第二話 共鳴する”ヒビキ”(脚本)
〇汚い一人部屋
音無 響(おとなし ひびき)「配信予定時間まで、あと5分か」
俺は今、
とある同級生の“生歌配信”を待っていた
音無 響(おとなし ひびき)「にしても、 どうしてこうなったんだっけ・・・・・・」
〇学校の屋上
数時間前
日々木 歌音(ひびき かお)「大丈夫、音無くん?」
音無 響(おとなし ひびき)「どっ、」
日々木 歌音(ひびき かお)「ど?」
音無 響(おとなし ひびき)「それで、ど、どうしたんですか?」
日々木 歌音(ひびき かお)「あのね、」
日々木 歌音(ひびき かお)「まず、今日は勝手に画面見ちゃって ごめんなさい」
日々木 歌音(ひびき かお)「でも、あの後つい 気になっちゃって・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「私、音無くんが作った曲、 聴いたの・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)「ふぁっ!?」
音無 響(おとなし ひびき)(知られただけでなく、 ・・・・・・聴かれた!?)
音無 響(おとなし ひびき)(まさか、“また”あの時みたいに 何か言われる?)
〇階段の踊り場
元クラスメイトA「――!!」
元クラスメイトB「――――――!!」
〇学校の屋上
音無 響(おとなし ひびき)「(ゴクリ・・・・・・)」
日々木 歌音(ひびき かお)「すごかった!!」
音無 響(おとなし ひびき)「・・・・・・へっ?」
日々木 歌音(ひびき かお)「すっごく、カッコよかった」
音無 響(おとなし ひびき)(今、何て?)
音無 響(おとなし ひびき)「俺は、・・・褒められている?」
日々木 歌音(ひびき かお)「私、実は歌い手の活動してるの」
日々木 歌音(ひびき かお)「そして、オリジナルソング作ろうと したんだけど」
日々木 歌音(ひびき かお)「自分でやるのは、中々難しくって」
日々木 歌音(ひびき かお)「誰かに依頼した方がいいのかなって 考えたからさぁ」
日々木 歌音(ひびき かお)「だから、身近にあんな凄い音楽 作れる人がいるって知って、」
日々木 歌音(ひびき かお)「いても立ってもいられなく なっちゃって・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「つい、いきなりお願いしちゃった!!」
音無 響(おとなし ひびき)「・・・・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)「あー、な、なるほど?」
日々木 歌音(ひびき かお)「そうなの!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「もちろん、報酬も払うから、ね、お願い」
音無 響(おとなし ひびき)「えぇっと・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「まぁ、いきなりだもんね。仕方ないか」
日々木 歌音(ひびき かお)「じゃあ、とりあえず私の歌を聴いてよ」
日々木 歌音(ひびき かお)「今日、生歌配信やるから!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「あっ、ちなみに活動名は“hibiki”」
日々木 歌音(ひびき かお)「話聞いてくれてありがと!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「じゃあね、音無くん!!」
〇汚い一人部屋
音無 響(おとなし ひびき)「あの時は、驚きすぎて言葉が出なかった」
音無 響(おとなし ひびき)「あと、日々木さんの勢いも凄かった」
音無 響(おとなし ひびき)「でも・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)「褒めてくれたな」
そんな事を考えている内に、
放送が始まった。
画面には、手元だけが映されていた。
どうやら、弾き語りメインらしかった。
〇豪華な客間
日々木 歌音(ひびき かお)「みんな、来てくれてありがとう!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「それじゃあ、早速一曲目」
日々木 歌音(ひびき かお)「『シング・ソング・サング』」
日々木 歌音(ひびき かお)「~♪~」
『やっぱ、上手いな』
『声可愛いし、最強!!』
『もっと、評価されるべき!!』
〇汚い一人部屋
音無 響(おとなし ひびき)「・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)(すっげぇ・・・・・・上手い)
音無 響(おとなし ひびき)(しかも、3桁ぐらいの視聴者いるし)
音無 響(おとなし ひびき)(固定ファンもちらほら)
音無 響(おとなし ひびき)「別に、俺じゃなくたって」
音無 響(おとなし ひびき)「もっと有名な人に 頼むべきなんじゃ・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)「・・・・・・・」
〇学校の昇降口
日々木 歌音(ひびき かお)「おはよ、音無くん!!」
音無 響(おとなし ひびき)「おっおはよう・・・・・・日々木さん」
日々木 歌音(ひびき かお)「ねぇねぇ、昨日の配信見てくれた?」
音無 響(おとなし ひびき)「まぁ・・・・・・一応」
日々木 歌音(ひびき かお)「見てくれたの!!ありがと~」
日々木 歌音(ひびき かお)「と・こ・ろ・で」
日々木 歌音(ひびき かお)「音無くん、ちょっとは考えてくれた?」
日々木 歌音(ひびき かお)「昨日のこと」
音無 響(おとなし ひびき)「あー、そのことなんですけど・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)「作曲頼むのは、やっぱり俺なんかよりも、もっと・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「あ、ちょっと、俺なんかってのは無しね!!」
音無 響(おとなし ひびき)「っ・・・・・・!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「私はどんな有名な人よりも、 音無くんの曲に惚れたから、 頼んだんだもん」
日々木 歌音(ひびき かお)「そうそう、それに」
日々木 歌音(ひびき かお)「昨日の、“返して”って言葉からさ」
日々木 歌音(ひびき かお)「きっと、真剣に向き合ってるんだろうな って感じて」
日々木 歌音(ひびき かお)「私が、一緒に挑戦したい人だって思ったの」
日々木 歌音(ひびき かお)「まぁ、他の理由があって作りたくない なら、仕方無いけど」
