第22話 夏だ! 海だ! 肝試しだ!③(脚本)
〇遊園地の広場
高原みこ「この子はうしみっちゃん! なんと、本物の幽霊でーす!」
アテナ「・・・幽霊? まさか、ありえない」
アテナが目に見えないレーダーで周囲をスキャンする。
アテナ「スキャン完了。御主人(マスター)以外の生体反応、なし・・・」
高原みこ「ねー!? 幽霊でしょ! この遊園地も、うしみっちゃんが──」
アテナ「不可解です。 あり得ないことが起こっている」
アテナ「とにかくここから今すぐ出ましょう、御主人(マスター)」
丑三崇「ダメだよ! お姉ちゃんはずっとここにいるの!」
アテナ「駄目かどうかは、貴方が決めることではありません。手を離しなさい」
丑三崇「イヤだ! お姉ちゃんは僕と遊ぶんだから!」
高原みこ「どーどー! 二人とも落ち着いて」
アテナ「ですが」
高原みこ「まずは、みんなで遊ぼうよ! せっかく3人になったんだもん!」
丑三崇「ええ~」
アテナ「御主人(マスター)、わがままを言わないでください」
高原みこ「アテナこそ、わがまま言わないでくださ~い! ほらほら行くよ!」
アテナ「はぁ・・・夜が明けるまでですよ」
〇海辺
木藤健一「こっちには誰もいませんでした」
高原小太郎「ぼくも見つけられなかった」
嘉成光「どこにもいないなんて・・・まさか海に?」
木藤健一「僕が、海の中にいる高原さんを引き上げます!」
高原小太郎「えっ、姉ちゃんって海にいるの!?」
木藤健一「ウンターラ、カンターラ、ガンダーラ・・・」
嘉成光「ちょちょ! 木藤くん、ストップ!」
木藤健一「ホワァタア──ッ!!」
木藤が奇声を発した瞬間、海面から飛び出した大量のワカメが光を襲う。
嘉成光「うわぁあっ! だと思った!!」
木藤健一「これは・・・!」
嘉成光「え? な、なに?」
光を襲ったワカメの山は矢印を形作り、山奥の方角を指していた。
高原小太郎「この矢印・・・遊園地を指してる?」
〇観覧車のゴンドラ
高原みこ「わ~! アテナ、海まで見えるよ!」
アテナ「ええ、そうですね」
高原みこ「ほら、うしみっちゃんも! 海好きでしょ?」
丑三崇「え?」
高原みこ「昼間、海にいたじゃん!」
丑三崇「・・・海なんか好きじゃないよ。 お姉ちゃんたちを見てたの」
高原みこ「私たちを?」
丑三崇「僕も前は友達と遊んでたから。 幽霊になる前・・・病気になるまでは」
高原みこ「・・・うしみっちゃん」
丑三崇「でも平気だよ! お姉ちゃんが、幽霊の僕と友達になってくれたんだもん!」
〇遊園地の広場
東の空に、ぼんやりと太陽の陽射しが差し込む。
アテナ「御主人(マスター)、朝が来ます。 帰りましょう」
ぐぅ~
高原みこ「うん! そろそろ朝ご飯だしね」
丑三崇「えっ、帰っちゃうの? ダメだよ!」
高原みこ「ん? うしみっちゃんも一緒に食べようよ」
丑三崇「イヤだよ! 日が昇るまでここから出ないで!」
アテナ「・・・?」
丑三崇「お姉ちゃんは、僕を選んでくれたんじゃないの?」
高原みこ「ん?」
丑三崇「ここにいてくれるって・・・ずっと一緒に遊ぶって約束したよね?」
アテナ「こんな所に、いつまでもいられるはずがないでしょう」
丑三崇「そんなことない!」
丑三崇「ここにいれば、ずっと遊園地で遊べるんだよ。宿題だってない!」
高原みこ「うんうん、それはいいよね~」
アテナ「御主人(マスター)、真面目に考えてください」
高原みこ「え? まじめに考えてるけど?」
アテナ「はあ・・・」
アテナ「この遊園地は彼の見せる夢の世界。日が昇るまでにここを出なければ、元の世界に戻れなくなるのではないですか?」
高原みこ「え・・・そうなの?」
丑三崇「・・・・・・」
アテナ「否定しません。 つまり私の推測が当たったのでしょう」
高原みこ「戻れないのか・・・」
丑三崇「・・・約束したのに」
アテナ「御主人(マスター)、よく考えてください。永遠にここにいたいわけではないでしょう?」
高原みこ「う~~~ん!」
丑三崇「イヤだよ! 帰っちゃうなんて、絶対にヤだ!」
丑三崇「せっかく友達ができたと思ったのに・・・ひとりぼっちじゃなくなったと思ったのに!」
高原みこ「私、ずっと友達だよ?」
丑三崇「でも帰っちゃうんでしょ? 一緒にいてくれないなら、またひとりぼっちだよ」
高原みこ「うしみっちゃん・・・」
みこが呟き、崇の手を取ろうとする。
アテナ「御主人(マスター)、行かないでください!」
高原みこ「だって泣いてるのに、ほっとけないよ!」
アテナ「貴方がそちらを選べば、大勢の人が泣きますよ!」
高原みこ「え・・・?」
アテナ「私も──」
光の声「みこちゃーん! どこー?」
小太郎の声「もしかして、遊園地の中まで入っちゃったのかな~?」
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