消える探偵

ゆきんこ

消える探偵 中編 (脚本)

消える探偵

ゆきんこ

今すぐ読む

消える探偵
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇警察署のロビー
霧子(きりこ)「あの男の子が私を指名して、話しをしたいなんて」
霧子(きりこ)「新、どうしたらいい?」
新(あらた)「とりあえず相手は子供だから、優しい話し方で、できるだけ話を聞いてあげて」
新(あらた)「責めたり、話しを遮らないで、相手に安心感を与えてもらいたいんだ」
霧子(きりこ)「わ、私なんかに、そんな大役・・・ 消えてしまいたい・・・!」
「き、霧子!ホントに消えかけてる!!」
霧子(きりこ)「ウソ!?透明になっていた?」
霧子(きりこ)「一族の中で、私だけが自由に透明になれない、出来損ない・・・」
霧子(きりこ)「消えられるなら、ホントに消えて無くなりたいよ」
新(あらた)「霧子は、出来損ないなんかじゃないよ!」
新(あらた)「俺は霧子のこと、信じているよ。 頑張ってきて!」
新(あらた)「俺は、警部補と隣の部屋に居るからね!」
霧子(きりこ)「新・・・ありがとう!元気出た」
霧子(きりこ)「行ってくるね!」

〇綺麗な会議室
瑛人(えいと)「お姉ちゃん!」
由佳(ゆか)「一体、うちの子供とどういう関係なんですか!?」
由佳(ゆか)「あのとき、奈々まで懐いていたようだし・・・」
霧子(きりこ)「なんか、お母さんの雰囲気が怖い・・・」
霧子(きりこ)「でも、やらなきゃ!」
霧子(きりこ)「瑛人くん、お姉ちゃん、何でも聞くから、お話ししてみて・・・」
瑛人(えいと)「スイート♥ミントって、全話観た!?」
瑛人(えいと)「俺は3話目が大好き!全部面白いけど、ダンゼン3話目!!」
霧子(きりこ)「ふふ、そうなんだ・・・」
霧子(きりこ)「えっ?どーしちゃったの、この子!」
瑛人(えいと)「あと、スイート♥ミントのエンディング曲も最高だよね!俺はサビ前のアタマ出しが好きすぎて、ヤバいんだ」
霧子(きりこ)「瑛人くん・・・!?」

〇ラジオの収録ブース
鮫島警部補(さめじま)「アニメの話がしたくて、わざわざ呼んだのか?」
鮫島警部補(さめじま)「ったく、子供はワケが分からんな」
新(あらた)「鮫島さんのとこは、お嬢さんでしたっけ?」
鮫島警部補(さめじま)「うむ。だんだん、お父さんヤダって言われるから、あまり一緒にお風呂にも入らなくなって・・・」
鮫島警部補(さめじま)「って、オイ!関係ないだろ」
新(あらた)「えっ!?」
新(あらた)「いまあの子、俺が手首を捨てたって言った?」
鮫島警部補(さめじま)「自白しただと!?児相に連絡だ!!」

〇黒
  瑛人くんは自白はしたが、
  誰の手首なのか、どうして捨てたのかは言わなかった。
  私は瑛人くんがどうして私と話したかったのか、
  全く分からなかった。

〇スーパーの店内
霧子(きりこ)「新、巡回お疲れさま!」
新(あらた)「制服が巡回するだけでも、万引きの抑止力になるからね」
霧子(きりこ)「あの・・・瑛人くんの事件、どうなった?」
新(あらた)「霧子が気にしてるんじゃないかと思って、新しい情報を持ってきたよ」
霧子(きりこ)「一般人に機密を漏らすなんて、駄目な警察官ね・・・」
新(あらた)「あの手首、どうやら同居していたお母さんの妹さんの遺体の一部みたいなんだ」
霧子(きりこ)「えっ?」
新(あらた)「妹さんは火事で去年、亡くなっている。なのに手首だけを瑛人くんが、持っていたんだ」
新(あらた)「今のところは死体の一部遺棄の自白だけだから、送致された児童養護施設に一時保護されているけど、」
新(あらた)「14才以下だし、事件性が無ければ、保護観察ついて家庭に返されるんじゃないかな」
新(あらた)「立ち話で話す内容じゃないけどね」
霧子(きりこ)「・・・あのさ」
霧子(きりこ)「今日、8:30上がりなんだけど、一緒に夜ご飯食べながら話さない?」
新(あらた)「オッケー。それくらいの時間に私服で迎えに来るよ。じゃ!」
霧子(きりこ)「やってしまった」
霧子(きりこ)「勢いとはいえ、」
霧子(きりこ)「人生で初めて男性をゴハンに誘ってしまった!」
  我ながら大胆な行動に出たことが
  恥ずかしくて消えてしまいたかった。

