オネエ系マンガ家、無表情系編集者に初恋されてます!

あいざわあつこ

第6話 オネエ、ままならない(脚本)

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〇おしゃれな玄関
  ガチャガチャと乱暴にドアノブを回して、
  そのまま部屋へと転がり込むように入り
  玄関に突っ伏した。
柊「おああああああ・・・。 ない、ないわぁあ・・・」
  冷たい玄関のフローリングに、
  じわじわと熱を吸い取られ、
  どんどん冷静になっていく。
柊(やばい、せめてベッドに移動しよ)

〇本棚のある部屋
  これで風邪でもひいたら、
  本当にシャレにならないし、
  恥ずかしさここに極まれりだろう。
  ズルズルと体を引きずりながら、
  アタシはベッドまで移動して、
  そのままミノムシのように
  布団の中に潜り込んだ。
柊「・・・・・・」
柊(好き勝手ネガティブ撒き散らして、 拒否られたら拗ねて帰るとか)
柊(・・・え? アタシ、ゴミクズじゃない? 生きていてすみませんレベル)
  うぐ、とうめきながら、
  アタシは背中を丸めた。
柊(謝んなきゃなんないかしら。 ・・・でも)

〇居酒屋の座敷席
滝沢晶「特に、なんの感情もわきません。 総じて・・・」
滝沢晶「どうでもいい、です」

〇本棚のある部屋
柊(でも・・・いやだわ、謝りたくない)
  アタシのことが好きだって言ったのに。
  さすがに、アレはひどい。
柊(そうよ、アタシばっかりが 悪いわけじゃないわ)
  だけど、好きになれそうだったのに。
  結構、ときめくことができたのに。
  そのことだけが、すごく・・・。
柊(残念だわ。 これはお断りコースよね。 たぶん・・・)
  はあ、とため息を一つ。
柊「よしっ」
  わざと声に出して、起き上がる。
  体は重たいし、気持ちはしんどい。
  それでも、アタシはマンガ家なのだ。
柊(自分の機嫌くらい、自分でとらなきゃ。 もうアラサーなんだもの!)
  気合いを入れ直して、
  アタシはそのまま作業デスクへと
  向かったのだった。
柊(ゴールは・・・最終回は、 もうすぐそこなんだもの)

〇漫画家の仕事部屋
  ――数日後。
柊「・・・・・・」
  カリカリとペン先が紙をひっかいた。
  文字をいくつか描いては、
  消しゴムで消していく。
  これを、アタシはもう何百回となく
  繰り返し続けていた。
柊(ダメ、ぜんぜんまとまらない。 ・・・ラスト、どうしたらいいの?)
  物語はもう終盤。
  主人公がライバルであるヤクザと
  直接対決するシーン。
柊(あなたは、彼を殺すの? ・・・それとも、生かすの?)
  答えが出ずに、また描いては消す。
柊(どちらも流れ的にはおかしくない)
柊(でも、彼が実際の人間だったなら、 そんなかんたんに答えが出せること なんかじゃないもの・・・)
  だからこそ、自分も彼と一緒に、
  悩んで悩んで悩み抜くべきだ。
  ・・・悩みすぎて、頭が痛くなってくる。
柊(ハゲそう、つらぁい)
  と、不意にインターホンが鳴る。
  もうそんな時間なのか。
  ・・・そろそろ決めなくちゃ、ならない。
柊(・・・そういえば、 滝沢くんとのことも、 まだ宙に浮かせたままだったわ)
  そんなことを考えているうちに、
  ドアノブが回って彼が入ってくる。
滝沢晶「・・・お疲れさまです」
柊「・・・! お、お疲れさま」
  入ってきた滝沢くんを見て面食らう。
  なぜか彼は疲れ切った顔をしていた。
柊(なんで、そっちがそんな顔!?)
  そういえば、こうして会うのは
  あのデート以来だ。
柊(メールも電話もなかったから 大丈夫だって勝手に思ってたけど、 実はそうでもなかったの?)
滝沢晶「あの・・・大丈夫ですか?」
柊「へ?」
滝沢晶「お仕事、詰まってますよね。 次作の草案も別の出版社と 詰めていると聞いて」
柊「あ、ああ。 まあ、そうね、ありがたいことに多忙よ」
滝沢晶「心配です。 ・・・最終回もまだ決めかねて いるようだったので」
柊「・・・・・・」
  自分だって疲れていそうなのに、
  気遣うような彼の視線に、
  何故か胸にモヤが広がる。
柊(アタシのこと、 どうでもいいって言ったくせに)
  自分でも子供じみていると思うが、
  それでも衝動を止められず、
  思わずイヤミが口をついてでる。
柊「アタシのこと、 どうでもよかったんじゃないの?」
滝沢晶「へ?」
柊「そう言ったじゃない」
滝沢晶「あれは・・・。 ああ、はい。言いましたね」
柊「だったら」
滝沢晶「あれは、あなたの過去が どうでもいいってだけです」
滝沢晶「今のあなたが好きだから。 だから、俺には関係ないんです」
柊「・・・っ」
  悪びれもせず言われた言葉に戸惑う。
  だけど、一度頑なになった心は、
  そんなに急に態度を変えられず・・・。
柊「じゃあ、カレシ、だから? お試しとはいえ。 だから、アタシをかまってくれるの?」
  自分でも嫌なやつだと思う。
  まるきり、試し行動だ。
  こんなの、恥ずかしいって
  わかってるのに。
滝沢晶「いいえ」
柊「え?」
滝沢晶「俺は、あなたの担当編集だから」
柊「!」
滝沢晶「編集は、マンガ家のために 存在しているので」
  まっすぐに見つめられて、
  思わず言葉に詰まった。
柊「・・・・・・」
柊「はぁ〜あ・・・。 もうほんっと、アタシってバカっ!」
滝沢晶「なっ!?」

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