オネエ系マンガ家、無表情系編集者に初恋されてます!

あいざわあつこ

第2話 オネエ、翻弄される(脚本)

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〇漫画家の仕事部屋
柊「え、えええええええええ!?」
滝沢晶「うるさっ」
柊「んむっ」
  慌てて口を手で抑える。
柊「ご、ごめんなさい」
滝沢晶「いえ、別に耳元じゃなきゃ 構いませんけど。 ここ、俺の家じゃないですし」
柊「え、でも、待って・・・? え? ええええ・・・?」
  心臓がバクバクと脈打ち、
  頬に血が集まっていく。
柊(待って、待って待って。 この子、アタシのこと、好きって・・・。 す、好きってぇ〜・・・!)
滝沢晶「なんです?」
  平然と、首を傾げてみせる彼に、
  アタシは、おそるおそる訊ねてみる。
柊「あ、アンタ・・・コッチ、なの?」
滝沢晶「コッチ、とは?」
柊「だから、コッチ!」
滝沢晶「はて、どちらで?」
柊「〜〜っっ! コッチはコッチ、よ!」
滝沢晶「はあ・・・コッチ? わかりませんけど、じゃあソッチ、で」
柊「意味分かんないこと言わないで!」
滝沢晶「鬼橋先生こそ意味わかんないんですが」
  キョトン顔で見つめられ、
  思わず唸ってしまう。
  なにせ、顔がいいので腹が立つ。
柊「だから! ゲイかって聞いてんの! アタシのこと好きなんでしょ!?」
  やけっぱちになって叫ぶ。
滝沢晶「えっと」
柊「気持ちは嬉しいわ! 嬉しいけど、ごめんなさい!」
柊「アタシ、アンタのこと好みじゃないの! イケメンだとは思うんだけど!」
滝沢晶「あの」
柊「だから、悪いけど付き合えないわ!」
滝沢晶「つきあ・・・? いえ、付き合っていただかなくて 大丈夫ですが」
柊「気持ちが伝えられれば、 それでいい系ってこと?」
柊「わからないでもないけど、 アンタ・・・若いんだからもっと欲張って」
滝沢晶「あ、違います」
柊「え、何よそれ」
滝沢晶「俺、先生のこと好きですけど、 そういうんじゃないんで」
柊「へ?」
滝沢晶「好きですけど、そういう好きじゃないです」
滝沢晶「っていうか、恋愛とか、そういう意味で 人を好きになったこと無いんで、 俺・・・わかんないですけど」
柊「え、それってつまり?」
滝沢晶「人として好き、ってやつですね」
  その一言で、みるみる体から力が抜ける。
柊「んもぅ・・・何よぉ、それぇ」
  顔を覆って、机に突っ伏す。
  もうやだ、この子の顔を
  二度と直視できない気がする。
柊(アタシ、告られてもないのに、 フッたってこと? 痛いっ! アイタタタ)
柊「うあ、あああ・・・」
滝沢晶「あ・・・ もうこんな時間ですね」
柊「え・・・あ、ほんと」
滝沢晶「俺、原稿持っていかないとならないんで。 編集長、待ってますから」
柊「あっ、ちょっ・・・」
  思わず呼び止めようとして、
  思いとどまる。
柊(いや、何を話す気なのよ)
滝沢晶「それじゃ、また」
  それだけ言って、さっそうと立ち去る
  滝沢くんの背に視線を向ける。
  そして、完全に視界から消え去ったのを
  確認したあとでアタシは
  大きく息を吐いた。
柊「次からどんな顔して会えばいいのよぉ」

〇漫画家の仕事部屋
柊(なーんてこの間は思いましたけど。 案外普通だわ)
滝沢晶「先生、次はこっちにサインお願いします。 結構、数あるんですけど・・・すみません」
  ドサッと机の上に本の山を積まれる。
  すべて、今度出る新刊で、
  真新しい本の香りがした。
柊「はいはーい。 別に謝んなくていいわ。 だって、これも仕事の一環だもの」
柊(そう、仕事。 アタシと滝沢くんが如何に気まずく なろうとも、)
柊(仕事である以上は普通に接して くれるわよね)
  一冊、手にとって表紙にペンを走らせる。
  ランダムでたまには小さな絵を
  つけたりしながら、
  ただただサインを描き続けた。
柊(はー、ほんっと杞憂でよかったわ。 アタシったら心配性さんっ♪)
柊「・・・よし、これが最後の一冊ね。 んふふ、せっかくだから銀次を 書いちゃおっと」
滝沢晶「あの・・・」
柊「ああ、平気よ、へーき。 他とおっきく差ができないように、 ラフに仕上げるから〜」
滝沢晶「いえ、そうじゃなくって」
  顔に影が差して、
  思わず滝沢くんを見上げる。
  すると、彼はやたらと長いまつげを
  伏せてアタシを見つめていた。
柊「なに? どした――の?」
滝沢晶「・・・・・・」
  ぎゅっと抱きしめられて、
  思わず思考が停止する。
柊「???」
柊(え、なにこれ)
  久しぶりの誰かの体温と、重み。
  一拍して、だんだんと何が起きたのか
  理解できると、今度は脈が上がった。
柊(アタシ、今、抱きしめられてる? 滝沢くんに・・・?)
滝沢晶「あの、先生・・・」
柊「は、はい?」
  思わず声が裏返ってしまう。
滝沢晶「やっぱり、俺、先生のことが 好きだったみたいです」
柊「・・・す、き?」
滝沢晶「はい」
柊「や、だから、それは人としてね? うん、この間も聞いたわ」

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