ジーク・デーモンとやらを有効活用せよ!(脚本)
〇闇の要塞
何処とも知れぬ世界。いつとも知れぬ時代。その城に美しき鬼が住んでいた
大魔王の子にして心優しきその鬼を、人は黒雲の鬼皇子ジーク・デーモンと呼んだ
だがある時、猜疑心に駆られた人々の群れがジークを襲った
〇闇の要塞
襲い来る、かつて愛した人々に向かって、ジークは血の涙を流しながら叫ぶ
ジーク「なぜこうなってしまったのだ?なぜに私達は憎みあわなければならないのだ?」
ジーク「全ては神聖なる、そして忌むべき神の策略。教会の教えが平和に暮らしていた我々を狂わせてしまったのだ」
ジーク「人々よ目を覚ませ!本当の敵は・・・神なのだーッ!」
〇役所のオフィス
遠藤「いや『神なのだー』って言われても・・・」
映見「それがさ、直ちゃんが言うには実はジークにはモデルがいてね。この町とも関係が」
不敗郎「いいよべつにそんな話どうでも」
遠藤「えー?よくないよお前。気になるだろ」
不敗郎「何ハマってるんですか」
遠藤「凄いね。最近の中学生ってそんなお話考えるんだ」
不敗郎「凄くないですよ。厨二病って言って昔から中学生がよくやるお遊びですよ」
遠藤「そうか?俺なんか中学つったらもうボインのことしか頭になかったけどな」
遠藤「あ、今もか」
映見「違うか。わはははは」
不敗郎「澄川さ。お茶飲んだら帰ってくんない」
不敗郎「オッサン全然働かなくなるからさ」
遠藤「誰がオッサンやねーん」
映見「誰がボインやねーん」
不敗郎(あー鬱陶しい)
映見「まだ話は終わってない。ほら、遠藤さんもちゃんと聞いて」
遠藤「え?俺も?」
映見「当り前でしょ。二人とも西國市市役所地域振興課なんだから」
映見「はいっ!あれから一か月経ちました!」
不敗郎「何から?」
映見「ふざけないで。真剣なの」
不敗郎「ゴメン」
映見「私じゃなくて直ちゃんが。見て・・・」
〇散らばる写真
映見「これ直ちゃん、いや絵師NAO先生のホームページ」
映見「ジークをタップして裏山町の写真にドラッグすると」
ジーク「私は裏山戦士オニキング。今回は裏山中央公園を紹介しよう。この公園は1973年当時の町長若竹ひろしの発案により・・・」
遠藤「すげーな。あの子こんなことできるんだ。仕事手伝ってくんねーかな」
不敗郎「じゃあ遠藤さん即クビになりますね」
遠藤「卜部君。僕の右手がいつも握りこぶしなのは何故か分かるかね?」
不敗郎「口が過ぎました」
映見「直ちゃん、自分のホームページをお役所仕事用に変えてくれたんだよ」
不敗郎「裏山戦士オニキング・・・」
映見「勝手な名前名乗らせてさ・・・」
不敗郎「・・・」
〇役所のオフィス
映見「ただの中学生がこの寂れた町を一生懸命紹介してくれてるのよ」
映見「これを見て何か言うことはないんですか?」
遠藤「有難い事です」
不敗郎「頭が下がります」
映見「表彰式から一カ月。今度は私達大人が直ちゃんの才能を盛り上げてあげる番じゃないの?」
映見「それが官民一体ってものじゃないの?」
遠藤「仰る通り」
不敗郎「その通り」
映見「ポスターにするとか。シールやクリアファイル作るとか。企業と提携するとか」
映見「せっかく作ってくれたキャラクターなんだから、アイデアを出して生かそうと思わないの」
遠藤「はい!ご意見しっかり受け止めます!」
不敗郎「緊張感をもって注視しつつ今後前向きに善処いたします!」
映見「今やれや!公務員か!」
不敗郎「公務員だよ!」
不敗郎「新聞にも載ったし市報にも取り上げられたし。充分だろもう」
映見「新聞?じゃあこの内容はなに?」
〇大広間
『若竹町長。キャラクターデザインコンテストを通して町おこしへの意気込みを語る』
〇役所のオフィス
映見「どこが十分なのよ。何が町おこしよ。これじゃ町長が自分の人気取りに利用しただけじゃない」
映見「私は許せないのよ。若い才能が権力者の私欲に利用されて捨てられるのが」
映見「反骨のジャーナリストとして、こういうのって耐えられないのよ!」
不敗郎「じゃあお前が書いた記事はなんだ!」
〇大広間
『若竹町長!中学生絵師と素敵に握手!男、若竹がんばります!』
〇役所のオフィス
映見「仕方ないじゃん!私平社員なのよ!編集長がこれでいけって言ったら、これでいかなきゃいけないの!文句ある?」
不敗郎「文句しかねえよ!一行くらい反骨しろよ!」
オサエ「ウラちゃんいる~?」
オサエ「これ~。またスマフォ―が壊れたんだけど~」
不敗郎「はい!」
オサエ「あれ~ちゃんと押してるんだけどねえ~」
オサエ「はいどうぞ」
不敗郎「全く・・・」
遠藤「卜部よう。寂しい婆ちゃんの相手すんのも俺らの仕事だぜ」
遠藤「いただきまーす」
映見「直ちゃん嬉しかったと思うんだ。どんなコンテストであれ自分の絵が優勝して。だから力になってあげたいの」
〇散らばる写真
ジーク「私は裏山戦士オニキング。今回は裏山町商店街を紹介しよう」
不敗郎「・・・」
〇役所のオフィス
遠藤「なあ、俺、キャラクターってよく分かんねえけどさ。こういうのって着ぐるみとか作るんじゃねえか?」
遠藤「そんで祭りとかに出て。こう・・・子供のヒーロー的な」
遠藤「違うか。ははは」
映見「いや、違わない」
不敗郎「そっか。ローカルヒーローってやつか」
映見「何で思いつかなかったんだろ?」
不敗郎「多分一番面倒臭そうなアイデアを意識的に除外してたのかも知れない」
遠藤「組織人の防衛本能だな」
映見「でも思いついちゃった以上、もうやるしかないでしょ。直ちゃんきっと喜ぶよ」
遠藤「フッ、そうだな」
不敗郎「よし分かった」
不敗郎「シールでいいな!」
映見「いいわけあるか!」
不敗郎「だって着ぐるみなんて作れねーよ。時間とか予算とか仕事とかさ」
映見「言い訳すんな!負けんなよマッケンロー!」
遠藤「どうするよ・・・」
不敗郎「どうしましょう・・・」