その男、タイツマン!(脚本)
〇中庭のステージ
ユウト「だ~か~ら~♪」
ナオキ「桃栗三年俺一秒!」
ナオキ「桃栗三年俺一秒!」
ユウト「今夜はお前と鬼退治!」
けんけん「丑三つだけにねっ!」
ファン1「キャーッ!ユウトー!」
ファン2「ナオキー!ナオキーッ!」
不敗郎「い、違法駐車はダメー」
不敗郎「ゴミは持ち帰ろー」
スタッフ「あのースミマセーン」
スタッフ「もうちょっと隅によけてもらえますか~?カメラに映っちゃうんで~」
不敗郎「あ、はい」
スタッフ「あとそのプラカード下げてください。他のお客さんのご迷惑になるんで」
不敗郎「もうしわけありません。すぐ直します」
〇田舎の空き地
チャラ男「あーくそ田舎がよ。交通の便、超悪ィ」
チャラ子「でも生GO3Q見れて楽しかった~」
チャラ男「早く乗れよ。渋滞巻き込まれるぞ」
不敗郎「こんにちは」
チャラ男「な、なに?」
不敗郎「あ、あの。ここは一応私有地となっておりまして」
チャラ子「ただの草むらじゃん」
チャラ男「何その格好。変態?警察呼ぶよ」
不敗郎「いえ。私、市役所の者でして・・・」
不敗郎「町おこしのPRも兼ねてこのようなコスチュームを」
チャラ男「ああ?んなことしてる暇あったら臨時駐車場のひとつも作れや!」
チャラ男「隣町の会場まで何キロ離れねえと車止められねえんだよ」
チャラ子「町にお金落としてあげてるんでしょ!」
不敗郎「す、すいません。善処いたします」
〇河川敷
ガラ悪男「桃栗三年俺1秒!ドーン!」
ガラ悪子「ギャハハ!超爆裂~!」
ガラ悪男「ドンキ~ドンキド~ンキの花火!」
ガラ悪~ズ「キャハハハハ!」
ガラ悪~ズ「バイト先のグッチョンの真似~『オクスリチョ~ダ~イ~』」
ガラ悪~ズ「似てね~!」
ガラ悪子「ちょちょ、誰それ誰それ~?」
ガラ悪男「マジ内輪受けだから!そういうのいらないから!ギャハハハ!」
不敗郎「こんばんは」
ガラ悪男「だ、誰?てか何?」
不敗郎「あの、外の県から来た方々でしょうけど。ここは町の憩いの川なんです。ですから」
ガラ悪子「ウチらこの町に住んでんだけど」
ガラ悪男「変質者?警察呼ぼうか?あ?」
不敗郎「そ、それは失礼しました。私、市役所の者でして」
不敗郎「町を楽しくするための一環としてこのようなキャラクターのコスチュームを」
ガラ悪男「町がクソつまんねーからこうやってダベッて遊んでんだろーが税金泥棒がよ!」
ガラ悪子「花火もちゃんと片付けようと思ってたし~超最悪超極悪超住民税泥棒~!」
不敗郎「すみません。貴重なご意見ありがとうございます」
〇役所のオフィス
不敗郎「・・・」
不敗郎「はあ~」
遠藤「お、お疲れのところアレだけどよ」
遠藤「ローカルヒーローってそんな扱いされるもんなのか?」
不敗郎「違う・・・何かが違う」
直「人が考えたキャラクターを不審者情報に載せないでもらえますか?」
不敗郎「おかしいな?ちゃんと役場の者って名乗ったんだけどな」
直「役場って名乗らないでもらえますか?一応ヒーローなんだから」
不敗郎(どうしろってんだよ)
不敗郎「っていうか遊んでないで、そろそろ帰って宿題でもしなさい」
直「OKプロジェクトが頼りないから夏休み返上してるんですけど」
遠藤「何OKプロジェクトって?オーロラプロジェクトみたいなもんか?」
不敗郎「未成年の前ですよ。通報しますよ」
映見「ねえ見て見てマック!」
〇SNSの画面
不敗郎「『きずな幼稚園なつまつりボランティア募集』」
不敗郎「・・・」
映見「Shit!なんでわざわざ非番の日にクソ暑い着ぐるみ来てガキの前でバカみたいな真似しなきゃいけねーんだ」
不敗郎「何も言ってないだろ!」
映見「じゃあやるんだね。さすが裏山町のヒーロー!」
不敗郎「・・・」
直(軍師、いらないみたい)
〇幼稚園