音無 響(おとなし ひびき)(・・・・・・そんな風に、言われたら)
音無 響(おとなし ひびき)「何だか、断りにくくなるなぁ」
音無 響(おとなし ひびき)「もう少しだけ・・・・・・ 考える時間をください・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「本当に!!考えてくれるの!!」
音無 響(おとなし ひびき)「(コクリ)」
日々木 歌音(ひびき かお)「じゃあ、一週間待つ!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「音無くんも、それで大丈夫?」
音無 響(おとなし ひびき)「だっ、大丈夫。多分・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「うん、それで決定ね」
日々木 歌音(ひびき かお)「本当に、ありがとう!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「でも、結構進むの早いから気を付けてね、」
日々木 歌音(ひびき かお)「時間って」
日々木 歌音(ひびき かお)「これから、よろしくね!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「それじゃ!!」
音無 響(おとなし ひびき)「こ、これから・・・・・・?」
このやり取りから、俺は・・・
毎日話しかけられる様になった
〇階段の踊り場
日々木 歌音(ひびき かお)「音無くん!!今日は調子どう?」
〇まっすぐの廊下
日々木 歌音(ひびき かお)「音無くん、夏服になって 何か気持ち変わった?」
〇住宅地の坂道
日々木 歌音(ひびき かお)「音無くんっ」
〇教室
日々木 歌音(ひびき かお)「音無くーん!!」
〇教室
クラスメイトC「日々木、最近なんか音無の奴と仲良くね?」
松田 絵美(まつだ えみ)「いや、あれはかおちゃんが 一方的に絡んでるだけのような・・・」
富山 大地(とみやま だいち)「俺、日々木が毎日“音無”の名前言うから」
富山 大地(とみやま だいち)「やっと、覚え間違えてたことに 気付いたんだぜ!!」
クラスメイトD「いや、自慢げに言う事じゃないし」
松田 絵美(まつだ えみ)「それにしても、何があったんだろうね?」
富山 大地(とみやま だいち)「うーん・・・・・・」
「さぁ・・・?/わからん!!/うーん?」
富山 大地(とみやま だいち)「でも、俺気になるから 今度、話しかけてみてぇな」
松田 絵美(まつだ えみ)「私も、かおちゃんに聞いてみよ」
〇汚い一人部屋
カチカチッ・・・・・・
音無 響(おとなし ひびき)「とうとう、明日になってしまった・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)(あれから、毎日話しかけてくるとは)
音無 響(おとなし ひびき)(クラスの人達からも、 不思議そうな顔されてたし)
音無 響(おとなし ひびき)(でも、周囲の目を気にしない所や ひた向きな部分は)
音無 響(おとなし ひびき)(きっと、ポップで明るい曲調 とかが・・・・・・)
音無 響(おとなし ひびき)「って、すっかり乗せられている気が しなくもない・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)「とりあえず、ぎりぎりまで考えよう」
〇屋上の入口
音無 響(おとなし ひびき)「ふぅ・・・・・・ 何だか、緊張するなぁ・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)「結局、まだ決心しきれてないし」
音無 響(おとなし ひびき)「それにしても・・・・・・」
〇教室
日々木 歌音(ひびき かお)「夕方、屋上で返事聞くね!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「ちょっとしたサプライズがあるの!!!」
〇屋上の入口
音無 響(おとなし ひびき)「一体、何なんだろう?」
音無 響(おとなし ひびき)(でも、今更日々木さんに 何されても驚かないかな・・・・・・)
音無 響(おとなし ひびき)「!!」
音無 響(おとなし ひびき)「これって・・・・・・」
〇学校の屋上
音無 響(おとなし ひびき)「俺の・・・・・・曲・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「っあ、やっと来た!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「どう?練習したんだ!!」
音無 響(おとなし ひびき)「本当に、俺に頼みたいん ですね・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「そりゃ、もちろん!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「さて、音無くん。答えは決まった?」
音無 響(おとなし ひびき)「・・・・・・答えを言う前に、 俺から一つ聞いていい?」
日々木 歌音(ひびき かお)「いいよ、何でも聞いて!!」
音無 響(おとなし ひびき)「どうして日々木さんは、 歌い手をやってるんですか?」
日々木 歌音(ひびき かお)「え?単純に、音楽が好きだから」
日々木 歌音(ひびき かお)「好きな事で、誰かの心を動かせるって 楽しいし、サイコ―じゃん!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「んでもって、いつかデビューして、 もっと多くの人を感動させたい!!」
日々木 歌音(ひびき かお)「音無くんだって、 誰かの心を動かしたいから、 曲を作ってるんでしょ?」
音無 響(おとなし ひびき)「俺は・・・・・・」
音無 響(おとなし ひびき)(最初は、そうだったはずなのに)
音無 響(おとなし ひびき)(俺は、有名なりたいとしか、 最近は思ってなかった・・・・・・)
音無 響(おとなし ひびき)「いつからだっけ?楽しいよりも、 苦しくなったのは・・・・・・」
日々木 歌音(ひびき かお)「さて、質問には答えたよ」
日々木 歌音(ひびき かお)「人生は一回きり」
日々木 歌音(ひびき かお)「折角なら、私と一緒に楽しもうよ!! 音無 響くん!!」
その言葉は、俺の琴線に響いた。
俺はようやく、
音無 響(おとなし ひびき)「・・・・・・やれるだけ、やってみます」
音無 響(おとなし ひびき)「補償は、出来ませんけど・・・・・・」
と、答えを出した。
この時の日々木は、
満面の笑みを浮かべていた。
〇黒背景
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