#1 スパイス妖精ただいま参上!(脚本)
〇実家の居間
唐岩 トメ(祖母)「『特別』におなり」
唐岩 トメ(祖母)「綺麗なだけの『お人形』はいつか捨てられる」
唐岩 トメ(祖母)「お前の母親のようにね」
香(幼少期)(『とくべつ』にならなきゃ・・・!)
〇オフィスのフロア
唐岩 香(からいわ かおる)「う~ん」
安里 茂美(あざと しげみ)「唐岩さん?」
唐岩 香(からいわ かおる)「安里さん!お疲れです」
安里 茂美(あざと しげみ)「それ──」
安里 茂美(あざと しげみ)「残業の連絡?」
唐岩 香(からいわ かおる)「ツィスタグラムです!」
安里 茂美(あざと しげみ)「業務後にしなさい!契約切られるわよ!」
唐岩 香(からいわ かおる)「こんな退屈な仕事、マジメにやってたら干からびちゃいますよ~」
安里 茂美(あざと しげみ)「ひかっ・・!」
安里 茂美(あざと しげみ)「喧嘩売ってンの!?ヘラヘラと!」
安里 茂美(あざと しげみ)「ちょっと若くて可愛いからって 調子づいて! いっぺん痛い目見ればいいのに!」
唐岩 香(からいわ かおる)「ハァー」
安里 茂美(あざと しげみ)(何よ、ガラにもなく溜め息なんて)
安里 茂美(あざと しげみ)(・・・スマホ?)
画面にカラフルな風船が舞っている
安里 茂美(あざと しげみ)「もしかして今日、誕生日?」
唐岩 香(からいわ かおる)「えぇ!スペシャルオーラ出ちゃってました?」
安里 茂美(あざと しげみ)「いや、その風船」
唐岩 香(からいわ かおる)「安里さんもツィスタグラマー!?」
安里 茂美(あざと しげみ)「ろっ!ROM専よ! 職場の人と繋がる気ないし」
唐岩 香(からいわ かおる)「え~?フォロってくださいよぉ~」
唐岩 香(からいわ かおる)「お祝いリプまだないの・・・ いいね👍️も少ないし」
唐岩 香(からいわ かおる)「誕生日終わっちゃうよ~ スペシャルな私を証明できない~」
安里 茂美(あざと しげみ)「泣くほど!?」
安里 茂美(あざと しげみ)「リアルで祝ってもらえばいいじゃない。友達とか、か・・彼氏とか」
唐岩 香(からいわ かおる)「この私に見合う人なんて、そうそういませんよ!」
安里 茂美(あざと しげみ)「ボッチなの?」
安里 茂美(あざと しげみ)「それでSNSにすがってンの?」
安里 茂美(あざと しげみ)「・・・」
安里 茂美(あざと しげみ)「メシウマw」
安里 茂美(あざと しげみ)「ちょっと見せて?」
〇SNSの画面
【アカウント名】かおるん
【フォロー】0人
【フォロワー】414人
今日はスペシャルディ♪
ジオールのリップで気分アップ♪
#スペシャル #キラキラ
13いいね👍️
〇オフィスのフロア
安里 茂美(あざと しげみ)「・・・」
安里 茂美(あざと しげみ)「誕生日って書いてなくない?」
唐岩 香(からいわ かおる)「そんな凡人みたいなこと~」
唐岩 香(からいわ かおる)「私レベルはほんのり匂わせる程度で十分!」
安里 茂美(あざと しげみ)(いや、気付いてもらえてないじゃん)
安里 茂美(あざと しげみ)(顔出しもないし、ザマァ不足だわ)
安里 茂美(あざと しげみ)「ね、自分を盛大に祝ってアップしたら?」
唐岩 香(からいわ かおる)「ハッピーバースディ トゥー ミー!?」
唐岩 香(からいわ かおる)「やだ~!負け犬みた~い!」
安里 茂美(あざと しげみ)「『一般的』な感覚ならそうね」
唐岩 香(からいわ かおる)「ムッ」
安里 茂美(あざと しげみ)「こなれ感があって逆にオシャレなのよ?ハイソな社会では」
