第一部完結!タイツマンVSジーク・デーモン(脚本)
〇田舎の役場
『かんぱーい!』
〇役所のオフィス
遠藤「ほう。お前にそんな才能があったなんてな」
不敗郎「いやいや。もうただ必死だっただけですよ」
遠藤「俺んちにも来てくれよ。あの恰好してさ。うちの子も喜ぶんじゃねーか?知らんけど」
不敗郎「いや、だったら協力して下さいよ」
映見「以外とマイホームパパじゃないですかー。ちょっと憧れちゃうな。そういうの」
不敗郎「お、どうした反骨のジャーナリスト」
遠藤「子供と触れ合って母性目覚めちゃったか?違うか?」
不敗郎「聞いて下さいよ。こいつ俺が出るなり速攻舞台から降りたんですよ」
映見「だから怪人役もやったじゃない」
不敗郎「子供の穢れのない眼差しが怖いんですよ。無理。子育てなんて絶対無理」
映見「何よ!だったら試してみるか!」
遠藤「え?誰と何を試すんだ?」
映見「・・・」
不敗郎「・・・」
映見「ば、バカっ!死ねっ!お、男全員死ねっ!」
直「・・・」
映見「あ。直ちゃんだ。こんばんわ」
遠藤「ダメだぞ。子供は帰る時間だぞ」
直「タイツマンって何ですか」
直「名前変えろっていうからオニキングにしたんですけど」
直「てかオニキング自体どうかと思ってるんですけど!」
映見「み、見に来てくれてたんだ」
不敗郎「ゴメンね。ついその場のノリで盛り上がっちゃって」
直「ネーミングってクリエイターにとってかなり大事なんですけど。私、そこ譲ってオニキングでもいいって許可出したんですけど」
直「タイツマンって・・・」
映見「ゴメンね。悪ノリが過ぎたね」
不敗郎「心はジーク・デーモンだよ!マジで!」
直「プレイヤーなら、ちゃんとやって下さい。それじゃ」
不敗郎「・・・」
直「あとタイツパンチとか二度とやらないで下さい」
映見「うわー」
映見「むちゃくちゃ怒ってるわね」
〇スーパーマーケット
遠藤「あ~あ。せっかくの日曜だっていうのに意外とセールやってないのよね~。ママ困っちゃうわ~」
不敗郎「そんなあなたに朗報です!」
不敗郎「私は正義の味方、裏山戦士オニキング!」
不敗郎「そして日曜日は家計の味方、オニキング!」
不敗郎「さあ主婦の方々!私についてきたまえ!」
坪根さん「な、何かしら?」
春野さん「とりあえずついて行く?」
若置さん「それとも通報します?」
〇スーパーの店内
不敗郎「おのれ・・・新鮮野菜め。これでもくらえ」
不敗郎「オニキング!値引きパーンチ!」
不敗郎「30%オフだ・・・」
若置さん「キャーッ!素敵ー!こっちにもお願い!」
不敗郎「30%オフパーンチ!」
不敗郎「フッ、ポテサラにでもなるがいい・・・」
主婦ーズ「ねえ、このゴーヤにもお願い!」
主婦ーズ「キャベツにも!ナスにも!」
不敗郎「うおおおおーっ!」
春野さん「頑張って!今度は50%よ!」
不敗郎「ご、50?そ・・・それは・・・」
はるとくん「まけるなー!タイツマーン!」
春野さん「頑張ってー!タイツマーン!」
不敗郎「よーし・・・うおおおお・・・」
〇炎
不敗郎「50%オフ!タイツパーンチ!」
〇田舎の役場
『かんぱ~・・・』
〇役所のオフィス
直「・・・」
不敗郎「そ、その様子だともうご存じで」
直「50%オフパンチって何ですか?」
不敗郎「ま、まあまあ。みんな喜んでたわけだし」
遠藤「店長以外はな・・・」
〇備品倉庫
不敗郎「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすい」
〇役所のオフィス
映見「あんたら全っっ然反省してなかったのね」
遠藤「つい目先の宣伝効果につられて」
不敗郎「申し訳ない」
直「まただ。謝ったら済むと思ってる」
直「政治家みたい。謝って終り。あとは忘れるのを待てばいいですか」
遠藤「ははっ。痛い所つくな」
映見「よっ!NAO先生、やっつけちゃえ!」
直「政治はいつもクリエイターを殺すんです。どこまでいってもお役所は平平凡凡なマジョリティの味方なんです」
直「だからいつも後手後手のオワコン企画しか思いつかない」
直「それってぶっちゃけ超ダサくないですか」
映見「いいぞいいぞー!」