〇ファミリーレストランの店内
霧子(きりこ)「新の私服、大学生みたいだね」
新(あらた)「警察官なんて、オフでもすぐに呼び出されるから、派手な服なんか持ってないよ」
霧子(きりこ)「まあ、新らしいというか、変わってないなと思っただけだよ」
霧子(きりこ)「なんか、緊張しなくていいからホッとするな」
新(あらた)「ちぇっ、馬鹿にするなよな」
新(あらた)「それより、瑛人くんのことだけど」
新(あらた)「複雑な家庭環境なんだ」
新(あらた)「瑛人くんのお母さん、鈴木由佳は奈々ちゃんを産んだあと、シングルマザーになった」
新(あらた)「そのあと、妹の田中ゆりか、誠夫妻と同居している」
霧子(きりこ)「経済的な事情で同居したのかしら?」
新(あらた)「でも、ゆりかは去年、火事で亡くなっている。原因は石油ストーブの異常加熱とされているけど、詳細は不明だ」
新(あらた)「そして、今年の初めに、由佳は誠と籍を入れているんだ」
霧子(きりこ)「瑛人君にとっては、叔母さんが亡くなったと思ったら、一緒に暮らしていた叔父さんが、突然お父さんになったのか──」
霧子(きりこ)「自分なら、しんどいな」
霧子(きりこ)「そういえば、奈々ちゃんも家に帰りたくなさそうだったわ」
霧子(きりこ)「それにしても不思議ね」
霧子(きりこ)「瑛人くんは、何故亡くなった叔母さんの手首を缶に入れて、リサイクルボックスに捨てたのかしら?」
新(あらた)「俺の推理では、」
新(あらた)「ああいうお菓子の缶って、子供の時は特別な宝物を入れていなかった?」
新(あらた)「瑛人くんは叔母さんのことが好きで、忘れたくないから缶にしまっていたとか?」
霧子(きりこ)「だとすると、火事で焼ける前に叔母さんの手首を切り落とさなきゃならないわよ」
新(あらた)「──うっ! 新は50のダメージをくらった!」
霧子(きりこ)「しかも小学生が親に気づかれないで、そんなことできるかな?」
新(あらた)「──ううっ! 新、ダメージ100・・・!」
新(あらた)「そっかあ・・・」
霧子(きりこ)「新は探偵には向いてないと思うわ」
新(あらた)「それで、本題なんだけど、鮫島警部補が霧子のこと、まだ疑ってるんだ」
霧子(きりこ)「なな、何で?」
新(あらた)「そりゃあ、霧子が挙動不審だからだろう?」
霧子(きりこ)「私の能力、分かってるくせに、からかわないでよ!」
新(あらた)「冗談じゃなく、俺が特別任務として、霧子の監視を命じられているんだ」
霧子(きりこ)「目立たず、細く長く生きていく、雑草のような私の人生設計が──」
霧子(きりこ)「消えたい・・・」
新(あらた)「待って、消えないで!」
新(あらた)「俺は霧子の味方だよ!」
新(あらた)「俺が捜査して、ゼッタイに霧子の疑いを晴らすから!」
霧子(きりこ)「新・・・私のために・・・」
新(あらた)「霧子も、協力してくれ!」
霧子(きりこ)「私も?」
新(あらた)「言っただろう?霧子の能力は警察官に向いてるって」
霧子(きりこ)「そこは俺に任せておけ、じゃないんかーい」
霧子(きりこ)「ちょっとでもキュンとした私の馬鹿!」

〇高級マンションの一室
霧子(きりこ)「あ、スイート♥ミントだ。 朝は再放送なんだよね」
霧子(きりこ)「そういえば、瑛人くん3話目が好きって言ってたけど、どういう話だったかな?」
霧子(きりこ)「録画消してなかったら見れるな・・・ あった!」
霧子(きりこ)「・・・・・・」
霧子(きりこ)「主人公ミントのお母さんに、怪人が入れ替わっちゃう話か・・・」
霧子(きりこ)「あと、エンディング曲のサビの歌詞・・・ 書いてみよう」
  心はロンリー・ハート。さあ、決戦よレッツゴー!大冒険のはじまり!
霧子(きりこ)「この歌詞の頭出しって何?最近の若い子はよく分からない言葉使うよね」
霧子(きりこ)「心は ロンリー・ハート さあ決戦よ レッツゴー! 大冒険の始まり!」
  リズムに合わせて歌って、私は青ざめた。
霧子(きりこ)「まさか、瑛人くんが伝えたかったのは、コレなの・・・!?」

〇黒
  後編に続く

次のエピソード:消える探偵 後編

コメント

  • 霧子ちゃんや新くんが、自然体の可愛さでほっこりします。恋愛に奥手でピュアというか、、、
    重たい事件内容との対比が楽しめます!

  • 面白くて一気に読んでしまいました。
    凄惨な事件のようなのに、ストーリーも重たくなく引き込まれました。後編も楽しみになりますね。

成分キーワード

ページTOPへ