雄馬町の怪

平家星

#15 絆のケセランパサラン③(脚本)

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〇地下室
  突然、部屋から姿を消したチハル。
  手がかりを追って、地下室にやって来たミチオが目撃したのは・・・。
金丸ミチオ「え・・・? チハルさん!?」
  地下室の隅で体育座りしていたチハルが、振り返った。
南雲チハル「あっ、ミチオ! ちょっと、こっちこっち・・・」
金丸ミチオ「え?」
  チハルに促され、隣に座る。
金丸ミチオ「だ、大丈夫なの・・・?」
南雲チハル「いいから、そこ。その穴覗いてみて!」
金丸ミチオ「穴?」
  薄汚れた壁の下の方に、20センチほどの穴が開いていた。
  ミチルは恐る恐る、穴の中を覗き込む。
金丸ミチオ「こ、これは・・・!?」
  カバンを飛び出したくだんも、ミチオと一緒に穴を覗いた。
くだん「ほう、面白い」
  穴の向こうには、小さな会社の事務所のような空間が広がっていた。
  そこでは、昭和のサラリーマン風の小人のおじさんたちが額に汗して働いている。
くだん「小人たちか」
  ミチオたちが離れると、穴から小さなおっさんが一人飛び出した。
小さいおっさん「おまた~。あれ? なんや兄ちゃん? お嬢ちゃんの彼氏かいな」
金丸ミチオ「小さいおっさん!?」
小さいおっさん「せやで。この町のそこら中にいるんや。 隠れとるけどな」
金丸ミチオ「この状況・・・いったい・・・」
南雲チハル「わ、私も驚いてるのよ。何なの!?」
小さいおっさん「いやぁ~すみま千円! 許して万円!」
小さいおっさん「急に見つかってしもたもんで、みんなでお嬢ちゃんをさろて来てもうたんや~」
南雲チハル「で、ここに座らされてたってわけ」
金丸ミチオ「は・・・はあ」
小さいおっさん「騒ぎになる思て大慌てやったんやけど、お嬢ちゃん、落ち着いて僕らの話を聞いてくれるやん?」
小さいおっさん「ほんなら、いっそ相談しちゃお思うてね」
南雲チハル「で、何なのよ。相談って」
小さいおっさん「雄馬町には、我々のような小さいおっさんたちの零細企業が溢れとる」
小さいおっさん「どこも不景気で、価格競争で苦しんでるんや」
金丸ミチオ「な、なんだか現実感とファンタジー感が、同時に襲ってくる話・・・」
南雲チハル「ホント・・・」
小さいおっさん「そんなこんなで、うちもモロにあおり受けててな、みんな馬車馬のように働かされているんや・・・」
南雲チハル「それは気の毒な話ね」
小さいおっさん「・・・会社に連日、泊まり込み。 みんなおかしくなるで・・・」
南雲チハル「おっさんたちの中には、労働基準法とかないの・・・?」
小さいおっさん「ロウドウキジュンホウ? なんやそれ? 酒のつまみか?」
金丸ミチオ「なんだか、小さいおっさん社会全体に問題があるような・・・」
南雲チハル「・・・ちょっと待ってて!」
  チハルは地下室を出ていくと、政治経済の教科書を抱えて、すぐに戻ってきた。
南雲チハル「これあげる!」
金丸ミチオ「教科書?」
南雲チハル「おっさんたちの社会、不備ありすぎ! これ読んで、みんなで頑張って社会変えて!」
  小さなおっさんは、全身で本を受け取り、ページをめくった。
小さいおっさん「ほう! これにそういうコツが載ってるんか!」
金丸ミチオ「たしかに、何百年もの社会の成り立ちが書いてあるね」
小さいおっさん「そうなんか! こりゃ勉強のし甲斐がありそうやで! 革命や!」
小さいおっさん「おおきにな、お嬢ちゃん! ほれ、お菓子でも食べぇや!」
南雲チハル「あ! それ、うちの?」
小さいおっさん「は! しもた!」
南雲チハル「まったく。砂糖やらコーヒーやら、やたら減るのが早いと思ってたのよ」
南雲チハル「欲しいものがあったら、ちゃんと言いなさいよ!」
小さいおっさん「お嬢ちゃんには敵わんわ!」
小さいおっさん「ノートにはあんなに乙女なことを書き綴ってるのに、イメージちゃうなぁ」
金丸ミチオ「ノート?」
南雲チハル「・・・・・・」
小さいおっさん「せやで。お嬢ちゃん、白馬の王子様やら、星のティアラやら、どえらいポエム書くんや」
南雲チハル「あの箱開けたの、あんたね・・・?」
小さいおっさん「あの甘いポエムは、糖尿が心配なおっさんには辛いで。他にもな・・・」
南雲チハル「・・・おっさん、余計なことを・・・!」
金丸ミチオ「チハルさん、落ち着いて!」
南雲チハル「余計なことを、ベラベラ喋りやがってェェッ!」
  チハルはミチオの制止を振り切ると、おっさんを両手で雑巾のように絞り上げた。
小さいおっさん「グ、グェェェ!」

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