直「てかそもそもオニキングって私が考えたんですけど」
直「今はもう全然違う物体になってますけど、原案は原案でしょ」
直「これ以上作者の意向を無視するなら、使用禁止にしたっていいんですよ」
遠藤「ははーっ!それだけはご勘弁をー!」
不敗郎「・・・で?」
直「え?」
不敗郎「終わり?もういいかな?」
不敗郎「ネットの受け売り?それともそういう説教する漫画とかあるの?」
不敗郎「ジーク・デーモンちゃん」
ジーク「・・・」
不敗郎「じゃあこれから、漫画じゃない世の中の事について教えてあげようか」
タイツマン「このタイツマンがな」
〇塔のある都市外観
「さあ、これが我らの世界だ」
タイツマン「聞くがよい。無垢なる鬼の子よ」
タイツマン「この世界は最大多数の最大幸福という理念によって構成されている」
タイツマン「つまりは多数決だ」
タイツマン「多数決に抗うマイノリティ」
タイツマン「善であろうと偽善であろうと、純粋であろうと不純であろうと、この世界においてはマイノリティは全て鬼」
タイツマン「それが証拠に、奴らはいつの時も最後は相食み自滅してゆく」
タイツマン「なぜならねたみ、ひがみ、そねみで繋がった鬼だからだ」
タイツマン「ではマジョリティとは何か?」
タイツマン「お前が忌み嫌うダサいマツリゴトとは何か?」
タイツマン「本当は、鬼どもが心の底から欲しているものだ」
タイツマン「安心。健全。平穏」
タイツマン「貴様の如き鬼の子であろうと等しく安全に育んでくれたものの全てだ!」
タイツマン「人(マジョリティ)より生まれ育まれながらそれを嘲笑う鬼(マイノリティ)などに私は負けぬ」
タイツマン「私を笑うか?私を侮るか?」
タイツマン「お前から生まれたこの私を」
タイツマン「私は平穏なる世界によって正しく作り変えられたヒーロー」
タイツマン「私は未熟なマイノリティの落書きからパワーアップしたヒーロー」
タイツマン「私はゆるキャラとして、町のシンボルとして、老若男女に愛される分かりやすいヒーロー」
タイツマン「有用早急に優先されるべきは公共事業。子育て。医療。介護。福祉」
タイツマン「ゆえにタイツなのだよ」
タイツマン「タイツで十分なのだよ」
タイツマン「質素倹約簡素節約。安心安全なマツリゴトより生まれたヒーローはタイツであるべきなのだ」
タイツマン「我が名はタイツマン!」
タイツマン「これがタイツパンチだ!」
ジーク「・・・」
タイツマン「何がジーク・デーモンだ。貴様の存在など誰一人理解できぬ」
タイツマン「夢?いや、ただの妄想。厨二病」
タイツマン「一刻でもヒーローに選ばれたことを感謝するがいい」
タイツマン「さあ、私を認めろ。このタイツマンの力に屈するのだ!」
タイツマン「タイツパーンチ!」
ジーク「・・・・・・ぐぐぐ」
ジーク「ぐあああああーッ!」
〇役所のオフィス
直「わかりましたもういいですオニキングなんていりませんあげますさようなら!」
不敗郎「・・・」
映見「卜部・・・お前ぶっ殺すぞ」
遠藤「あ、俺が言おうとしたこと先に言われた」
映見「オタクの活動に限りある税金を使えないって・・・言い過ぎだよ」
遠藤「あ~あ。炎上だ~。俺、し~らね」
不敗郎「堂々としてりゃいいんですよ」
遠藤「堂々って、お前・・・」
不敗郎「ただの町長のご機嫌取りから生まれたお遊びじゃないですか」
不敗郎「それにタイツマンはもうあの子だけのものじゃ・・・」
映見「ジーク・デーモン!」
不敗郎「町民がタイツマンって言ったらタイツマンなんだよ!」
遠藤「おい、ちょっと落ち着け」
不敗郎「そういう話を子供にはっきりと教えてやっただけだろ。社会の代表として・・・」
映見「いつあんたが社会の代表になったのよ」
不敗郎「いつでもそうありたいと思ってるさ」
不敗郎「俺はこの町の、この国の人間として恥ずかしくないように生きようと努力してるんだ」
映見「そういう御高説、町長相手にも言える?」
不敗郎「は?今、町長関係ないだろ」
映見「周りに流されて、何も考えないで、ただ世の中に日和ってるだけなのを恥ずかしくない生き方って言うんだね」
映見「さすがお役所仕込みの詭弁。勉強になるわ」
不敗郎「何も考えてないって・・・」
