藤森ヒロシ探検隊~失われたゴッドオーブ~

相生宗太

第一話 戦慄の奇習! 生贄にされた藤森探検隊!!(脚本)

藤森ヒロシ探検隊~失われたゴッドオーブ~

相生宗太

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〇おしゃれなリビングダイニング
京子(幼少期)「ねえ、パパ! きょうは『ひとくいぴらにあ』がでてくるの、みようよ!」
京子の父「あははっ! 京子は本当に『藤森ヒロシ探検隊』のDVDが好きなんだな?」
京子(幼少期)「うんっ、だいすき♪」
京子(幼少期)「わたしね、おおきくなったらぜ~ったい『たんけんか』になるんだあ!」

〇アマゾンの森
  そして十数年後──
多田京子「ああ・・・あれが探検家憧れの地、アマゾンかあ!」
  高校生へと成長した多田京子は、なんと探検家になる夢を叶えていた。
  『藤森ヒロシ探検隊』。
  京子に多大な影響を与えたその伝説の探検番組が、三十年の時を経て復活する。
  それに伴い行われた『隊員オーディション』に京子は見事合格したのだ。

〇アマゾン川のほとり
  そして今まさに、藤森探検隊は大アマゾンに潜む幻のイエティを発見すべく、秘境へ突入していた。
吉岡「じゃあ改めまして・・・ディレクション兼撮影の吉岡だ」
吉岡「何があっても良い画が撮れるまで死ぬ気でやってもらうから、そのつもりでな」
多田京子「オーディションで隊員になった多田京子です! よろしくお願いします!」
サイモン「ドーモ。ワタシはサイモン、ガイドと通訳デス」
藤森ヒロシ「隊長の藤森だ。よろしく」
多田京子「あ、あの・・・私、藤森隊長と一緒に探検するのが夢だったんです!」
藤森ヒロシ「あ?・・・ああ、そりゃどうも」
藤森ヒロシ「しっかり気合い入れて演じてくれ」
多田京子「もちろんです! 気合い入れて・・・」
多田京子「ん、演じる?」
藤森ヒロシ「吉岡さん、とりあえず向こうにイエティがいるって想定でいきます?」
吉岡「おう。発見後、襲われてケガをする流れで。マジな流血、期待してっからな」
藤森ヒロシ「マジな流血って・・・はあ、まあ了解」
藤森ヒロシ「・・・だそうだからNGは極力避けろよ、嬢ちゃん?」
多田京子「え・・・あの、イエティがいる想定って?」
吉岡「じゃあいくぞ! よーい、アクション!」
藤森ヒロシ「な、なんだあの生物は!?」
多田京子「えっ・・・せ、生物? どこに?」
藤森ヒロシ「ほら、お前もやれ」
藤森ヒロシ「京子隊員、あそこだ! よく見ろ!」
多田京子「え、えっと・・・見えませんけど・・・」
吉岡「カーット!!」
吉岡「コラァァッ、お前さっきまでの威勢はどこいったんだ、オラァッ!?」
多田京子「だって、何も見えなかったので・・・」
吉岡「だあもうッ、見えてる体で演技しろ!!」
多田京子「・・・は?」
藤森ヒロシ「撮影後にイエティのCGを合成すんだとよ。最近は便利になったもんだ」
多田京子「はあッ!? それって完全にヤラセじゃないですか!」
藤森ヒロシ「ったりめえだ。実在しねえんだから」
多田京子「何言って・・・隊長は『藤森ヒロシ探検隊』で何度も未知の生物と遭遇して──」
藤森ヒロシ「んなもん全部作り物に決まってんだろ」
藤森ヒロシ「つうか、そんな世紀の大発見してたら普通は学会で発表するわ」
多田京子「・・・っ、そんな・・・」
多田京子「・・・嫌だ、私は絶対に未知の生物と遭遇して、すごい探検家になるんです!」
藤森ヒロシ「あっ! オイ、どこ行く気だ!」
多田京子「うおおおッ、未知の生物が呼んでいる!!」
サイモン「カム・バーック! イエティいなくても、ここは危険いっぱいデース!」
  サイモンが止めるのも聞かず、京子は密林へと消えていった。
藤森ヒロシ「アイツ呼び戻してきます」
吉岡「待て。危険なら何か起こるかも・・・しばらく泳がせてみるのも面白そうだ」
藤森ヒロシ「・・・はぁ?」
多田京子「きゃあああああっ!!」
藤森ヒロシ「ッ!? 今の、アイツの悲鳴じゃ?」
吉岡「ああ、こりゃあ高視聴率の予感がする! 行くぞ、藤森隊長!」

