Piano Lesson

ぺろしき

『きっと誰かが』(脚本)

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〇渋谷の雑踏
水崎かなで(ずっと、ピアノを弾くのが好きだった──)

〇モヤイ像
水崎かなで(誰かに、私のピアノを届けたかった──)
水崎かなで(きっと、届くと思っていた──)
水崎かなで(でも──)
水崎かなで(・・・・・・)
  足を止める人はいない
水崎かなで「ダメか・・・」
水崎かなで「でも、頑張る!」
水崎かなで「まだ25歳」
水崎かなで「全部、伸びしろだからね!」
水崎かなで「再び、いきまーす!!」

〇赤(ディープ)
  この日を境に
  彼女の指は
  思い通りに動かなくなった
  原因は
  不明

〇マンション前の大通り
  ──10年後
水崎かなで(ああ、全然思い通りに動いてくれない)
水崎かなで(壁うすいから丸聞こえでしょ。 恥ずかしいなぁ)
水崎かなで(もう限界だな──)

〇豪華な客間
水崎かなで(35歳──)
水崎かなで(この指でピアノ講師を10年──)
水崎かなで(やれることはやった──)
水崎かなで(もう、思い残すことはない)

〇豪華な客間
水崎かなで「さようなら」
水崎かなで「私の指──」
水崎かなで「私のピアノ──」
「ごめん下さい!!」
水崎かなで「誰だろ?」

〇マンションの共用廊下
水崎かなで「本当に誰?」
樹林雪斗「はじめまして」
樹林雪斗「キバヤシ・ユキトと申します」
樹林雪斗「25歳。独身です」
水崎かなで「年齢、独身、どうでもいいんだけど」
水崎かなで「何の御用ですか?」
樹林雪斗「弾きたい曲があるんです」
樹林雪斗「僕に、教えてくれませんか?」
水崎かなで「ごめんなさい。 今日で廃業したんです」
樹林雪斗「え──」
樹林雪斗「嘘でしょ?」
水崎かなで「本当です」
樹林雪斗「どうしよ──」

〇見晴らしのいい公園
水崎かなで(樹林雪斗は、意中の女性に思いを伝えるために、ピアノを弾きたいのだという)
水崎かなで(年齢=彼氏いない歴 の私には全く共感できない理由だったが)
水崎かなで(高額の講師料につられて一ヶ月の約束で引き受けた──)

〇豪華な客間
水崎かなで(樹林雪斗はズブの素人だった)
水崎かなで(だが、何故か本気だった)
水崎かなで(本当に、気持ちいいくらい本気──)
水崎かなで(いじめたくなる──)

〇豪華な客間
樹林雪斗「緊張しました・・・」
水崎かなで「うん。そうだね」
水崎かなで「ハッキリ言ってド下手だね」
水崎かなで「ピアノに失礼。謝って欲しい」
樹林雪斗「そんなに酷いですか・・・」
水崎かなで「うん。 一ヶ月はキツいわ」
樹林雪斗「でも、がんばります!!」
水崎かなで「あ、そう」
水崎かなで「頑張ってね」
水崎かなで「ちなみに、弾きたい曲って何?」
樹林雪斗「それは──」
水崎かなで「『エリーゼのために』? 『くるみ割り人形』? それとも──」
水崎かなで「『ネコふんじゃった』?」
樹林雪斗「ははは」
樹林雪斗「実は──」
樹林雪斗「曲名がわからなくて」
水崎かなで「えっ!!」
樹林雪斗「昔、街角ピアノで聴いた曲で──」
樹林雪斗「ずっと好きだった曲なんです」
水崎かなで「ヒント少ないな。どうしよ。 曲がわからないと、どうしようもないよ」
樹林雪斗「こんな曲です」
  樹林はハミングをする
樹林雪斗「〜♩〜♩♩」
樹林雪斗「〜♩〜〜♫♬」
水崎かなで「こ、この曲は・・・」
樹林雪斗「いくら探しても楽譜が見つからなくて」
水崎かなで「その曲は、探しても無駄だよ」
樹林雪斗「え?」
水崎かなで「ピアノかわって」

〇豪華な客間
  水崎かなでは、鍵盤を弾く
  指の痛みに耐えながら
樹林雪斗「この曲です! この曲が弾きたいんです!」

〇豪華な客間
樹林雪斗「なんて曲ですか?」
水崎かなで「『きっと誰かが』」
樹林雪斗「『きっと誰かが』──」
樹林雪斗「素敵な曲名ですね」
水崎かなで「・・・」
樹林雪斗「やっと見つけました」

〇豪華な客間
水崎かなで「はい」
樹林雪斗「ありがとうございます!」
樹林雪斗「来週までには、暗譜してきます!」
水崎かなで「頑張ってね」
樹林雪斗「ありがとうございました!」
水崎かなで「驚いた。彼の弾きたい曲が──」

〇モヤイ像
水崎かなで(あの頃、ずっと弾いていた──)
水崎かなで(私の曲だったなんて──)

〇豪華な客間
水崎かなで「残酷ね──」

〇赤(ディープ)
  複雑な彼女の心とは裏腹に
  樹林雪斗は必死に練習した

〇豪華な客間
水崎かなで(すごい・・・)
水崎かなで(たった一週間でうまくなってる)

〇豪華な客間
水崎かなで(しなやかな指運び──)
水崎かなで(何で、こんなことができるの?)