映見「考えてないわね。ただの行き当たりばったり。何がタイツマンよ。厨二病に浮かれてるのはアンタじゃないの?」
映見「あんなものが、直ちゃんが精魂込めて作ったジーク・デーモン押しのけて流行るほど世の中薄っぺらくないと思うけどね」
映見「あ、ペラいのはアンタか」
映見「あんまり納税者をバカにしないことよ」
不敗郎「・・・」
映見「折角いいご両親に育てられたのに、日本の嫌な所だけ影響受けちゃったみたいね」
遠藤「え、映見ちゃん!」
映見「あ・・・」
映見「ゴメン。そういう意味じゃ・・・」
不敗郎「影響って。俺は・・・」
不敗郎「俺は日本人だ!」
不敗郎「KAWAYA!」
遠藤「そこはトイレでいいだろ・・・」
映見「ちょっと本気でボコりすぎちゃったかな」
遠藤「気にすんな。あいつも馬鹿じゃねえ」
遠藤「反骨のジャーナリストとサシでやりあって思い知っただろ。剥き身の正論で斬りつけられる痛みってやつをさ」
映見「やだ。その語彙力、ちょっとカッコいい」
遠藤「フッ、惚れるなよ。俺には妻と子が・・・」
映見「お疲れさまでした」
遠藤「・・・」
〇田舎の役場
不敗郎「・・・あ~あ」
不敗郎「生ぬるい風だな」
不敗郎「早く終わんねーかな・・・夏」
〇山間の田舎道
直「もういい。町おこしなんて・・・ジーク・デーモンなんてどうでもいい」
直「バカみたい。とっとと夏、終われ」
〇宇宙空間
二人のお望みどうり、何をどう頑張らなくても夏は勝手に終わってゆくことになる。
〇空
そして二人が望むと望まざるとに関わらず秋が、冬がやって来る。
〇東京全景
夏よりもはるかに熱い、秋と冬が。
〇お台場
テレビ局スタッフ「お早うございます!」
テレビ局スタッフ「お早うございます!」
テレビ局スタッフ「お早うございます!」
陣原「ういーす」
テレビ局スタッフ「お早うございます!」
テレビ局スタッフ「お早うございます!」
『お早うございます!』
『お早うございます!』
『お早うございます!』
〇黒
第二部・予告
〇研究機関の会議室
陣原「ローカルヒーローねえ・・・」
陣原「それ・・・取材できるか?」
〇大会議室
町議「いつあれが町の代表になったんだ!」
町議「あの取り上げられ方はいかんよ」
不敗郎「も、申し訳ありません・・・」
大倉「卜部・・・悪ふざけも大概にしとけよ」
〇教室
折口「いいかげんにしなよアンタ達!」
直「いいよ・・・」
折口「でも!」
直「もういいから!面倒くさい!」
〇古びた神社
不敗郎「見ただろ・・・あのテレビ」
直「・・・うん」
不敗郎「俺達のオニキングをバカにしやがって・・・」
不敗郎「Fu○kOff!」
直「・・・」
不敗郎「あ、ゴメン・・・」
直「DAEMON・・・」
不敗郎「え?」
〇黒
そしてもう一度・・・
ジーク・デーモンは甦る
〇レトロ喫茶
不敗郎「俺の問題なんだよ。俺が悔しいんだよ」
不敗郎「あのクソテレビ!」
〇大会議室
町議「やはり蛙の子は蛙でしたな。所詮あのケッタイな夫婦の倅だ」
町議「いいんですか?また町が赤っ恥をかきますよ」
大倉「仕方ない。町長もろともお灸を据えてやるとしよう」
〇山間の田舎道
不敗郎「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
『人なんて関係ない。さあマックも踊れ』
不敗郎「俺はマックじゃない。俺は卜部不敗郎」
不敗郎「不敗郎だ!」
〇テントの中
陣原「いいか。これからステージで何が起こっても止めるな。これは全部俺の計画だ」
陣原「じゃあそろそろお出ましいただこう。田舎の鬼の大将様にな」
〇中庭のステージ
『茶番は終わりだ!GO3Q!』
不敗郎「我が名は裏山戦士オニキング!」
〇モヤモヤ
『え?何なのあれ?』
『ちょっと意味分かんないんだけど』
『ゆるキャラとかいらないし!』
『ひっこめ!』
『浮かれるのもいい加減にしなさい』
『我々の税金をこんなことに使って』
『お灸は続くぞ・・・』
「いつまでボーッと突っ立ってんのよ!ヒーローでしょ!」
〇中庭のステージ
『タイツタイツ!タイツタイツ!』
『タイツタイツ!タイツタイツ!』
不敗郎「タイツパーンチ!」
第二部へ続く!