〇密林の中
  藤森たちは悲鳴のもとへ駆けつけるため、密林の奥地へと足を踏み入れた。
  するとそこには、なんと先住民に拘束された京子の姿があった。
藤森ヒロシ「嬢ちゃん!!」
多田京子「くうぅっ、ガチなトラブル来たあ~♪」
藤森ヒロシ「はしゃいでる場合かッ!」
先住民の男「【現地語】大人シクシロ!」
藤森ヒロシ「サ、サイモン・・・アイツなんて?」
サイモン「『ウェルカム!』と言って彼女に熱烈なハグしてマス」
藤森ヒロシ「は? ありゃどう見ても拘束だろ?」
吉岡「くく、いいぞ。良い画が──」
吉岡「て、なっ!?」
  藤森たちが油断していると、同じ部族の男たちが続々とやってきて武器を構えた。
吉岡「ちょっ、俺まで威嚇すんなって!」
先住民の男「【現地語】オマエラ皆、生贄ダ!」
サイモン「オ~『踊りましょう!』だそうデス! ダンス、オッケー?」
藤森ヒロシ「ノー・サンキューだ! つうか、こっちに槍向けながら言うセリフかよ!?」
先住民の男「【現地語】来イ!!」
多田京子「わわっ、これって連れ去られる感じですか!? きゃー、ワクワクしますねっ♪」
藤森ヒロシ「しねえよッ! 少し黙っとけ!」

〇先住民の村
先住民の長「【現地語】侵入者ハ生贄ダ!」
先住民A「【現地語】生贄ダ!」
先住民B「【現地語】生贄ダ!」
サイモン「『会えて嬉しい!』と言ってマス」
藤森ヒロシ「俺たちを拘束しておいて!? 怖えわ!」
多田京子「・・・あっ、あの骨の山って、もしかして前に歓迎されてた人たちのですかね?」
吉岡「かもな・・・チッ、おいしい絵面だってのに本物の人骨だったら使えねえな」
藤森ヒロシ「こんな時に何言って・・・つうか、俺たちも骨になる前に逃げねえと」
多田京子「安心してください、藤森隊長! 私に良い作戦があります!」
藤森ヒロシ「・・・不安だが、一応聞かせてみろ」
多田京子「私が囮になって逃げる隙を作ります」
藤森ヒロシ「縛られてるこの状況で? 死ぬぞ?」
多田京子「平気ですよ。奴らの槍の攻撃をかわしつつ、刃先で縄を切ればいいんです!」
藤森ヒロシ「漫画かッ!? 却下だ、んなもん!」
吉岡「俺も同意見だな。死んだら終わりだ」
藤森ヒロシ「吉岡さん、やっぱあんたも──」
吉岡「マジな死人が出たら番組がお蔵入りになるばかりか、俺のキャリアにも傷がつく」
藤森ヒロシ「・・・はぁ」
吉岡「だからここは俺に任せろ! こういう時は交渉に限る!」
  ──数分後。
藤森ヒロシ「金も物もいらねえってか・・・次は?」
吉岡「・・・万策尽きた」
藤森ヒロシ「尽きるの早えな!!」
吉岡「くっ・・・こうなったらなんでもするから、俺の命はだけは見逃してくれッ!」
藤森ヒロシ「全員生還じゃねえのか、オイ?」
サイモン「見逃す条件、イタダキましたヨ」
藤森ヒロシ「本当か!? どんな条件だ?」
サイモン「会話がディフィカルトで、絵を描いて説明してもらったのデスが・・・」
藤森ヒロシ「・・・意外と良い奴らだな」
サイモン「『化け物』に持ち去られた村の秘宝『ゴッドオーブ』を取り戻してくるコト」
多田京子「な、なんて魅力的な条件・・・!」
サイモン「それと、人質を置いていくように、だそうデース」
藤森ヒロシ「チッ、逃亡防止のための人質ってか」
吉岡「・・・よし、お前ら、オーブ取ってこい」
藤森ヒロシ「吉岡さんが人質に?」
藤森ヒロシ「まさかひとり犠牲になって俺たちを──」
吉岡「ちげえよ! 人質の方が安全そうだし、JKとヤラセ隊長が密林で本気の探検をするなんて、ウケねえわけがねえ!」
藤森ヒロシ「なっ・・・!?」
多田京子「やったあああッ、本気の探検だあ!!」
吉岡「いいか、死ぬならオンエア後だ! 今は何がなんでも生きて撮影してこい!」
  ゴッドオーブを求めて探検に出ることとなった藤森探検隊の運命はいかに!

次のエピソード:第二話 これがアマゾンの洗礼だ! 謎の果実と人食いワニの恐怖!!

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