きゅんメーカー

たかぎりょう

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〇モヤモヤ
少年A「ブスのくせに生意気なんだよ」
少年B「デブは給食食うな!」
少年A「気持ち悪いんだよ!」

〇女性の部屋
アリア「うぁーっ!」
アリア「ハア、ハア・・・」
アリア(いつもの夢か)

〇白いアパート
  西暦21XX年

〇ダイニング(食事なし)
アリア「おはよう」
ナミ「はぁ」
ナミ「朝ごはん、パン1枚だよ」
アリア「うん」
ナミ「食べれるだけありがたいと思いな」
ナミ「うちの生活が苦しいのは、あんたのせいなんだから」
アリア「ごめん・・・」

〇白いアパート
アリア(キュンか・・・)
カイ「久しぶり、元気にしてた?」
アリア「どちら様ですか・・・?」
カイ「僕だよ、同じ小学校だったカイ」
アリア「嘘っ!」
アリア「どうしてカイがここに?」
アリア(昨夜あんな夢を見たから?)
カイ「市から派遣された」
アリア「市から?」
カイ「ここじゃなんだからカフェでも行こうか」

〇テーブル席
カイ「キュンをエネルギーに変換する市の実験が始まって1年になるけど」
カイ「アリアは1度もキュンを提供していない」
アリア「知ってる」
カイ「これが続くと公共料金の割引が受けられなくなってしまうんだ」
アリア「そう・・・」
カイ「そこできゅんメーカーの僕が、アリアをキュンとさせるために来たってわけ」
アリア「カイが?」
カイ「うん」
アリア「私をキュンとさせる?」
カイ「任せて」
アリア「どういう神経してんの?」
アリア「帰る」
カイ「え、ちょっと待って!」
アリア「言っておくけど、私があなたにキュンとすることはない」
アリア「絶対に!」
カイ「はぁ・・・」

〇白いアパート
アリア(バイト増やすか)
カイ「おはよう!」
アリア「何してるの!?」
カイ「いや、だから君をキュンと・・・」
アリア「昨日断ったでしょ!」
カイ「断られても仕事だから困る」
アリア「そんなの知らない!」
カイ「ちょっと待ってー」

〇街中の道路
カイ「どこ行くの?」
アリア「ついてこないでよ!」
カイ「天気もいいし遊びに行かない?」
アリア「私には遊ぶ暇なんかない!」
カイ「はぁ・・・」

〇白いアパート
アリア(居ない)
アリア(諦めたか)
カイ「アリア、今日も素敵だ」
アリア「邪魔、いらない」

〇中庭
アリア(雨降っちゃった)
カイ「君が風邪ひいたら僕が困る」
アリア「だったら2本持って来ようか」

〇講義室
生徒A「後ろにイケメンいる」
生徒B「誰だろう?」
生徒A「声かけてこようかな?」
アリア(まったく)
カイ「あ、アリア」
カイ「授業一緒に受けないか?」
アリア「もう私につきまとわないで」
カイ「でも僕には任務が」
アリア「それ無理だから、無駄だから」
アリア「お願いだからこれ以上、私を困らせないで」
カイ「駄目か・・・」
カイ「もはや最後の手段しかないか」

〇白いアパート
S級キュンメーカー「アリアさんですね?」
アリア「あなたは?」
S級キュンメーカー「カイに代わって派遣されたきゅんメーカーです」
アリア「えっ!?」
S級キュンメーカー「私は彼よりも上級ですので、安心してお任せください」
アリア「カイは?」
S級キュンメーカー「聞いてませんか?」
S級キュンメーカー「退職しましたよ」
アリア「辞めた?」
アリア「あんなに必死だったのに・・・」
S級キュンメーカー「あと3日しかありませんからね」
S級キュンメーカー「彼も自分には無理だと悟ったんでしょう」
S級キュンメーカー「きゅんメーカーとして優秀とは言えなかったので」
アリア「3日って何ですか?」
S級キュンメーカー「市からの通知書、渡されてませんか?」
アリア「通知書?」
S級キュンメーカー「3/31までにアリアさんからキュンの提供がない場合、市から転出いただくという通知です」
アリア「嘘でしょ・・・」
アリア「すみません、カイの居場所ご存知ですか!?」

〇マンションの共用廊下
  ドアを叩くアリア
アリア「カイ! カイ!」

〇開けた交差点
アリア(どこにいるのよ)
アリア「お母さん、いま急いで」
電話(ナミ)「聞いてアリア!」
電話(ナミ)「さっきカイって人が来て」
電話(ナミ)「今後の生活費と隣町に新居を用意してくれたよ!」
アリア「どういうこと!?」
電話(ナミ)「昔あんたを虐めたお詫びだって」
アリア(覚えてたんだ!)
電話(ナミ)「これで私たち助かるね」

