第19話 子猫の名は!?(脚本)
〇古いアパート
〇雑多な部屋
内職の花をせっせと作るみことアテナ。
高原みこ「も~小太郎、手伝いもしないでどこ遊びに行ってるんだろう」
アテナ「・・・この近くにいる気配はしますが」
〇古いアパートの部屋
その頃。光は小さなサボテンの鉢植えを挟んで、子猫と向かい合っていた。
嘉成光「さあ、こっちにおいで!」
子猫「ミ~・・・」
嘉成光「大丈夫、昨日は跳べたんだ! 立派な忍猫になるんだろ!」
子猫「ミィィ・・・」
嘉成光「ほら、おいでミコ!」
子猫「ミィッ!」
子猫は名前を呼ばれた瞬間、ぴょんとサボテンを跳び越した。
嘉成光「よーし! かなりよくやったぞミコ~!」
高原小太郎「姉ちゃん来てるの?」
嘉成光「小太郎君!!?? な、なんで!?」
高原小太郎「鍵開いてたから入っちゃった。 あれ、姉ちゃんは? さっき名前を──」
嘉成光「よっ、呼んでない! 呼んでないよ!」
嘉成光(子猫をお姉さんの名前で呼んでるなんて、小太郎君に知られたら・・・!)
〇雑多な部屋
高原小太郎「姉ちゃーん! 光兄ちゃんが子猫をみこって呼んでたよ!」
高原みこ「うええ~~光くん、気持ち悪~い」
〇古いアパートの部屋
嘉成光(違うんだ! これは愛ゆえに!)
高原小太郎「ねえ、子猫の名前なんていうの?」
嘉成光「ぶふぉお!!?」
光はうっかりと鼻から紅茶を飲んで吹き出した。
高原小太郎「たまちゃん? ちびちゃん?」
子猫「ミィ~、ミィ~」
高原小太郎「違うの?・・・じゃあ──」
嘉成光「こ、小太郎君! そんなことよりクッキーはどう? 僕の自信作なんだ!」
高原小太郎「光兄ちゃんの手作りか~。ゲテモノも、二度目となると勇気がいるかも」
そのとき、子猫が机に置かれたクッキーをペロリと舐めた。
子猫「ミイィ!?!?」
高原小太郎「ああ!? 逃げちゃった!」
嘉成光「待って! ミ・・・ッ」
高原小太郎「ミ?」
嘉成光「ミ、ミ・・・み、見つけに行かないとねぇ!!?」
高原小太郎「うん、そうだね!」
嘉成光(セーフ! さすが嘉成光! 天才忍者~!)
〇通学路
高原小太郎「おーい! 子猫ちゃんどこー?」
嘉成光「出ておいでー!」
嘉成光(ミコ! 名前を呼べばきっと飛んでくるのに!)
嘉成光「んん~~~呼びたい!!」
高原小太郎「何を?」
嘉成光「えっ、あ、今の口に出してた!?」
高原小太郎「うん、思いっきり」
嘉成光「な、なんでもないよ!? 俺は子猫の名前を呼びたいなんて一言も──」
高原小太郎「あっ!? 子猫ちゃん!?」
嘉成光「いた!? 探したんだよ、ミ──」
二人が駆け寄るが、そこにいたのは光の猫とは似ても似つかない猫だった。
高原小太郎「・・・ミ?」
嘉成光「・・・ッミ、ミスター小太郎~、確認はちゃんとしよーねっ!」
高原小太郎「突然なにその呼び方・・・」
嘉成光(セーーーーーフ! かなりギリギリだけど、セーフ!!!)
再び二人が歩き始めると、途中で道が二手に分かれていた。
高原小太郎「子猫ちゃん、どっちにいるかな?」
嘉成光「そっそうだ! 小太郎君、二手に分かれて探そうよ!」
〇屋根の上
嘉成光「これで、思いっきり名前を呼べる!」
嘉成光「ミコ! ミコミコミコー!」
〇川に架かる橋
嘉成光「ここにもいないか・・・どこにいるんだ! ミコー!」
高原みこ「ん? ここにいるけど?」
嘉成光「!!?? みこちゃん!?」
〇川に架かる橋
高原みこ「あはは! 私の名前、子猫につけたのか~! それ以上近づかないでくれる?」
嘉成光「そ、そんな! みこちゃん・・・」
高原みこ「私の名前も、もう二度と呼ばないでね! じゃーね!」
〇川に架かる橋
嘉成光(俺の恋、万事休す! 想像するだけで胸がえぐれる・・・っ)
高原みこ「光くん、急ごう!」
嘉成光「えっ?」
高原みこ「小太郎に頼まれたの! 子猫を見つけたんだって!」
〇山中の川
川べりにやってきた光たちは、激流の川の前にせり出す小枝の上を見上げた。
その細い枝の先で、子猫が震えて立ちすくんでいる。
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