メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード14(脚本)

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〇坑道
アイリ「あと少しで到着よ」
  進むうちに線路は途切れ、ランプとは違う光がぼんやりと足元から滲(にじ)み始めた。
  視線を下げて高揚した目をしているニルとエルルの姿を眺めながら、アイリは懐かしい気持ちを抱く。
  隆起(りゅうき)した地面を乗り越えた瞬間、お目当ての場所に到着した。
ニル「うわぁ・・・!」
エルル「すごい・・・テンガタイトが、こんなにいっぱい!」
  眼前に広がるのは、無数のテンガタイトが散らばるように生えている光景だ。
  幻想的な空間に、ニルとエルルは一瞬で心を奪われてしまった。
アイリ「やっぱり、この光景は何度見ても綺麗ね」
アイリ「よし、それじゃあ採掘しましょうか!」
  アイリの言葉を合図に、各々が採掘を開始した。

〇坑道
  一通り採掘を終えた3人は、休憩をとろうと腰を下ろしていた。
  持参していた携帯食料を食べ終わり、アイリがすっと立ち上がる。
アイリ「そろそろいきましょうか」
アイリ「ついでだから、アンタの剣に使うコアを手に入れましょ」
ニル「え?」
  首を傾(かし)げるニルに、アイリは身支度を整えながら説明する。
アイリ「メタリアルは生きた金属だから、使い続けるためには、エネルギーになるコアが必要になるの」
アイリ「だから、あのパーツを使って剣を作るためには相応のコアがいるってわけ」
ニル「へえ・・・」
アイリ「ここなら、ちょうどいいのがいるわ」
ニル「ちょうどいいの?」
  アイリはニヤリと笑って、ニルの質問には答えずに立ち上がった。
アイリ「移動するわよ。大物を狩りにね」

〇岩山
  アイリの言っていたギアーズの生息地は、あまり人が立ち入らない場所にあるようだ。
  一度地表に出た3人は、今度は山道を登り進めていた。
  高度が上がるにつれ斜面は険しくなり、空を覆う雲はだんだん暗くなっていく。
  これから討伐に向かうギアーズは巨大な翼を持ち、その翼を巧みに使い旋風を巻き起こすのを得意としている。
  人間が到底たどりつくことのできない高度まで飛び上がり、襲いかかってくる鉤爪(かぎづめ)は鋭く危険だ。
  アイリの説明に相槌を打ちながら、ニルとエルルはそれぞれの脳内でギアーズの姿を連想した。
  エルルは自分も参加せんと意気込むが、アイリは静かに忠告する。
アイリ「これまでの相手とはレベルが違うから、アンタは見てなさい」
エルル「えっ!? でも・・・」
アイリ「アンタはラウルガを一撃で倒せるんだもの」
アイリ「それで十分よ」
エルル「・・・・・・」

〇岩山
  日が落ち始めるのに合わせて、ぽつりぽつり雨が降ってきた。
  地面に水滴が広がっていき、次第に雨粒の大きさも量もふくれてくる。
  3人はそれぞれに手で雨粒を防ぎながら、どうしようかと辺りを見渡した。
アイリ「あそこにいきましょ!」
  アイリが指さした方向には、大きく口を開けた岩穴があった。
  急いで岩穴へと避難し、中から外の様子をうかがう。

〇岩穴の出口
  先ほどよりも強くなる雨足に加え、遠くの方でゴロゴロと雷が鳴っているのが聞こえた。
ニル「あちゃー、本格的に降ってきちゃったね。 しばらく止みそうにないよ」
アイリ「そうね・・・とりあえず雷が止むまでは、ここで休憩しましょうか」
  広めの空間は、3人が入ってもなお窮屈さを感じさせないほど広い。
  アイリが荷物から小さなランプを取り出して火を灯すと、岩肌がうっすらとオレンジの光に染まった。
  雨粒を吸った衣服は、身体(からだ)のラインをさらすように張りつく。
  もちろんアイリとエルルも例外ではなく、艶を帯びた濡れ髪に頼りない光が相まって、どことなく色っぽい姿をさらしていた。
  ニルはなんとなく後ろめたい気持ちになり、慌ててふたりから顔を背ける。
アイリ「・・・ちょっとニル」
ニル「み、見てないよ!」
アイリ「なにも言ってないわよ・・・」
アイリ「まあいいわ。風も出てきたらまた濡れちゃうし、もうちょっと奥に・・・」
  言いかけたアイリがランプを奥に向けると、足元に奇妙なものが散らばっていた。
  無造作に放ってある物体をよく見れば、ギアーズのパーツのようだ。
  おそらくは何者かによって捕食されたのであろうそれに、アイリは息を呑む。
  ニルもパーツに気づき、岩穴の奥へと続く暗闇を睨(にら)んだ。
ニル「・・・アイリ」
アイリ「・・・・・・」
エルル「?」
  エルルはまだパーツの存在に気づいていないようで、首を傾(かし)げてふたりを見ている。
  なにかあったのか、とエルルが口を開こうとしたその瞬間。
  突然、岩穴全体に轟(とどろ)くギアーズの咆哮(ほうこう)とともに、ビリビリと地響きが起こった。
  穴の奥からのっそりと姿を現したのは、巨大な翼を持つギアーズだった。
アイリ「フリューゲラス・・・ここが巣だったのね」
アイリ「探す手間が省けたわ。 エルルは下がってなさい」
アイリ「ニル、行くわよ!」
  アイリはランプをエルルに渡し、腰に携(たずさ)える双剣に手をかけた。
  ニルも頷(うなず)いて武器を構える。
  武器を作るのに必要なコアを傷つけてはいけない。
  ゆえに持久戦になることは、事前にアイリがふたりに説明していた。
アイリ「この岩穴の中なら、ヤツは飛べないわ」
  ニルとアイリはじわじわとフリューゲラスへ距離を詰める。
  エルルはアイリの言う通り、少し離れた位置から見守っていた。
アイリ「ハァッ!」
  まずアイリが飛び出して、追いかける形でニルが剣戟を繰り出す。
  フリューゲラスは大きな翼を使いふたりが近づくのを拒もうとした。
  しかしふたりは翼を避けて、巨大な胴体へと剣を突き立てる。
  ニルとアイリの息の合った連携プレイは、順調にフリューゲラスにダメージを蓄積させていった。
  フリューゲラスの動きは鈍くなり、弱々しく唸(うな)り声を上げている。
  ニルとアイリはアイコンタクトを交わして、さらに攻撃を仕掛けようとする。
  しかし、それよりも先にフリューゲラスの前に飛び出したのはエルルだった。
「なっ!?」
エルル(私だって・・・!)
  軽やかな身のこなしでエルルのハンマーがフリューゲラスの背中に落とされる。
  見事に入ったハンマーに、エルルはよし・・・! と頬を緩めた。
アイリ「下がってなさいって言ったでしょ!?」
エルル「へ——?」
  怒りで暴れだしたフリューゲラスが力任せにエルルを地面に叩きつける。

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