唐岩 香(からいわ かおる)「ハイソ・・・」
安里 茂美(あざと しげみ)「ま、『普通』なら躊躇するわよね」
唐岩 香(からいわ かおる)「フフッ」
唐岩 香(からいわ かおる)「良い考えね!ありがとう!」
安里 茂美(あざと しげみ)「かかった!」
安里 茂美(あざと しげみ)「後は引き受けるから帰っていいわ 楽しい週末を♪」
唐岩 香(からいわ かおる)「ありがと~ございます!失礼しま~す♪」
安里 茂美(あざと しげみ)「フッ」
安里 茂美(あざと しげみ)「セルフバースディなんて誰がやったって虚しくて滑稽なだけよ!」
安里 茂美(あざと しげみ)「投稿楽しみにしてるわね、『かおるん』」
〇電車の中
〇渋谷駅前
〇SHIBUYA109
唐岩 香(からいわ かおる)「レッツ花金ショッピング♪」
スカウトマン「ヘイユー!」
スカウトマン「読モしな~い?」
唐岩 香(からいわ かおる)「マネキンになる気はないの」
スカウトマン(ガード固え~)
〇街の宝石店
〇川に架かる橋
唐岩 香(からいわ かおる)「利用限度額に達してたなんて」
唐岩 香(からいわ かおる)「どっかに落ちてないかな~ リーズナブルなスペシャル」
唐岩 香(からいわ かおる)(いい匂い)
唐岩 香(からいわ かおる)(あっちから──)
〇奇妙な屋台
マジョミ「ナマステ~」
唐岩 香(からいわ かおる)「なにやさん?」
マジョミ「多国籍料理よ。『エスニック』♪」
唐岩 香(からいわ かおる)「エスニック!」
唐岩 香(からいわ かおる)(屋台だしリーズナブルよね? それにこの香り──)
唐岩 香(からいわ かおる)(スペシャルな予感!!)
唐岩 香(からいわ かおる)「メニューください」
マジョミ「ごめんね~、店仕舞いでカレーしかないのよ」
唐岩 香(からいわ かおる)「え」
マジョミ「カレー、お嫌い?」
唐岩 香(からいわ かおる)「辛いのはあまり。普通すぎるし」
マジョミ「食べてみて!うちのは辛くないし、一味違うわ♪」
唐岩 香(からいわ かおる)(これがカレー?水っぽいし黄色っぽい)
パクッ
唐岩 香(からいわ かおる)「うッ──ま! デリシャスペシャル~♪」
唐岩 香(からいわ かおる)「こんなのはじめて~♪ この味?匂い?斬新~♪」
マジョミ「「ガラムマサラ」 ブレンドスパイスよ」
マジョミ「インドでは各家庭の味があってね 「おふくろの味」ってやつね♪」
唐岩 香(からいわ かおる)「おふくろの味──」
〇アパートのダイニング
あの日もカレーだった
唐岩 幸(からいわ さち)「今日はモヤシとキュウリと揚げ玉よ!具材費なんと57円!」
唐岩 香(からいわ かおる)「いつもの売れ残り弁当でいいのに」
唐岩 幸(からいわ さち)「たまには母親らしいことさせて?」
唐岩 香(からいわ かおる)「うっ」
唐岩 香(からいわ かおる)「ハァー」
パクッ
唐岩 幸(からいわ さち)「ねぇ香」
唐岩 幸(からいわ さち)「どうして病院辞めたの?」
唐岩 香(からいわ かおる)「・・・」
唐岩 幸(からいわ さち)「最初はお母さんも心配したわよ? 目立ちたがりな香が裏方事務だなんて」
唐岩 幸(からいわ さち)「でも3年も勤めてきたじゃない」
唐岩 香(からいわ かおる)「・・・」
唐岩 幸(からいわ さち)「・・・」
唐岩 幸(からいわ さち)「そういえば、康ちゃん帰ってきたって?」
唐岩 幸(からいわ さち)「しかも看護師の彼女さん連れて!」
唐岩 香(からいわ かおる)「お母さんまで負け犬扱いするの?」
唐岩 香(からいわ かおる)「初めから狙ってないわよ、あんな芋!」
唐岩 幸(からいわ さち)「芋って!」
