改造途中人間チュート

栗山勝行

第19話 『決戦『ZOD』基地』(脚本)

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〇黒
???「宙斗くん、起きろ!」

〇簡素な一人部屋
  誰かに揺り動かされ、宙斗は目を覚ました。
来明電奈「何があったんだ?」
班馬宙斗「あれ、電奈先輩・・・どうしてここに・・・」
  宙斗は、為定のアパート地下の研究所で改造手術を受けていたはずだった。
山田「為定先生から連絡があったんだよ。お前が倒れたから、アパートに来てほしいってな」
班馬宙斗(僕が倒れた? ・・・どういう事だ)
三輪燈和「ここに書き置きがありますよ? え~、なになに・・・」
三輪燈和「班馬、すまない。やはり、私にはお前を改造することなどできない」
班馬宙斗(改造が・・・終わってない?)
三輪燈和「私はこれから1人で『ZOD』基地へ乗り込むつもりだ・・・って、ええっ!?」
来明電奈「三輪くん、続きを読んでくれ!」
山田「貸せ、俺が読む!」
山田「・・・恐らく、生きては戻れないだろう」
山田「お前に一生かけて償うと言ったのに、私は、つくづく自分勝手な人間だ」
山田「数年前、人道に反すると言われ、科学者としての道を絶たれた私は──」
山田「好きなだけ研究を続けられるという甘言に乗り、『ZOD』の一員となった」
山田「過ちに気づいたのは、班馬・・・高校生のお前を人違いで改造してしまった時だった」
山田「その後、私は脳改造前の真城騎刃を解放し、混乱に乗じて『ZOD』から逃げ出した」
山田「姿を隠すため、知り合いのつてを頼って、高校の教師になることにした」
山田「お前のいた学校に赴任したのは、単なる偶然だ」
山田「私はお前と再会して思い知ったんだ。自分の犯した罪からは決して逃れられないのだ、と」
山田「私は真城と共に、『ZOD』を滅ぼす決心をした。以上が、私の罪の告白だ」
山田「班馬。勝手ついでに、私の願いを聞いて欲しい。私に何があったとしても、決して後を追わないでくれ」
山田「探偵部の皆と、幸せに生きてほしい。 それが、私の最期の願いだ」
三輪燈和「最期の・・・願い・・・」
班馬宙斗「・・・先生の後を追います」
山田「どうやって? 本拠地の場所はわかっているのか?」
班馬宙斗「それは・・・」
斐阿吉良「ボクが知ってるよ」
  閉め忘れたアパートのドアから甲斐阿吉良が入ってきた。
班馬宙斗「阿吉良・・・! 生きてたのか・・・」
斐阿吉良「真城さんが、体内の爆弾を抜き取ってくれたんだ。あの一撃で。無茶苦茶だよね、あの人・・・」
三輪燈和「体内の爆弾? それより『生きてたのか』ってどういうことですか?」
班馬宙斗「阿吉良も『ZOD』の改造人間だったんだよ」
班馬宙斗「それで、真城さんに殺されたと思ったけど、実は殺されてなかったことが今わかって・・・」
斐阿吉良「説明は後でいいよ。後を追うんだろ? 京獄博士・・・、為定先生のことを」
班馬宙斗「うん。力を貸してくれるかな?」
斐阿吉良「もちろん。ボクも腹が立ってるんだ。 自分勝手な大人にね」
班馬宙斗「先輩たちは、ここに・・・」
来明電奈「もちろん、同行させてもらうぞ。 顧問に、君を頼むと言われているからな」
山田「電奈様が行くなら、必然的に俺も同行だ。 お前達だけでは、心許ないからな」
三輪燈和「私だけのけものにするのはやめてくださいよ。秘密基地なんて、ロマンしかないじゃないですか」
斐阿吉良「やめといた方がいいと思うよ。 子供の遊びじゃないんだから」
来明電奈「私達は確かに子供だ。 いつか大人にならなきゃいけない子供だ」
来明電奈「年齢に関係なく、大人とは、自分の行動に責任を持てる人間だと、私は思う」
来明電奈「これまでの活動によって、私達は、それを判断するのに十分な経験を積んだはずだ」
来明電奈「これから死地に赴く覚悟が、本当にあるのか?」
三輪燈和「・・・やっぱり、私はやめておきます。 まだ、お母さんに恩返しできてないし」
山田「・・・すまん。男に二言有りだ。俺も堂明寺の跡取りとして、軽率な事はできない」
山田「班馬、甲斐、電奈様を頼む! この通りだ!」
  山田は2人に土下座をした。
山田「先輩も、命の危険を感じたら、絶対に逃げてください」
山田「2人もだ。死んだら悲しむ人間がいることを忘れるな」
班馬宙斗「山田、三輪さん。僕が戻らなかったら、両親に事情を説明してくれないかな」
班馬宙斗「僕は改造人間になったけど、皆のおかげで最期まで人間として生きることができたって」
三輪燈和「宙斗先輩・・・」
山田「お前の願いなんか、聞いてやるか。 ・・・だから、必ず生きて帰ってこい」
  2人と別れの挨拶を交わし、宙斗、電奈、阿吉良は、『ZOD』の本拠地へと向かった。

〇けもの道
斐阿吉良「ボクのIDは抹消されてるから、幹部用の出入り口は使えない」
斐阿吉良「正面から乗り込むしかないんだ。 2人とも、覚悟はいいかい?」
  宙斗と電奈は、黙ってうなずいた。

〇近未来の通路

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