〇繁華な通り
アリア(とりあえず駅に急ごう)
ヒロ「いてぇーな」
ヒロ「気をつけろ!」
アリア「すみません!」
マサ「あれ?」
マサ「こいつ、アリアじゃね?」
ヒロ「マジか!?」
ヒロ「昔うちらが虐めてたあのデブ?」
アリア「えっ」
アリア(嘘でしょ)
ヒロ「あー、イテテ」
ヒロ「今ので腰やったな」

〇ビルの裏
ヒロ「どう償って貰おうかな」
マサ「こいつの家貧乏って噂だから金は無理だぞ」
ヒロ「じゃあ、やっぱりカラダか?」
???「僕が代わりに償うよ」
アリア「カイ!」
ヒロ「何だお前?」
ヒロ「って、カイ?」
ヒロ「おお、カイか!」
ヒロ「久しぶりだなー」
ヒロ「ちょうど良かった」
ヒロ「昔みたいに3人でこいつ虐めようぜ」
マサ「ダメダメ、こいつ見てるだけだったじゃん」
ヒロ「ああ、そういえばそうだった」
ヒロ「お前、虐めたくなさそうだったもんなー」

〇モヤモヤ
  そうか、思い出した
  カイはいつも苦しそうだった

〇ビルの裏
ヒロ「じゃあ黙って見てな」
ヒロ「おい、こいつ押さえろ」
マサ「了解!」
マサ「なに、この手?」
ヒロ「お前、邪魔すんのか?」
カイ「なんかさ」
カイ「お金を置いてきたり」
カイ「家を用意したり」
カイ「そんな事じゃ、罪悪感は全く消えなかったよ」
ヒロ「こいつ何言ってんだ?」
カイ「だから、こんなチャンスをくれた」
カイ「君たちに感謝するよ」
マサ「なんか良くわからんけどムカつくな」
ヒロ「面倒だからお前から黙らせてやる」
ヒロ「どうしたー」
ヒロ「また無抵抗かー?」
マサ「情けねぇ野郎だな」
アリア(どうしよう、カイが・・・)
アリア(でも)
アリア(元はと言えば、この3人が悪いんだ)
マサ「あいつ逃げやがった!」
ヒロ「何だって!?」
ヒロ「クソッ!」
ヒロ「まあ、いいや」
ヒロ「お前、見捨てられたぞー」
マサ「ヒーロー気取りだったのになー」
???「おい、そこで何してる!」
マサ「やべぇ!」
ヒロ「逃げるぞ!」
警官「待ちなさい!」
アリア「カイ!」
カイ「アリア・・・」
カイ「どうして戻って来たの?」
アリア「助けてくれた人を放っておける訳ないでしょ!」
カイ「今度は君を守れた・・・のかな」
アリア「バカよ、私なんかのためにこんな怪我して・・・」
カイ「あの時、こうしておけば良かった」
カイ「怖かったんだ、奴らに蹴られたり殴られるのが」
カイ「知らなかったから」
カイ「アリアに嫌われることの方がよっぽど痛いって事を」
アリア「カイ・・・」
カイ「それに比べたら、こんな怪我大したことなかったのにね」
アリア「大したことあるよ」
アリア「病院行こう、ね?」
アリア「立てる?」
カイ「うぅ・・・」
アリア「しっかりして」
カイ「ありがとう」
カイ「でも、これ以上君に迷惑はかけられない」
アリア「ちょっと、どこに行くの!?」
カイ「町を出るよ」
アリア「何言ってるの、そんな体で!」
カイ「そうだ」
カイ「これで最後だから言わせてもらってもいいかな?」
アリア「最後って・・・」
カイ「大好きだよ」
カイ「昔の君も、今の君も」
アリア「カイ!」
アリア(自分の財産をなげうって)
アリア(体もこんなにボロボロになって)
アリア(いったいどこに行こうっていうの)
  ピピッ
アリア「え?」
アリア「あ、あああ・・・」
アリア「カイ、待って!」
アリア「私をキュンとさせといて」
アリア「どこかに消えようなんて許さないから!」
  きゅんメーカー

コメント

  • すごく面白かったです!
    町から派遣されたキュンメーカーという設定、黙って新居を用意する優しさ、ヒロインの気持ちの変わり方、それに手は一切出さずやられるだけのヒーロー。かっこいいし、キュンとするし、なんかズルい!すごい気持ちを持っていかれました!
    難産だったそうですが、とても素敵なお話でした!ありがとうございました!

  • キュンのメーターっておもしろい発想ですね。
    過去のこともあって、頑なになってる彼女の心を解きほぐしたのは彼ですね。
    最後の方すごくキュンキュンしました!

  • キュンと させて頂きました。キュンという感情を そういう風に使う設定が良かったです。とても苦手分野だと思えないので またキュンを書いて下さい。

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