怪異探偵薬師寺くん

西野みやこ

エピソード13(脚本)

怪異探偵薬師寺くん

西野みやこ

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〇田舎の一人部屋
諏訪原亨輔「訳あって、健のスマホを預かっているんだ」
諏訪原亨輔「それで、君のメッセージを見つけた」
  俺がスマホ越しに尋ねると、しばらくして梓くんから返答があった。
「・・・そ、そう・・・だったん、ですね・・・」
諏訪原亨輔「ああ、驚かせてすまない」
  俺は彼が泣き止むのを待ってから、小さく息をついて話を切り出した。
諏訪原亨輔「ちょっと聞きたいことがあるんだが・・・」
諏訪原亨輔「健は事故で死んだのに、どうしてそこまで君は自分を責めるんだ?」
諏訪原亨輔「いくら事故現場に一緒にいたからといって、そこまで自分を責める必要はないだろう?」
諏訪原亨輔「事故だったんだから、どうしようもない」
「・・・・・・」
  俺の言葉に彼は黙り込んでしまった。
  しばらく沈黙のあと、ぼそぼそとした声で話し始める。
「・・・俺、健にある写真を送ったんです」
「それ、どっかのトンネルの写真で、人によって幽霊が見えるんです」
  その言葉を聞いて、俺はさっきの写真を思い返す。
  彼はそれからまた言葉を詰まらせると、意を決したように唾を飲み込んだ。
「・・・で、その女の人が見えた人は呪いにかかって・・・」
「・・・1週間以内に、死ぬんです」
  今度は、俺が唾を飲み込んだ。
「その呪いから逃れるためには、女が見える別の誰かにその写真を見せなきゃいけなくて」
「俺も友達に見せられて、その女が見えて・・・」
「信じてはなかったけど、ちょっと怖くて、健なら許してくれるかなって、・・・」
  ごめんなさい、と小さく謝って、彼はまた鼻水をすする。
諏訪原亨輔「・・・偶然だ。健が死んだのは、そんなもののせいなんかじゃない」
  俺がそう言っても、しゃくりあげる声は止まらない。
  しかし突然、はっと息を呑(の)む音が聞こえた。
「・・・まさか、その写真、見てませんよね?」
  彼がこれ以上自分を責めないように、俺は嘘をついた。
  少しほっとした様子の彼のため息が聞こえる。
諏訪原亨輔「話を聞かせてくれてありがとう。 だが、あまり自分を責めすぎないようにな」
「・・・はい、ありがとうございます」
「でも・・・俺は・・・」
  歯切れが悪いことを言いながらも、彼は「失礼します」と通話を切った。
  俺は通話の切れた画面を見ながら、自分のスマホの通知が鳴ったのを聞いた。

〇古い図書室
  話を終えたスワは、両手の指をぎゅっと組んで俯(うつむ)いた。
薬師寺廉太郎「それ本物だよ。 健くんは怪異に殺されたんだ」
茶村和成「おい、薬師寺・・・」
薬師寺廉太郎「それが事実だから。 でも、今重要なのはそこじゃない」
  薬師寺はじっとスワを見つめる。
  そして薄く目を細めて、言った。
薬師寺廉太郎「・・・君も、見えたんでしょ」
茶村和成「・・・!」
  スワは表情を歪(ゆが)めて、静かに頷(うなず)いた。
諏訪原亨輔「・・・あのあと、俺のスマホを確認したら差出人不明のメールが届いてたんだ」
諏訪原亨輔「梓が健に送っていた例の写真が添付してあって、明後日の日付と17時55分って時間が記してあった」
諏訪原亨輔「ふと思いついて健の携帯を確認したら、健のスマホにも同じようなメッセージが届いてたんだよ」
諏訪原亨輔「・・・その時刻は、健の死んだ時間とおそらく一致していた」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
諏訪原亨輔「今も、信じてるわけじゃない・・・だが写真を見てからたしかに感じるんだ」
諏訪原亨輔「常に誰かに、見張られているような気配を」
  薬師寺はにっこりと微笑んで、長い足を組みかえた。
薬師寺廉太郎「話はわかったよ。スワくん、届いたメールを見せてもらっていい?」
諏訪原亨輔「え、いや、でも・・・」
  戸惑うスワに、薬師寺は心配を飛ばすようにケラケラと笑った。
薬師寺廉太郎「大丈夫大丈夫〜、俺には効かないから」
  俺の方を不気味に見るスワに、心配ないと頷きを返す。
  スワは表情をこわばらせたまま、おもむろにメールを開いて薬師寺に手渡した。
  薬師寺はスマホを受け取ると、俺に向かってとびきりの笑顔を見せる。
薬師寺廉太郎「はい、茶村」
茶村和成「え、」
  俺の目の前にあるのはスワのスマホだ。
  画面には暗がりのトンネル、そして白い女が写しだされている。
  画面を直視してしまったあと、絶句して薬師寺を見た。
  薬師寺はそんな俺を見て、さらに相好(そうごう)を崩す。
薬師寺廉太郎「はい。これで茶村に移ったから、スワくんはもう大丈夫だよ」
「!?!?!?」
  飄々(ひょうひょう)としている薬師寺に開いた口が塞がらない。
茶村和成「え、おま、な、なに・・・」
薬師寺廉太郎「なに? どうせ茶村には見えるでしょ?」
  ええ、そりゃめちゃくちゃ鮮明に。なんなら女の表情も見えそうなくらいにな!
  拳を握って薬師寺を睨みつけると、スラックスのポケットに入れていたスマホのバイブが鳴る。
薬師寺廉太郎「茶村、鳴ってるよ」
  スマホを見ると、1件のメール通知。
  差出人は不明。件名もナシ。
  本文には簡潔に、3日後の日にちと17時58分という時間が書かれてあった。
  サァ、と血の気が引いていくのが分かる。
薬師寺廉太郎「どう? 気配は消えた?」
  急に薬師寺に話しかけられ、スワははっと息を呑んだ。
  険しい表情を浮かべて、ゆっくりと頷く。
薬師寺廉太郎「じゃ、あとは俺たちに任せてくれればいいよ」

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