〇階段の踊り場
編集長「前回、「どんなお話なのか」を明確にしようというお話をしました」
編集長「設定の説明ではなく、主人公の立場から説明し、「誰が何をする話なのか」にするのがポイントでしたね」
編集長「作品添削の場では、「誰が何をする話なのか」を答えた作者にこんな質問をします」
編集長「そのお話って「どこが面白いんですか？」」
編集長「誤読を防ぐためにしている質問です」
編集長「作者の面白いと思うポイントが、その作品でちゃんと表現できているかどうかを判断するために質問いたします」
編集長「ただ、作者が思う作品の見どころと読者が読みたいと思う作品に乖離がある場合が多々ございます」
編集長「日記だったらまだしも、作品として発表するのですから、できれば大勢の人に読んでもらいたいですよね」
編集長「何を書くかは作者の自由ですが、読まれないのはとても不幸なこと」
編集長「読者が読みたいもの且つ作者が書きたいものでありたいものです」
編集長「また、長編を書き進めてからこの状態になるのは、時間を無駄にしてしまうのでできれば避けたい」
編集長「そこで、当社ではログラインやプロット（企画書）の段階でこのあたりの乖離を埋めていきます」

〇屋上の入口
編集長「では、具体的にお話していきましょう」
編集長「例題① 『殺し屋が企業に潜入調査する話』」
編集長「前回例題に挙げた「誰が何をする話」です」
編集長「このままだと、よっぽどの殺し屋マニアでない限りは、読みたいとは思わないでしょう」
編集長「では、どうすればこのお話を読みたいと思わせることができるでしょうか」
編集長「（凄腕だけどコミュニケーション能力ゼロの）殺し屋が企業に潜入調査する話」
編集長「主人公に長所と短所という設定をつけてみました」
編集長「え？ 殺し屋なのにコミュニケーション能力ゼロ？」
編集長「と、少し引っ掛かりができませんか？」
編集長「では、凄腕だけどコミュニケーション能力ゼロの殺し屋は、どんな企業に潜入調査したら面白くなるでしょうか」
編集長「凄腕だけどコミュニケーション能力ゼロの殺し屋が企業（の営業部）に潜入調査する話」
編集長「コミュニケーション能力ゼロの主人公が最も嫌がるような障害を設定してみました」
編集長「例題② 『漫画家のアシスタントが締め切り前に作品を完結させようと四苦八苦する話』」
編集長「こちらの方はどうなったでしょうか」
編集長「完成した企画書では、以下の通りとなっていました」
編集長「（デビューを夢見る）漫画家のアシスタント達が、」
編集長「最後の１ページを残して自殺した先生に代わって、締め切り前に作品を完結させるために四苦八苦する話」
編集長「漫画家デビューを夢見るという設定と、最後の１ページを残して自殺した先生に代わってという障害を付け加えています」
編集長「また、このお話は群像劇となったので複数形になりました」
編集長「誰（どんな問題や欲求を抱えた人）が（どんな障害や葛藤を乗り越えながら）何をする話」
編集長「このように、主人公の設定と障害の組み合わせで物語を面白くしていきます」
編集長「誰かが何かをする時、どんな人が、どんな障害にぶち当たったら面白くなるだろう」
編集長「ぜひ、これは面白いと思う組み合わせを考えてみてください」

〇学校の屋上

〇屋上の入口
編集長「さて、ログラインが完成したらこれで終わりではございません」
編集長「ログラインを作る目的は、作者が思う見どころと読者が読みたいと思う作品のギャップを埋めることです」
編集長「できあがったログラインは、ぜひ周りの人に話して意見を聞いてみましょう」
編集長「その際に、１つだけ見せて「これ面白い？」と聞くのはおススメしません」
編集長「よっぽど気が置けない仲でない限り、気を使って「面白い」と言われるからです」
編集長「執筆した作品を読む読者は第三者ですから、気を使ってはくれません」
編集長「ですので、最低５つくらいは用意して、「どれが一番面白い？」と聞くのがおすすめです」
編集長「先ほどの殺し屋の例題であれば、もし一卵性双生児で双子の弟が営業部にいたら？」
編集長「実は宇宙人で、人間と同じものを食べれないのに食品会社に潜入することになったら？」
編集長「等など、様々なパターンを作って意見をもらうようにしましょう」