ハツラツ部長と狼くんの、にゃんだふるでぃ!(脚本)
〇理科室
ー理科室ー
〇理科室
橘 理花(たちばな りか)「諸君!! 今日も元気か!!」
橘 理花(たちばな りか)「突然だが、今日はみんなに重大発表がある!」
部員達がガヤガヤし出す。
私は一旦ストップをかけた。
橘 理花(たちばな りか)「じゃあ、早速だが言うぞ! 実は私・・・」
橘 理花(たちばな りか)「『猫になれる薬』を開発したのだー!」
みんなは驚いた様子で、拍手をしたり、口々に何か言ったりしている。
橘 理花(たちばな りか)「じゃあ、早速飲んでみるぞ!」
そう言った時には、もう、騒ぎは落ち着いていた。
制服のポケットから、薬を取り出す。
それを、水と一緒に含んだ。
「(部員一同) せ、先輩・・・?」
橘 理花(たちばな りか)《猫》「ニャンと!? 本当に成功したニャン!」
静まり返っていた空気が、一気に解けて、歓声が溢れ出た。
もう、理科室が壊れそうなくらい。
橘 理花(たちばな りか)《猫》(にゃっふふ〜 今がチャンスニャ!)
私は、事前に用意していた『ある紙』を副部長に渡した。
みんなは一斉に副部長の周りに集まる。
大声で紙に書いている内容を話し始めた。
私、ちょっくら外へ出かけてくるね♪
猫の気分を味わってくるのじゃ〜
みんなはさらに驚く。
その隙に私は、開けていた窓から飛び出した。
橘 理花(たちばな りか)《猫》(またニャ〜♪)
〇学校沿いの道
橘 理花(たちばな りか)《猫》「ふっふっふ〜 今頃みんな、慌てているだろうニャ〜♪」
私は、呑気に鼻歌を歌いながら、色んな場所を歩いた。
〇駅前ロータリー(駅名無し)
学校から近い駅に、
〇ボロい駄菓子屋
私が大好きで、毎日行っている駄菓子屋。
〇大学病院
おっきな病院に、
〇広い公園
子どもからお年寄りまで、たくさんの人が集まる公園。
〇住宅街の道
などなどを、気の向くままに行った。
なかなか新鮮な光景だ。
色んな発見ができて、楽しい。
だけど、やっぱり、疲れるもので・・・
〇住宅街の道
橘 理花(たちばな りか)《猫》「ニャァ〜・・・ 視界が低くて、なかなか慣れないニャ」
だんだんと足取りが重くなる。
橘 理花(たちばな りか)《猫》「猫さん、毎日大変だニャァ」
橘 理花(たちばな りか)《猫》(あともうちょっとで、この姿も終わりかなぁ〜)
最後に公園へ行こうと、歩き始めた。
その時──
ヴヷン!ヴヷン!
橘 理花(たちばな りか)《猫》「ニ゙ャ!?」
なんと、向こうから、鬼のような形相をした犬が、猛スピードでこっちへ来た。
橘 理花(たちばな りか)《猫》「ギニャァァァ!!」
この体に慣れていない私が、全速力で走ったところで、相手に敵わないことは分かっていた。
〇住宅街の道
橘 理花(たちばな りか)《猫》「やっぱりこうなったニャァ・・・」
私の2倍以上は大きい犬。
すると、急に犬が片足を上げてきた。
橘 理花(たちばな りか)《猫》(ニャフ・・・!? もしかして、殴られる!?)
怖くて、ギュッと目をつぶる。
ところが、犬は殴るなんてことはしなかった。むしろ、優しく頭をポンポンと叩いた。
橘 理花(たちばな りか)《猫》「ニャ・・・?」
「おい、バウ!」
声のするほうを見上げてみると、そこには、しかめっ面をした男の人がいた。
バウ「バウ!バウ!」
犬は私を庇うようにして、目の前に座り、吠えていた。
橘 理花(たちばな りか)《猫》(もしかして、私のことを心配してくれてる?)
