」
アガット(幼少期)「いいわよ。ラフが浮気しないならね!」
  キスの時は、目をつむるだなんて知らなかったあの頃。
  大人になればもっと、一緒にいられるものだと思ってた。

〇華やかな広場
  あれから10年──
アガット「ラファエル殿下。 これは、どういうことでしょうか?」
ラファエル「げっ、アガット! 何でお前がここにいるんだよ!?」
  私たちの思い出がつまった、皇宮のローズガーデン。
  そんな場所だから尚更、彼が他の女と笑い合ってるのなんて見たくなかった。
アガット(あ・・・)
アガット(お花なんて、私もらったことない・・・)
アガット「午後は私と、帝国の歴史について学ぶ予定でしたよね?」
ラファエル「いや、だから、ちょっと。 その前に、だな・・・」
ホワイト公爵令嬢「それでは殿下、私は失礼いたします。 今日はとても楽しかったですわ」
ホワイト公爵令嬢「ベリー侯爵令嬢、ごきげんよう。 同じ『婚約者候補』として、ぜひ仲良くしましょうね」
アガット「ええ。喜んで・・・」

〇貴族の応接間
アガット「今月に入って、もう5回目ですけど」
ラファエル「何が?」
アガット「とぼけないで下さい。 他の令嬢とイチャイチャして、私との約束に遅れた回数です!」
ラファエル「何だそりゃ・・・」
ラファエル「まあ機嫌なおせよ。ほら、コレ。 アガットのために用意したんだから」
アガット「異国の・・・スイーツ?」
ラファエル「ああ。カステーラと言うらしい。 行商人から、特別に取り寄せたんだぜ」
アガット「うわ~♥️ こんな形のお菓子、本でしか見たことないわ」
ラファエル「だろ? 食いしん坊のお前なら、絶対に喜ぶと思ってさ」
アガット「その言い方・・・確かにうれしいわよ」
アガット「でも私だって、たまにはバラとか・・・」
ラファエル「ん? ほら、口開けてみろ。 あーんしてやる」
アガット「ちょっと。 ラファエル殿下、止めて下さい。 メイドが見てます」
ラファエル「ばーか。 お子ちゃまがそんなこと気にするなよ」
アガット「なっ・・・2歳差でしょ? ちゃんとレディとして扱ってよ!」
アガット「成人してなくたって、仮にも私は、あなたの婚約者なんだから」
ラファエル「あのな~。『婚約者候補』だろ」
ラファエル「オレがお前に決めてるみたいに、誤解されるようなこと言うな」
アガット「・・・」
ラファエル「さっきの、ホワイト公爵令嬢。 アーサー伯爵の娘。 隣国の王女──」
ラファエル「オレの婚約者として名前が上がっている女は、お前の他にもたくさんいるんだ」
アガット「だとしても。 有力候補といわれているのは、この私だわ」
ラファエル「だったら──」
ラファエル「アガット、お前はしばらく宮殿に来るな」
アガット「なっ!?」
ラファエル「今までのような、特別扱いは禁止」
ラファエル「何かあれば正式な招待状を出す。 もしくはオレが、ベリー侯爵家の方に出向くから」
アガット「そんな・・・ それじゃあ他の令嬢たちと、何も変わらないじゃない」
ラファエル「・・・」
アガット(ひどい。本気?)
アガット「ラファエルの・・・ラフの大バカ!!」
ラファエル「アガット!!」
ラファエル「痛ってぇ・・・相変わらず短気なヤツだな。 令嬢とは思えぬ、腹パンチしやがって」
ラファエル「ったく。 皇族のオレが訴えたら、不敬罪で斬首もんだぞ」

