第18話 アテナ、呪われる!③(脚本)
〇岩山の中腹
須晴多山(すぱるたやま)の中腹──
激しい豪雨の中、みこたちは細い崖道を斜面に張り付くようにして歩いた。
男性陣が苦渋の表情を浮かべる中、みこは胸元にアテナを抱えたまま、楽しそうに崖路を進む。
〇山中の川
激流の中に点在する岩を、ジャンプして渡り歩く一同。
危うく流されそうになる木藤の横で、みこはびょんびょんと笑顔で岩を渡った。
〇けもの道
ようやく向こう岸にたどり着いたのもつかの間、今度は蜂の大軍が三人を襲った。
嘉成光「次から次へと・・・!」
三人は全力疾走して山の斜面を駆け上がった。
高原みこ「あはは! 逃げろ~!」
木藤健一「ハッ、ハライタマエ~~ッ!!」
〇岩山
息を切らして山道を駆け上がった先には、巨大な岩壁の斜面が立ちはだかっていた。
木藤健一「あの斜面を登れば、頂上です!」
高原みこ「えっ、もう!? もっとこの修行したかったな~!」
嘉成光「この勢いで、一気に駆け上がろう!」
「うおおおお~!」
みこを筆頭に、三人が全速力で斜面を駆け上がる。
ズザーッ!
木藤健一「う、うわぁ!?」
高原みこ「この岩、つるつるだ!」
嘉成光「いったぁ~・・・」
木藤健一「これが、伝説の地獄の滑り台・・・!」
嘉成光「正攻法じゃ無理か・・・」
木藤健一「でも、いったいどうしたら」
高原みこ「なせばなーる! 気合いだー!! おりゃあ!」
木藤健一「高原さん、無茶ですよ!」
みこは全力で斜面を駆け上がると、小さな岩に指をかけて、何とか落ちるのを踏みとどまった。
高原みこ「ふぬぬっ」
嘉成光「みこちゃん!」
高原みこ「いける! 待っててアテナ! 絶対呪いを解いてあげるからね!」
木藤健一「高原さんの、アテナさんへの強い思いが伝わってきますね・・・!」
嘉成光「・・・みこちゃん、頑張って!」
しかし次の瞬間、みこの手元の岩が崩れて転げ落ちる。
高原みこ「うわあぁあ!」
嘉成光「大丈夫!?」
高原みこ「うぅ・・・やっぱりアテナがいないとダメなのかな・・・」
木藤健一「うぅうっ、胸が・・・」
嘉成光「みこちゃん・・・」
高原みこ「アテナがいれば・・・」
嘉成光「アテナがいなくたって!」
高原みこ「光くん?」
嘉成光「ここは僕に任せて! 忍者の本気・・・見せてやる!」
光は手甲鉤(てっこうかぎ)を両手に装着して、岩にしがみついた。
嘉成光「ううっ、これはアテナのためじゃないからな! みこちゃんのために!」
高原みこ「光くん! がんばって!」
嘉成光「みこちゃん、ありがとう! うおぉ!」
光の伸ばした左手が、ついに岩壁の頂上へと届いた。
木藤健一「嘉成くん、やりましたね!」
〇岩山
数分後──
高原みこ「はい、わっしょい! わっしょい!」
木藤健一「絶対にロープを離さないでくださいよ! 最後まで集中してください、嘉成くん!」
木藤は体にロープを巻き付けて、岩の上から光に引き上げられた。
嘉成光「くっ、手を離さない俺を、誰か褒めてくれ・・・っ」
光はなんとか木藤を引き上げて、三人はついに岩山の頂上に降り立った。
木藤健一「千年に一人の修行を、とうとう成し遂げてしまった・・・」
嘉成光「君はぶら下がってただけだよね!?」
木藤健一「今までにない、強い力が体の底から湧き上がってきます!」
すると空に暗雲が立ち込めて、雷の音がピシャーンと鳴り響いた。
高原みこ「なんか・・・すごそう!」
嘉成光「今度はいけるんじゃない!?」
木藤健一「ハアァアア~~~! ハーライタマエ、キーヨメタマエエェエ!、ホワァーッ! エイィイッ」
木藤健一「昨日の自分に、僕は勝―つ!!」
固唾を呑んでアテナを見つめる一同。
次の瞬間。アテナの胸元で小さな蓋(ふた)が開いた。
パカッ
高原みこ「え・・・っ」
嘉成光「そ、それだけ!? あれだけ盛り上げといて」
高原みこ「アテナ! 起きてよー!」
アテナ「・・・・・・」
木藤健一「は、敗北・・・っ!」
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