雄馬町の怪

平家星

#3 連れ去られた少女(脚本)

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〇森の中
  ミチオは怪人にさらわれたカナを探すため、静かな森をひたすら歩いた。
金丸ミチオ「カナちゃんッ! 返事してくれッ!」
  ミチオの叫び声がこだまするものの、返事はない。
金丸ミチオ「・・・・・・」
くだん「子供ひとりに、ずいぶん執着するじゃないか」
金丸ミチオ「・・・カナちゃんは、この町に来て最初にできた友達なんだ」

〇教室
ミチオ「前の学校での俺は、空気みたいに扱われてた」
ミチオ「部活にも入らず、趣味もなく・・・話し相手を見つけるきっかけを作れなくて。友達はゼロ」
ミチオ「結局そのまま、転校することになった」

〇田舎道
ミチオ「この町に引っ越してきたその日、カナちゃんを見かけたんだ」
小学生「カナちゃんの描いたウサギ、変なの!」
小学生「ウサギは耳が長いんだよ。 そんなのウサギじゃない!」
  同級生たちは、カナを置きざりにして笑いながら去っていった。
北条カナ「・・・・・・」
金丸ミチオ「・・・そ、それ見せて」
北条カナ「え? ・・・はい」
金丸ミチオ「俺は、いいと思うよ。 耳が短いうさぎも、かわいい」
北条カナ「・・・ほんと!?」
金丸ミチオ「それに、ほら」
  ミチオはスマートフォンで検索した画面をカナに見せた。
金丸ミチオ「実際に、耳が短いウサギもいるんだよ」
北条カナ「本当だ! かわいい!」
ミチオ「俺と同じように友達のいないカナちゃんとは、すぐに打ち解けられた」

〇田園風景
北条カナ「じゃあ、カナ。 お兄さんのこと、『ししょ~』って呼ぶ!」
金丸ミチオ「ははっ。師匠か」
ミチオ「根拠のない俺のアドバイスを素直に聞いて、喜んでくれて」
ミチオ「カナちゃんがいたから、俺自身も、新しい場所で頑張ってみようって思えたんだ」

〇森の中
金丸ミチオ「だから俺は、何としてもカナちゃんを・・・」
くだん「Zzz・・・」
金丸ミチオ「・・・なんだよ」

〇交番の中
三上健次「北条さんのとこのカナちゃんが、森の奥に連れ去られた?」
金丸ミチオ「はい、確かに見ました。 でっかい・・・化け物に・・・」
三上健次「化け物?」
金丸ミチオ「い、いえ・・・犯人の姿は・・・はっきり見えませんでした・・・」
  ミチオの話を聞いて、警察官の三上はカナの家に電話をかけた。
三上健次「はい。なるほど、わかりました。はい」
三上健次「確かに、夕方に外出して、家に帰ってないみたい」
くだん「・・・ムニャムニャ。トウニュウよこせ」
三上健次「ん? なんだ?」
  慌ててカバンをおさえる。
金丸ミチオ「・・・いえ。なんでもありません」

〇男の子の一人部屋
金丸ミチオ「どこ行っちゃったんだよ・・・」
  カナの作った人形を見ながら、ため息をつくミチオ。
くだん「・・・おい、開けろ」
  カバンで眠っていたくだんが顔を出した。
金丸ミチオ「ずいぶんゆっくり眠ってたな」
くだん「あれからどうなった? 娘は見つかったのか?」
金丸ミチオ「いや、今、警察が森を捜索してる。 俺は、帰らされた」
くだん「警察があの怪人を信じたのか?」
金丸ミチオ「そこは伏せたよ。 ・・・おかしな奴と思われたくないし」
くだん「ほう。足りない頭を使ったな」
金丸ミチオ「・・・なぁ。お前、カナちゃんの未来を、また予言できる可能性はあるのか?」
くだん「何かが再び起こるのであれば、見えるかもしれないな」
金丸ミチオ「じゃあ、俺と一緒にいて。 何かが見えたら、すぐに話してよ。いい?」
くだん「小僧のくせに、偉そうに・・・。 俺は出てってもかまわないんだぜ?」
金丸ミチオ「・・・トウニュウがお好きなんでしたっけ?」
くだん「在庫を切らすなよ。おっ・・・早速・・・」
くだん「見える・・・」
金丸ミチオ「何が見える!? カナちゃんか!?」
くだん「ほう・・・ひどいな。ぐちゃぐちゃだ」
くだん「首が・・・手足が・・・めちゃくちゃに折れてらぁ・・・」
金丸ミチオ「なっ、何だって!?」
くだん「カナじゃないぞ。知らない小僧だった。 お前と同じくらいの歳だろう」
金丸ミチオ「先に言えよ! ・・・でも、それって誰かが死ぬってことか?」
くだん「ああ、近いうちにな」

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