唐岩 香(からいわ かおる)「医者の跡継ぎだろうが芋は芋よ!」
唐岩 香(からいわ かおる)「私に相応しいのは~ そう、商山先輩みたいな」
唐岩 幸(からいわ さち)「商山君?康ちゃんのクラスに少しだけいた──」
唐岩 香(からいわ かおる)「そう、東京からの転入生!」
唐岩 香(からいわ かおる)「そうよ!東京こそ私に相応しいわ! 私、東京に行く!」
唐岩 幸(からいわ さち)「無理よ東京なんて! 高卒でロクに職歴もないのに、どうするつもり!?」
唐岩 幸(からいわ さち)「ここで普通に暮らせばいいでしょ?どうしてそう高望みするの?」
唐岩 香(からいわ かおる)「普通、普通って──」
唐岩 香(からいわ かおる)「そんなこと言ってるからお父さんに捨てられたんでしょ!?」
唐岩 幸(からいわ さち)「誰がそんな・・・」
唐岩 幸(からいわ さち)「お義母さ──おばあちゃんね?」
唐岩 香(からいわ かおる)「そうよ!全部知ってる!」
唐岩 香(からいわ かおる)「つまらない女だから捨てられたくせに、よくもお父さんが死んだなんて嘘を!」
唐岩 幸(からいわ さち)「違うの香、あの人は──」
唐岩 香(からいわ かおる)「違わない!こんな貧乏臭いカレーしか作れないから愛想尽かされるんでしょ!!」
唐岩 香(からいわ かおる)「あっ」
唐岩 幸(からいわ さち)「・・・」
唐岩 幸(からいわ さち)「──好きにしなさい あなたの人生だもの」
唐岩 幸(からいわ さち)「夕飯もご自由に」
唐岩 香(からいわ かおる)「み、皆が悪いんじゃない、私を見くびって」
唐岩 香(からいわ かおる)「証明してやる」
唐岩 香(からいわ かおる)「私は特別なの!」
人形なんかじゃない
〇奇妙な屋台
唐岩 香(からいわ かおる)「・・・」
マジョミ「お客さ~ん?」
唐岩 香(からいわ かおる)「アハハッ飛んでた~」
唐岩 香(からいわ かおる)「完~璧ッ!これぞ求めてたスペシャル♪」
マジョミ「・・・」
マジョミ「血は争えないわね」
唐岩 香(からいわ かおる)「何か言った?」
マジョミ「何でもないわ ちょっと待っててね」
店員はワゴンの棚に身をかがめる
「ほんわか可愛いシナモンたん♪ パワフルるんるんクローブたん♪」
「ヤミヤミ魅力のナツメグたん♪ 爽やか華麗なカルダモたん♪ ボーイッシュ素敵なブラペパたん♪」
「ユーモア明るいコリアンダん♪ Cupidoドキドキ!クミンたん♪」
マジョミ「おまたせ!ハッピーバースデー♪」
唐岩 香(からいわ かおる)「わ~!ありがとう!やっぱオーラ出てた?」
マジョミ「おばちゃんアラセンだもの 何だってお見通しよ♪」
唐岩 香(からいわ かおる)「アラセン?」
『アラセン』
アラウンド センチュリーの略
100歳前後を意味する
唐岩 香(からいわ かおる)「ま、いいや。開けていい?」
マジョミ「・・・おうちに帰ってからね スパイスのお裾分けよ」
唐岩 香(からいわ かおる)「スパイス・・・」
唐岩 香(からいわ かおる)「いらない。料理しないし」
マジョミ「いいこと?香ちゃん」
マジョミ「これは貴女のカルマがもたらした出会い」
唐岩 香(からいわ かおる)「カルタ?」
マジョミ「カルマ、すなわち 過去の行いに導かれし『宿命』」
マジョミ「行為は良きも悪しきも、全て自分に返る」
マジョミ「それが因果応報の自然法則」
マジョミ「とにかく」
マジョミ「ここは貴女の運命の分かれ道 このご縁、『業』となすも『徳』となすも貴方次第よ」
唐岩 香(からいわ かおる)「・・・」
〇ゆるやかな坂道
〇アパートの台所