〇立派な洋館
  ベリー侯爵邸

〇綺麗な部屋
アガット「マリー。 紅茶とお菓子と、新聞をお願いするわ」
マリー「はい、只今!」
アガット「あら、新聞は?」
マリー「あの、えっと・・・」
アガット「何よ、これ。 ラファエルが劇場でお忍びデート? 王女と『結婚秒読み』ですって?」
アガット(また、違う女・・・ 私とは『破局』とまで書いてある)
マリー「どういたしましょう?」
アガット「そうね。まずは新聞社に抗議──」
アガット(ダメだ。半分は真実だもの)
アガット「それより私が今すぐ皇宮に行って、世間の誤解を──」
アガット(それもできないわ。 出入りを禁止されてるんだった)
アガット「・・・」
アガット「ただの『婚約者候補』は、無力ね」
マリー「デマですよ、こんな記事!」
アガット「実は少し前に、ラファエルに言われたの。 「まだ私に決めたわけじゃない」って」
マリー「まあ! 殿下が、今更そんなことを!?」
アガット「うん。ホント、今更よね」
  子供の頃にした、秘密の約束。
  こんなにも大切にしてるのは、私だけなのかもしれない。
アガット「だからって、泣き寝入りなんて冗談じゃないわ」
アガット「私はやるべき事をやる。 皇子妃になるために、精進しなきゃね」
マリー「はい! それでこそ敬愛するお嬢様です!」
マリー「では今朝はまず、届いたお手紙に目を通すことから始めて下さい」
アガット「あら? 皇室から・・・」
アガット「──って、大変! ラファエルが午後、我が家に来るって!!️」
アガット「マリー、支度を急いで。 私のお気に入りの服と、お茶の準備もお願いね❤️」
マリー「はい!!」

〇大樹の下
アガット「はっ!」
ラファエル「おっと」
アガット「ふぅ」
ラファエル「うわ~、危ねっ」
ラファエル「ハハッ。すげー、振り! 上手くなったな、アガット」
アガット「騎士団長のラフが教えてくれてるお陰ね」
ラファエル「まー、それもあるんだけどさ。 実際、お前は筋がいいよ。 けど──」
ラファエル「久しぶりに会って、やりたいことが剣の手合わせって。 令嬢としては、やっぱ変わってるわ」
アガット「だって貴重でしょ? ラフしかいないんだもの、教えてくれるの」
ラファエル「だからって。 たいていの女は買い物だなんだで、ここぞとばかりに街中を引っぱり回すぜ」
アガット「他の人のことは、どうでもいいのよ。 将来、あなたの隣に並ぶのは私なの」
アガット「花束も観劇も羨ましいけど・・・」
アガット「私にはこっちの方が大切」
アガット「だって騎士としても名高い第2皇子の妃が、自分の身も守れないようじゃ、カッコつかないじゃない?」
ラファエル「見たんだな、あの記事・・・」
ラファエル「・・・」
ラファエル「アガット。左手、貸せよ」
アガット「はい──」
  チュッ♥️
アガット(薬指にキス・・・って)
アガット「ど、どうしたの? 突然」
ラファエル「イヤ、何となく」
「・・・」

〇空
  ふと見上げると、いつの間にか空が藍色に染まっていた。

〇大樹の下
アガット「わ~キレイ! 宮殿の方から上がってるわね」
アガット「来月に開かれる、建国祭の準備かしら」
ラファエル「違う。兄上が戻って来られたんだ」
アガット「え!? ミカエル皇子が?」
アガット「お身体が弱いからって、もうずっと帝都を離れていらしたんでしょ?」
アガット「良かったじゃない、ラフ。 10年ぶりに、お兄様とチェスができるわね」
ラファエル「ボード上だけの戦いで済めばいいけどな・・・」

