改造途中人間チュート

栗山勝行

第18話 『遺志』(脚本)

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〇廃ビルのフロア
  真城騎刃は強かった。
  変身しない状態のまま、異常な速さのハウンドの攻撃をことごとく避け続けた。
班馬宙斗「凄い・・・真城さん・・・」
犬獣神ハウンド「嫌になるよなぁ、才能の差ってヤツは。 オレが駄犬と呼ばれるワケだぜ・・・」
犬獣神ハウンド「だが、これだけやられりゃ、オレだって学習するんだぜ?」
  ハウンドは踵を返し、宙斗の方を見てニヤリと笑った。
  裂けた口から、よだれが溢れた。
犬獣神ハウンド「お前の弱点は、非情になりきれねぇことだ!」
  攻撃対象を切り替えたハウンドの牙が宙斗に迫る。
真城騎刃「させるか!」
  真城は素早くハウンドの尻尾をつかんで、引き戻した。
犬獣神ハウンド「なぁんてな・・・!」
  反転したハウンドは、そのまま巨大な爪で尻尾にまとわりついた真城の体を捕らえた。
犬獣神ハウンド「捕まえたぁ~~!」
  筋力は圧倒的に変身状態のハウンドの方が勝っていた。
  締めつけられた真城の体がミシミシと音を立て軋む。
班馬宙斗(真城さん、どうして・・・!)
班馬宙斗(真城さんが非情になれないわけがない。 ためらうことなく、阿吉良を殺せたのに・・・)
犬獣神ハウンド「どれだけ、この時を待ち望んだことか! お前の首筋に牙を突き立てる瞬間をぉ!!」
  ハウンドは勢いよく真城の喉元に噛みついた。だが、真城はうめき声ひとつあげはしなかった。
班馬宙斗(うっ・・・!)
  思わず目を逸らした宙斗の視線の先に、真城のチョーカーが転がっていた。
班馬宙斗(あのチョーカーがあれば、真城さんは変身できる)
班馬宙斗(あれを届けられるのは、僕だけだ!)
  宙斗は身をよじって、必死に真城のチョーカーに近づこうとした。
  だが、腰に繋がれた強化鎖がそれを阻んでいた。
班馬宙斗(未だに真城さんのことがよくわからない。でも、僕はこの人を死なせたくない・・・!)
班馬宙斗(大丈夫・・・腰から下が千切れても、僕は改造人間だ!!)
  腰の外骨格が悲鳴を上げる。
  それでも宙斗は止まらなかった。
為定京二「やめろ、班馬!」
班馬宙斗「うぉおおおおおおおおおおお!!」
  次の瞬間、何かが崩れた音がして、宙斗は繋ぎ止めていた重みから解放された。
班馬宙斗(腰は・・・千切れてない!)
  振り返ると、強化鎖を繋いでいた廃ビルの巨大な鉄筋の柱が砕けていた。
班馬宙斗(今なら、手が届く・・・!)
  宙斗は手を伸ばし、真城のチョーカーを拾った。
班馬宙斗「真城さん!」
犬獣神ハウンド「よく頑張ったな、子犬ちゃん。 だが、少し遅かったみてぇだな」
  ハウンドの噛みついていた箇所──。
  真城の左肩から首の根元が既に食い千切られていた。
犬獣神ハウンド「変身装置は、もう機能しねぇ。そいつがあっても、こいつは変身できねぇのさ」
班馬宙斗「そんな・・・」
  だが、宙斗はあきらめなかった。
  即座に真城のチョーカーを自分の首に巻きつけた。
班馬宙斗(僕と真城さんは、同型の改造人間・・・、だったら、僕にも──)
班馬宙斗「変身!」
  見様見真似で宙斗は変身を試みた。だが、宙斗の体には何の変化もおきなかった。
為定京二「ダメだ、班馬・・・。お前の体には、変身装置は組み込まれていないんだ」
  為定は無念そうにうつむいた。
班馬宙斗「そうか・・・やっぱり、そうだよな」
班馬宙斗「僕は中途半端な、改造途中人間だったんだ・・・」
犬獣神ハウンド「ハッハッハ! 驚かせやがって、出来損ないが!」
班馬宙斗「・・・だけど、それはあきらめていい理由にはならない!」
  宙斗はチョーカーを捨て、全力でハウンドに体当たりをした。
犬獣神ハウンド「・・・バカが! 効かねぇんだよ、この出来損ないが!」
  ハウンドは真城の体を放し、片手で宙斗を弾き飛ばした。
  変身できない改造途中人間と、変身状態の改造人間の力の差は明らかだった。
  宙斗の体は、あまりにもあっけなく廃ビルの壁に叩きつけられた。
真城騎刃「ありがとう、宙斗くん。それで十分だ」
  次の瞬間、真城の拳がハウンドの心臓を貫いていた。
犬獣神ハウンド「はっ・・・? なんだよ・・・それ・・・?」

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