唐岩 香(からいわ かおる)「こなれバースディ投稿完了♪」
チラッ
古びた7つの小瓶にスパイスが入っている
唐岩 香(からいわ かおる)「めんどくて受け取っちゃったけど」
唐岩 香(からいわ かおる)「枯れた小枝じゃ映えないわ~」
????「モノの価値も分からぬ愚鈍め」
????「だ・・・だめだよ!勝手に喋っちゃ──」
唐岩 香(からいわ かおる)「誰?ストーカー!?」
唐岩 香(からいわ かおる)「なにこれ!?」
唐岩 香(からいわ かおる)「ちっちゃ!」
ハーティー・カルダモン「初めまして、唐岩 香さん 私たちはスパイス妖精」
ハーティー・カルダモン「貴女の願いをサポートします」
唐岩 香(からいわ かおる)「・・・」
唐岩 香(からいわ かおる)「写真には写らないのね」
唐岩 香(からいわ かおる)「じゃ、用はないわ。帰って」
シシズク・ナツメグ「なんだと?ニンゲン風情が──」
ニッキー・シナモン「はわわ・・・」
パクチー・コリアンダー「ひゃ~」
パクチー・コリアンダー「リアクション『からいわ』~ 『唐岩』ちゃんだけに」
「どっ!!!」
唐岩 香(からいわ かおる)「帰れ」
BP・ショー子「主(あるじ)に尽くさねば帰れぬのだ。何か望みはないか?あるいは悩みとか──」
唐岩 香(からいわ かおる)「あるわけないでしょ?特別で完璧な私に!」
唐岩 香(からいわ かおる)「こ~んなお人形ちゃん達に何ができるって?」
クミン・ジーラ「縁結び、家庭円満、子授かり・・・あなたのためなら何だって♥️」
チョージー・クローブ「『特別』なら負けぬよ? スパイスこそスペシャルでござる!」
唐岩 香(からいわ かおる)「ムッ」
唐岩 香(からいわ かおる)「・・・」
唐岩 香(からいわ かおる)「一万いいね」
唐岩 香(からいわ かおる)「そんなに言うなら一万いいね! ツィスタ、バズらせてみなさいよ!」
ハーティー・カルダモン「かしこまりました サポートいたします」
頭上に虹がかかりスマホに七色の光が差し込む
香は思わずスマホを手に取る
〇SNSの画面
ハピバ私!
今夜はエスニック屋台で
海外旅行の予行練習♪
#スペシャル #キラキラ
先程の投稿が溶けるように歪んでいく──
誕生日にスパイスもらった♪
スパイス料理で一万いいね!
目指しま~す!
#できなければアカウント削除します
〇アパートの台所
唐岩 香(からいわ かおる)「何これ乗っ取り!?消せないんだけど!」
唐岩 香(からいわ かおる)「アカウント削除とかふざけんな!」
チョージー・クローブ「背水の陣でござるよ 活が入るでござろう?」
唐岩 香(からいわ かおる)「料理なんてしないし!」
BP・ショー子「仕方ないだろ?僕らは料理を介さないと手伝えないんだ」
唐岩 香(からいわ かおる)「じゃ、取り消す!」
パクチー・コリアンダー「キャンセルは、できやんぜ!ルール」
唐岩 香(からいわ かおる)「やってやるわよ! 自力でバズって追い出してやる!」
唐岩 香(からいわ かおる)「消されてたまるか!スペシャルな私の証!」
唐岩 香(からいわ かおる)「誰が何と言おうと!私は特別なんだから!」
根本さんこんにちは!
スパイスがテーマの妖精ちゃん達、可愛いすぎます😍
主人公が難ありなのも今後の展開でどうなっていくのか気になります!
あー!カレーがたべたくなってきました!😂👍
主人公は性格に難があるような感じですが、共感できるところもあるので応援したくなります。妖精ちゃん達、賑やかでかわいくて楽しくなりそうですね!
主人公が個性的で、一筋縄では行きそうにない香がプンプン漂ってますね!
妖精たちとの今後の絡みが楽しみです😄