雄馬町の怪

平家星

#8 ナリーポンの実②(脚本)

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〇田舎の学校
  チハルが目撃したのは、奇妙な木の虜となっていたショウマ・・・。
  光星中学校では、そのショウマのことが、何やら話題になっている模様・・・。

〇教室の外
  ミチオとナオキは、校舎から出てくる他の生徒たちを見ていた。
金丸ミチオ「みんな、話してるね・・・ショウマの停学」
浦上ナオキ「はい。うちのクラスでも、もちきりでした」
浦上ナオキ「・・・退院して早々、お酒を万引きするなんて、驚きましたね」
金丸ミチオ「あいつ感じ悪いけど、そういうことをするタイプではないと思ってた・・・」
金丸ミチオ「・・・ん?」
  ミチオが目を凝らすと、学校の敷地外に、女子生徒が立っているのが見えた。
南雲チハル「あんたたち! ちょっと!」
金丸ミチオ「・・・うわっ。ストーカー姉さんだ」
浦上ナオキ「・・・無視です。無視しちゃいましょう」
南雲チハル「こっち来なさいよ! おい!」
金丸ミチオ「・・・頑張れナオキ。無視だ」
南雲チハル「入院してた、あんたたちの友達のことで話があるのよ! 聞けぇ!」

〇けもの道
  ミチオとナオキはチハルに連れられて、山道を歩いた。
南雲チハル「・・・ったく、何で無視するのよ」
金丸ミチオ「いや、いつもストーキングしてくるから、気味悪くて」
南雲チハル「あんたたち、池であの気持ち悪い魚、逃がしたでしょ?」
南雲チハル「私、この目で見てたんだから」
浦上ナオキ「お姉さん、疲れてたんですねぇ」
南雲チハル「ほら、ごまかす! ・・・もう、いいから黙ってついてきなさい」

〇山の展望台(鍵無し)
南雲チハル「ほら、見て! 普通じゃないでしょ?」
金丸ミチオ「何やってるんだ? あいつ」

〇山の展望台(鍵無し)
  やつれた表情のショウマが、木の根元に酒を注ぐ。
三上ショウマ「今日もいい天気だね・・・」
謎の実「・・・・・・」

〇山の展望台(鍵無し)
浦上ナオキ「ミチオくん、あの実!」
金丸ミチオ「!? ナオキ、あれって・・・」
浦上ナオキ「・・・はい。おそらく、UMA」
南雲チハル「この前もず~っと、あんな風に木の実に話しかけてたのよ」
金丸ミチオ「勝手にしろって言いたいところだけど・・・」
浦上ナオキ「ミチオくんは、放っておけないですよね?」
南雲チハル「なんとかしてあげてよ。 私は、怖いからここで見てるけど・・・」

〇山の展望台(鍵無し)
金丸ミチオ「ショウマ、何やってるんだ? 学校でも、みんな心配してたぞ」
浦上ナオキ「ショウマくん!」
三上ショウマ「・・・日に日に、美しい姿になっていくね・・・」
  ミチオのカバンの中で、くだんがもぞもぞと動く。
くだん「なにやら、妙な力が働いているみたいだな。この木の近くにいる限りは、木の虜ってわけか」
くだん「翻弄されるしかない人間は、滑稽なもんだ」
金丸ミチオ「強引にでも、引きはがすしかない」
浦上ナオキ「・・・そうみたいですねぇ」
  ミチオとナオキは、木から離そうとショウマの肩をつかんだ。
浦上ナオキ「ショウマくん、休んでないんでしょう? ちょっと、休憩しましょ」
三上ショウマ「何だお前ら! 俺に触るなぁッ!」
金丸ミチオ「ショウマ! 落ち着け!」
三上ショウマ「うるさいッ! ここは俺たちだけの場所なんだ! 帰れッ!」
金丸ミチオ「わかったから、少し話そう! な?」
  ショウマを木から無理やり離すと、彼はふらついて膝をついた。
三上ショウマ「・・・・・・」
浦上ナオキ「ショウマくん、大丈夫ですか!?」

〇二階建てアパート
  ミチオたちは、ふらふらのショウマを彼のアパートへと運んだ。

〇木造の一人部屋
  ショウマは布団から上体を起こして、おかゆを食べた。
南雲チハル「お味はいかが?」
三上ショウマ「・・・まあまあ」
南雲チハル「はぁ!? 可愛い年上女子に作ってもらって、贅沢の極みなんだからね!」
南雲チハル「噛まずに食べられる優しいおかゆを、噛み締めて食べろっ!」
  ナオキもおかゆを一口食べる。
浦上ナオキ「うん。ホントにまあまあですね」
南雲チハル「あんたには聞いてない!」
金丸ミチオ「ショウマ・・・急に倒れるから、びっくりしたよ」
浦上ナオキ「ごはんも、全然食べてなかったみたいですね」
三上ショウマ「・・・あの木に出会って、なぜか使命感を持ったんだ」
三上ショウマ「俺が世話をしなきゃならないって・・・」
金丸ミチオ「万引きしたのもそのせいか・・・今はどう? 落ち着いた?」
三上ショウマ「・・・ああ、心配かけて悪かったな」
金丸ミチオ「もう、行かない方がいいよ。 あの木は、何かおかしい」
南雲チハル「そうよ! 絶対行かないで」
南雲チハル「山からあんたを必死で下ろした、こっちの身にもなってよ」
浦上ナオキ「・・・チハルさんは、ほとんど見てただけですけどね」
  ミチオはふと仏壇を目に留めた。
金丸ミチオ「・・・・・・」
  仏壇には、若くして亡くなったショウマの母親の遺影があった。

〇田舎道
南雲チハル「あ~、もうこんな時間。塾、行かないと! ・・・ったく、変な中学生に構ったばっかりに」

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