〇豪華な客間
水崎かなで(楽しい!)
水崎かなで(ピアノって── こんなに楽しいことだったの?)

〇赤(ディープ)
  そして、約束の1カ月がたった
  樹林雪斗が演奏した場所は──

〇モヤイ像
水崎かなで「あなたならできるわ!」
樹林雪斗「今までありがとうございました!」
水崎かなで「意中の人は来てるの?」
樹林雪斗「はい──」
水崎かなで「そっか。 頑張って!」
樹林雪斗「頑張ります!」

〇モヤイ像
  演奏が始まる
水崎かなで(樹林くん──)
水崎かなで(頑張ったね──)
水崎かなで(心に沁みる──)
水崎かなで(あなたは最高の生徒)
水崎かなで(ありがとう)

〇見晴らしのいい公園
水崎かなで「おめでとう! 完璧だった」
樹林雪斗「先生のおかげです」
樹林雪斗「ありがとうございました!」
水崎かなで「意中の人は、喜んでくれたの?」
樹林雪斗「はい。 喜んでくれました」
水崎かなで「そう・・・」
水崎かなで「じゃあ、さようなら」
樹林雪斗「先生!」
水崎かなで「ん?」
樹林雪斗「本当に、ありがとうございました!」
樹林雪斗「ずっと感謝を伝えたかった」
水崎かなで「大げさね」
樹林雪斗「十年越しですから」
水崎かなで「え」
樹林雪斗「あなたが街から消えた時──」
樹林雪斗「あなたの曲も消えました」
樹林雪斗「その時、僕ははじめて後悔しました」
樹林雪斗「感謝の言葉を伝えなかった後悔を──」
水崎かなで「君は、私を知っていたの?」
樹林雪斗「いえ」
樹林雪斗「僕が知っていたのは 『きっと誰かが』という曲が 素晴らしいということだけでした」
樹林雪斗「聴けなくなってはじめて──」
樹林雪斗「作ったあなたが素晴らしかったと、気付けたんです」
水崎かなで「なんか、照れるね」
樹林雪斗「気付いたのは遅かったですけど──」
樹林雪斗「あなたにはずっと感謝してました」
樹林雪斗「私は、あなたを信頼しています」
樹林雪斗「だから──」
樹林雪斗「だから、やめないでください!」
樹林雪斗「僕があなたを見つけました」
樹林雪斗「もう、離れません!」
水崎かなで「ごめん──」
水崎かなで「もう遅いの。 私の指はもう思った通りには動かないの」
水崎かなで「もうピアノは弾けないの」
水崎かなで「ごめんなさい」
樹林雪斗「諦めるんですか?」
水崎かなで「え?」
樹林雪斗「僕が、なんとかします」
樹林雪斗「何年かかっても」
水崎かなで「そんなの無理よ」
樹林雪斗「大丈夫です」
樹林雪斗「十年、思い続けてますから!」
水崎かなで「・・・・・・」

〇豪華な客間
水崎かなで(そして、彼は私の部屋に転がり込んできた)
水崎かなで(医学部入学の勉強をはじめるのだとか──)
水崎かなで(現代医学ではどうにもならない、 私の指を治すために──)
水崎かなで(夢があるなぁ)
樹林雪斗「さ、気晴らしにピアノ弾こうかな」
水崎かなで「うん」
水崎かなで(私はいま──)
水崎かなで(世界で一番幸せです!)

コメント

  • 私がこのお話の50人目の読者だそうです❗️
    失礼ですが作者様はピアノを弾かれるのですか❓
    私は最近弾き始めてやっと4年ちょい経ちました。
    (幼稚園の2年間のエレクトーンを足せば6年になりますかねw)
    ショパン君の霊魂を題材に松竹アニメノベルコンテストに出しましたが、ピアノを題材にしても色々な描き方があるものですね❤️
    これからも頑張って下さい❤️

  • イップスというか、やっぱり離れたくなる時ってあるんですよね。そんな時に普段と違う観点、立場で見てみるとまた風景画変わっていい刺激になりそうです。

  • 芸術家等の表現をする人にとって、誰かの心に残るのは素晴らしいことですよね。10年間その思いを抱き続けてもらえるかなでは最高のピアニストですね。ピアノが結び付けた素敵なラブストーリーに感服です。

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