〇宮殿の門
  3日後。『皇子帰還の儀』
  貴族たちが一同に集められ、急きょ、
  第1皇子を讃える会が、皇宮にて開かれた。

〇謁見の間
皇帝陛下「ジェムズ帝国、第1皇子ミカエル」
ミカエル「はっ」
皇帝陛下「アカデミーを主席で卒業。 その後、明晰な思考力で、我が国に多大なる貢献を果たしたことを、ここに称する」
ミカエル「畏れ多きお言葉にございます」
  10年ぶりに、公式行事に出席されたミカエル殿下。
  ご病気だったとは思えない凛々しいお姿に、貴族たちからは感嘆の声が上がる。
アガット(この方が、ラフのお兄ちゃん・・・)
アガット(美形だけど、冷淡な眼差しが怖い。 同じ兄弟でも、ずいぶん雰囲気が違うのね)
  ラファエルが真夏の陽光だとするなら、彼は冬の暁光だ。
アガット(ふふ。私はやっぱりラフ。 礼装は3割増しね。赤色が似合うわ❤️)
皇帝陛下「ところで、ミカエル。 このたびの褒美は何がいいだろうか?」
皇帝陛下「新たな土地や宮殿など、欲しいものを考えておくが良い」
ミカエル「ありがとうございます」
皇帝陛下「そしてそなたに相応しい、妃を迎え入れるのはどうだろうか。 なあ、ラファエル?」
ラファエル「はい・・・」
皇帝陛下「弟皇子には婚約者がいて、兄皇子にはまだというのも困った話だろう」
皇帝陛下「いっそのこと、ラファエルの婚約式を開いて、同時に、他の令嬢を集めてだな・・・」
ラファエル「お言葉ですが、陛下。 オレにもまだ決まった相手などおりません!!️」
皇帝陛下「何と・・・」
ミカエル「・・・」
皇帝陛下「お前はベリー家の令嬢を、妃にするつもりでいると思っていたが」
ラファエル「──いいえ。オレはまだ、将来の伴侶を決めかねています。 あくまで、彼女は婚約者候補の1人です」
アガット(ラファエル・・・)
アガット(1度も目が合わない・・・本気なの?)
  2人でケンカをしながら、口にするのとは違う。
  御前での発言は、簡単には取り消せない。
アガット「・・・」
ミカエル「陛下、僭越ながら──」
ミカエル「先ほどの褒賞の件、やはり今、お願いしてもよろしいでしょうか?」
皇帝陛下「おぉ、ミカエル。 良いぞ! 申してみよ」
ミカエル「アレを──」
アガット(え・・・指、さされてる?)
ミカエル「あそこにいる、プラチナブルーの髪の娘を、 私に下さい」
アガット(なっ・・・!!)
  ミカエル殿下の思いがけない要望に、会場がさらに騒然とする中──。
ラファエル「チッ!」
  ラファエルの舌打ちだけが、私の耳に静かに響いた。

次のエピソード:2.望んでいた婚約。でも、あなたじゃない

コメント

  • こちらが未読だったので、読ませてもらいました。去年、悪役令嬢や転生令嬢モノにハマって読み漁っていましたが、こんなに健気な令嬢は居なかったですね🥲ホロリ。
    アガットを応援したくなるけど、ラフ君にその気が無い!?私ならミカエルに乗り換えるなと思いながら読みましたが、はてさて?
    兄弟に天使の名前を付けるセンス、流石です👍

  • 遅ればせながら拝読しました。
    とにかくアガットが可愛いです💕
    泣かせるやつは許さんぞ、聞いてるかラフ!でも彼にも理由がありそう。お兄さんも第一印象裏切ってくれたりしないかな?今のところくっつくのはどっちでもいいから、とにかく幸せになってもらいたいです。
    それでは、第2話のアガットにも会いに行ってきます😆

  • こんにちは!
    セリフが分かりやすく、魅力的だったので2倍速のオートモードがかなり遅く感じました(笑)
    アガットの乙女な部分、まだあどけなさがあって微笑ましかったです😍
    ラファエルとミカエル、兄弟間にただならぬ雰囲気を感じて2話目が気になりました!
    キャラが個性的で覚えやすかったです!

コメントをもっと見る(16件)

ページTOPへ