第21話 夏だ! 海だ! 肝試しだ!②(脚本)
〇旅館の和室
夜も更けた頃。みこたち一行は民宿『りぞおと』の客室で雑魚寝していた。
丑三崇「お姉ちゃん、ねえ、起きて」
高原みこ「ん・・・? うしみっちゃん?」
丑三崇「うん、僕だよ」
高原みこ「ふああ~、さっきは急にいなくなっちゃったから、びっくりしたよ」
丑三崇「ごめんね。ちょっと用事があったんだ」
高原みこ「んっ? まだ夜じゃん! 寝よ」
丑三崇「ダメダメ! お姉ちゃん、遊ぼうよ!」
高原みこ「むにゃ・・・これから?」
丑三崇「うん、いいところに連れてってあげる」
〇けもの道
高原みこ「うしみっちゃん、いいところってどこ? 森の中にあるの?」
丑三崇「ふふふ、着いてからのお楽しみ!」
高原みこ「でっかいプールかな? それともでっかいお城?」
丑三崇「ううん、どっちもはずれ!」
崇が森の奥へと走り出す。
高原みこ「あっ、待って、うしみっちゃん!」
崇に向かって差し出したみこの手は、崇の体をスルリとすり抜けた。
高原みこ「えっ!?」
丑三崇「・・・っ」
高原みこ「もしかしてうしみっちゃんって幽霊なの!?」
丑三崇「・・・・・・」
丑三崇「うん・・・」
高原みこ「こちょこちょこちょ~!」
丑三崇「!?」
高原みこ「あはは! 全然きかない~! 本物だ!」
丑三崇「僕のこと、怖くないの?」
高原みこ「なんで? 幽霊の友達なんて、初めてだよ!」
丑三崇「友達・・・」
丑三崇「お姉ちゃん、早く来て! もっと驚かせてあげる!」
〇荒廃した遊園地
夜の帳が下りた廃墟の遊園地。
二人がその入口のゲートをくぐり抜けた途端、園内に明かりが灯された。
〇遊園地の広場
壊れていたはずのアトラクションが動き始め、色とりどりにライトアップされる。
高原みこ「おわあ~!!? なんで!? 急にギラギラだー!」
丑三崇「僕の力だよ。お姉ちゃん驚いた?」
高原みこ「うんうん! うしみっちゃん、てんさ~い!」
丑三崇「えへへ! ありがとう」
高原みこ「寝てるみんなも、呼んで来ればよかったなー!」
丑三崇「・・・ダメだよ、そんなの」
崇が呟いて、みこの手を取った。
高原みこ「うしみっちゃんにもさわれる!」
丑三崇「今日からここは、僕とお姉ちゃんの遊園地だからね!」
高原みこ「私も? やったぁ!」
〇旅館の和室
その頃。客室で横になっていたアテナは、ゆっくりと目を開いた。
隣で眠っていたはずのみこの姿がない。
アテナ「・・・御主人(マスター)?」
〇遊園地の広場
手を繋いだ二人が、ジェットコースターのゲートから降りてきた。
高原みこ「あっはっは~! 楽し~い!」
丑三崇「まだまだだよ、お姉ちゃん。 乗り物全部、一緒に乗るんだから!」
高原みこ「わかってるって! 次行くぞー!」
丑三崇「今度は、あれ!」
〇海辺
アテナ「ここにもいない。となると・・・」
アテナが見上げた先には、森の中にそびえ立つ寂れた観覧車があった。
〇遊園地の広場
七色に輝きながら回転するメリーゴーランドに揺られる二人。
そのとき、夜空にパンッと鮮やかな打ち上げ花火が上がった。
高原みこ「うわあ~! これも、うしみっちゃんが?」
丑三崇「うん! すごいでしょ」
高原みこ「幽霊って、何でもできるんだね!」
丑三崇「なんでもってわけじゃ・・・」
高原みこ「見て! でっかいのが上がったよ!」
丑三崇「花火ってこんなにきれいだったんだ・・・一人で見てる時は気づかなかったよ」
高原みこ「えっ、一人?」
丑三崇「・・・僕、幽霊だから誰も友達になってくれないんだ。だから、お姉ちゃんが僕の初めての友達なの」
高原みこ「えー!? 私だったら、幽霊の友達なんて自慢しちゃうのに」
丑三崇「お姉ちゃん・・・」
高原みこ「これからは私と一緒にいっぱい遊んで、綺麗な花火見ようね!」
みこは崇の前に小指を差し出す。
高原みこ「ね、約束!」
丑三崇「うん・・・約束!」
そう言って、二人は笑い合いながら指切りをした。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)