橘 理花(たちばな りか)《猫》(しかも、この男の人見たことあるような・・・)
すると、男の人がこちらへ近づいてきた。
謎の男「バウが唸っていないってことは、この猫、どっか調子が悪いのか?」
眉をひそめ、ゆっくりとしゃがみこむ。
謎の男「大丈夫か? どこか痛むのか・・・?」
頭や首元を、優しく柔らかに撫でる。
橘 理花(たちばな りか)《猫》(え、なんか、すんごく気持ちいい・・・)
そのしなやかな手つきから、このようなことに、とても手馴れているような気がした。
謎の男「にしても、この猫の毛並み、きれいだな。 もっふもふ」
口元が緩み、顔がほころんでいる。
柔和な笑みに、私の胸はドキドキしていた。
橘 理花(たちばな りか)《猫》「――って、あ! そろそろ変身が解ける時間だ!」
橘 理花(たちばな りか)《猫》「それに、鼻がムズムズする!」
橘 理花(たちばな りか)《猫》「ハッ・・・ハッ・・・・・・」
橘 理花(たちばな りか)《猫》「八クション!!」
謎の男「うわっ!」
くしゃみをしたのと同時に、私は変身が解けてしまった。
「あぁっ!!」
橘 理花(たちばな りか)「解けてしまった・・・」
橘 理花(たちばな りか)「ん?やっぱり、君は・・・」
橘 理花(たちばな りか)「同じクラスの、大雅くんではないか!!」
宮原 大雅(みやはら たいが)「は!?なんでお前がここに・・・」
大雅は、「チッ」と舌打ちをする。
犬は、笑顔でしっぽを振っている。
宮原 大雅(みやはら たいが)「つか、お前・・・ さっきの俺見てたか?」
大雅は、眉をしかめて、怒った顔をする。
だが、私は全然怖くなかった。
なぜなら──
彼の耳が真っ赤っかだったから!
橘 理花(たちばな りか)「まさか、『孤高の一匹狼』と呼ばれている君が、動物に優しくて、それに笑顔でかわいがっていて・・・ビックリだよ!」
宮原 大雅(みやはら たいが)「うっ、うるせぇ!細かく解説すんな!」
橘 理花(たちばな りか)「あ、そう言えば、君って部活入ってないよね それを機に──」
宮原 大雅(みやはら たいが)「入らねぇーよ」
橘 理花(たちばな りか)「えっ!なんでさ!! 勉強の成績も、運動神経も抜群な──」
宮原 大雅(みやはら たいが)「愛犬といる時間を少しでも増やしたいから」
〇住宅街の道
宮原 大雅(みやはら たいが)「俺が産まれた時から、バウとは一緒なんだ」
宮原 大雅(みやはら たいが)「だから、バウとはたくさんの感情を共にしてきた」
宮原 大雅(みやはら たいが)「だからこそ、俺はいつ死ぬか分からない、限りある時間を、少しでも多く過ごしたいんだ」
普段なら全然笑わない大雅が、今は照れくさそうに笑っていた。
宮原 大雅(みやはら たいが)「バウも、そうであったら嬉しい」
頭を撫でると、「バウ!」と明るく答えた。
橘 理花(たちばな りか)「ふふっ・・・あははは!!」
宮原 大雅(みやはら たいが)「なっ、何笑ってんだよ!」
橘 理花(たちばな りか)「いやぁー・・・大雅くん、根っからはいいやつじゃん」
宮原 大雅(みやはら たいが)「そんなこと、俺に言うな 全然いいやつじゃない」
宮原 大雅(みやはら たいが)「とっ、とにかく!このことは絶対に誰にも話すなよ!俺たちだけの秘密だ!」
顔を真っ赤にし、「恥ずかしいから」と、小声でボソボソ言った。
橘 理花(たちばな りか)「言わない言わない!」
橘 理花(たちばな りか)「実験以上に、面白いことを知れたのじゃ!満足満足〜♪」
ギャップ萌えを堪能できた、ニャンダブルな日となった。
おわり♪
私ならこの薬で猫になれたら、他の猫達と話がしたいです。猫は本当に魅力的な動物だと思います。目線をかえて姿をかえて見ることのできる光景や秘密!とても効果的な変身でした。
動物好きな人悪い人はいませんよね。猫って、毎日お気楽そうに見えるけど、犬におっかけられたり案外大変なのかもなぁと猫の気持ちになってみたり、猫好きにはたまらない妄想を楽しみました。
猫も猫なりに大変ですよね。
でも、彼の隠された顔を見られたのは収穫ですね。笑
動物には優しい彼が、いつか人間にも優しくなれる日も来るんでしょう。