校庭に幾つかの出店。金魚掬い、輪投げ、スーパーボール釣りなど。保護者と園児達が楽しんでいる。
えみおねえさん「こんにちはー。みんなあつまってー」
保母さん「集まってー。はーい。みんな集合」
よいこ「はーい!」
えみおねえさん「みんな、こんにちはー」
『こんにちはー!!』
えみおねえさん「おねえさんははんこつのじゃーなりすとすみかわえみといいまーす。よろしくー」
〇体育館の裏
不敗郎「なんつー自己紹介だ」
〇幼稚園
えみおねえさん「みんなは好きなヒーローっているー?」
よいこ「んーと。ハートブレイクパリキュアのー。キュアバイビー!」
よいこ「仮面リーダーUターン!」
めっちゃよいこ「おとうさーん!」
えみおねえさん「みんなありがとー!」
えみおねえさん「でもね、実はこの町にもすっごくカッコいいヒーローがいるんだよ」
えみおねえさん「おねえさんはみんなにそのヒーローを紹介したくてここに来ましたー!」
〇体育館の裏
不敗郎「・・・」
不敗郎「あれ?」
不敗郎「俺、緊張してる?子供相手なのに・・・」
〇役所のオフィス
不敗郎「あーあ。折角の日曜日に子どもの相手か」
遠藤「卜部。子どもを甘く見るなよ。あいつらは大人と同じで空気を読むんだ」
直「確かに。こないだテレビで芸人が子供相手にスベり散らかしてました」
映見「いい? 啓蒙活動も説教も終わりよ。これからはしっかり町民にサービスするの」
映見「エンターテイメントよ!」
不敗郎「はいはい」
〇体育館の裏
「オニキングー!」
「はーい!もっとおおきなこえでー!」
「オニキングー!」
不敗郎「で、出ないと・・・」
〇幼稚園
えみおねえさん「もっともっとー!オニキ・・・」
不敗郎「あ」
えみおねえさん「え?」
不敗郎「・・・」
えみおねえさん(出方・・・!)
不敗郎「ええと・・・」
えみおねえさん「自己紹介・・・」
不敗郎「や、やあ。こんにちは」
不敗郎「私は裏山戦士オニキング・・・」
よいこ「なにあれー!へーん!」
よいこ「みたことなーい!へーん!」
『へーん!へーん!へーん!へーん!』
えみおねえさん「じゃ、じゃあ後よろしく」
不敗郎「おい!」
保母さん「こらみんな!静かに!」
『へーん!へーん!へーん!へーん!』
保母さん「・・・そうだ!」
保母さん「うわああっ!」
不敗郎「え?」
保母さん「く、苦しい・・・助けて・・・え~っと」
不敗郎「オニキングです」
保母さん「オニキング~!悪魔に乗り移られたの~!私と戦って~!」
保母さん「私の体から悪魔を追い出して~!」
不敗郎(凄いアドリブ。さすがプロだ)
不敗郎「と、トウッ!」
保母さん「うがー!やられたああ!」
保母さん「がおおーっ!」
不敗郎「ヤーッ!」
保母さん「まけたーっ!」
えみおねえさん「・・・」
えみおねえさん「・・・えーっと」
えみおねえさん「がおおおーっ!」
不敗郎「どりゃあああっ!」
えみおねえさん「・・・法廷で会おう」
〇モヤモヤ
不敗郎(何だこれ。何やってんだ、俺)
不敗郎(何が町おこしだ)
不敗郎(何がゆるキャラだ)
不敗郎(何がローカルヒーローだ)
不敗郎(畜生・・・畜生・・・畜生!)
不敗郎「ちくしょおおお!うおおおおおおおーッ!」
〇幼稚園
不敗郎「・・・」
めっちゃよいこ「タイツマンだ・・・」
めっちゃよいこ「タイツマーン!」
よいこ「タイツマーン!タイツマーン!」
よいこ「ターイツマン!ターイツマン!」
不敗郎「・・・そ、そうだ」
不敗郎「私はこの町の平和を守るためタイツ星からやってきた・・・」
不敗郎「裏山戦士タイツマンだ!」
よいこ「タイツタイツ!タイツタイツ!」
めっちゃよいこ「タイツタイツ!タイツタイツ!」
不敗郎「さあみんな一緒に、タイツパンチだ!」
『ターイツパーンチ!』
えみおねえさん「う・・・受けてる」
〇田舎町の通り
『ターイツマン!ターイツマン!』
直「・・・」