お嬢様は秘密を持っている

粟野比菜

第二話 「お嬢様の正体」(脚本)

お嬢様は秘密を持っている

粟野比菜

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〇テラス席
  月ノ宮さんは男だった(知ってたけど・・・)
  彼はなぜ女としてお嬢様学校にやって来たのか。
  事情を聞くために私達は場所を移した。

〇テーブル席
月ノ宮拓海「ふう、念のため、予備の制服を持っていてよかった」
本条美弥子「持ってたんだ・・・」
秋川玲衣「それで月ノ宮(るなのみや)さん、どうしてあなたは女生徒になっていらしたの?」
本条美弥子「あと、声で人を吹っ飛ばしたやつ、あれ何?」
月ノ宮拓海「うむ、ならば説明をしよう」
月ノ宮拓海「まず、俺が静ヶ丘学園へ来たのは、身を隠すためだ」
本条美弥子「・・・どういうこと?」

〇屋敷の門
  我が家、月ノ宮家は戦国時代から代々続く武術の家系であり『月ノ宮流喝術』を生業としている
本条美弥子「じゃあ、私達を助けてくれたあの時のやつって・・・」
月ノ宮拓海「喝術のひとつだ。他にも色々な技があるぞ」
  道場で武術を教えるのはもちろんのこと、政府や財政界、大物アーティストなどの警護を務めてきた

〇国際会議場
  そして先月、外交上重要になるとある国の外交官の身辺警護を任されたのだ
秋川玲衣「まあ! 大役ですわね」
  だがそこに待ったをかけた者がいた
  月ノ宮と同じく武術を生業とする家・・・星小路(すてらのこうじ)家だ
秋川玲衣「月ノ宮といい、風変わりな読みをなさる家ですわね」
本条美弥子(キラキラネームならぬキラキラ苗字・・・)
  星小路家はかつては忍びとして高名な大名に仕え、文明開化を機に武術道場を開いたと聞く
  だけど星小路家は月ノ宮家に比べて1歩劣るというのが世間での評価なのだと月ノ宮さんは説明した。
  そして、それを快く思わない星小路家はとんでもない計画をたてたのだ。

〇テーブル席
月ノ宮拓海「星小路家は次期当主である俺を誘拐し、警備の任務を星小路家に譲らせる計画を立てたのだ」
本条美弥子「仕事が欲しいからって誘拐企てたの!? それ犯罪じゃん!」
月ノ宮拓海「星小路家はかなりの手練れだ」
月ノ宮拓海「俺も腕には多少自信はあるが、集団でこられてしまえばどうしようもない」
  月ノ宮家の手練れは全員、身辺警護の仕事の準備のために出払ってしまい月ノ宮さんを守り切れるかわからない。
  そこで月ノ宮さんは家の仕事が終わるまで1ヶ月間ほどお嬢様学校で身をひそめることにしたという。
  理由はわかる。わかるけど・・・。
本条美弥子「だからって女装してお嬢様学校に来ることはないでしょ!」
月ノ宮拓海「待て、ちゃんと理由があるんだ」
月ノ宮拓海「静ヶ丘学園は試験は難しいが、入学条件はとても緩かったんだ」
秋川玲衣「そういえば設立されたばかりで1人でも多くの生徒が欲しいと聞いたことがありますわ」
月ノ宮拓海「ああ、出願書類にこの姿の写真を貼ったが特に問題もなく通った」
本条美弥子(問題なく通ったって、それ問題なんじゃ・・・)
本条美弥子(でもクラスのみんなは普通に受け入れてたし、目論見は成功してるんだよね・・・)
月ノ宮拓海「そしてもうひとつの理由は星小路の弱点にある」
月ノ宮拓海「星小路一派の男はウブで女性に対して免疫がなく、女は内気でコミュ障が多い」
月ノ宮拓海「お嬢様学校は絶好の隠れミノなんだ」
月ノ宮拓海「だから俺が女生徒になれば星小路家もむやみには近づけまいと思ったんだ」
本条美弥子「いろんな意味で近づけないよ・・・っていうか近づきたくないよ・・・」
月ノ宮拓海「以上が俺の事情だ・・・ところで唐突ですまないがふたりに頼みたいことがある」
本条美弥子「何よ?」
月ノ宮拓海「1カ月間だけでいい、俺と友人になってくれないか」
月ノ宮拓海「俺ひとりで学園生活を送るのは心もとない。 君達にサポートを頼みたいんだ」
本条美弥子「え、え~とパス・・・」
秋川玲衣「お引き受けいたしますわ!」
本条美弥子「ちょっと玲衣!?」
秋川玲衣「なんて気高いのでしょう!」
秋川玲衣「私、家を守ろうとする月ノ宮さんの心に感銘を受けましたわ!」
秋川玲衣「それに月ノ宮さんを助けることができるのは事情を知っている私達だけですわ」
本条美弥子「そりゃそうだけどさ・・・」
  玲衣のいう気高さはわからないけれど、彼に助けが必要なのはわかるし、私達が適任だというのもわかる。
  ・・・少なくとも、悪い奴じゃないんだよね。
本条美弥子「・・・わかった。 上手くやれるかはわからないけどさ」
月ノ宮拓海「ふたりともありがとう!」
月ノ宮拓海「俺のことは拓海、もしくはルナルナと呼んでくれ」
本条美弥子「じゃあ拓海で」
秋川玲衣「よろしくお願いしますね、拓海さん」
月ノ宮拓海「ところで俺も本条に質問があるのだが」
本条美弥子「え? 私に?」
月ノ宮拓海「なぜ君は男でありながら女装をして学校に通っているのだ」
月ノ宮拓海「俺のような事情があるのだろうか?」
本条美弥子「絶交するぞ」
  こうして思いがけなく、私は拓海と友達になったのであった。

〇名門の学校
本条美弥子「昨日は強烈な1日だったな・・・実は夢だったりとしないかな・・・?」

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