#6 正体(脚本)
〇けもの道
兵藤明「ち、違うんだよ。ひよりちゃん」
野村ひより「い・・・いやっ! 来ないで!」
兵藤明「金田さんがイノシシを見つけて、突然走り出したんだ」
兵藤明「穴のことを注意する間もなくて・・・」
野村ひより「嘘言わないでよ・・・。私、見たんだから」
野村ひより「あなたが金田さんを突き飛ばすところを・・・」
兵藤明「・・・・・・」
野村ひより「信じられない・・・。人を殺すなんて。 どうして・・・」
兵藤明「・・・仕方ないだろ」
野村ひより「えっ?」
兵藤明「お前が悪いんだぞ」
兵藤明「二人っきりの時は、あんなに俺を見てくれていたのに」
兵藤明「俺たち、結ばれたはずだったろ!?」
兵藤明「コイツさえいなければ、またあの幸せな二人に戻れるんだッ!」
野村ひより「そんな理由で、金田さんを殺したの・・・?」
兵藤明「そんな理由ってなんだよ! 俺は真剣なんだぞ!」
兵藤明「ひよりは、一度は俺のものになっただろ!」
野村ひより「どうかしてる・・・」
兵藤明「もっと俺を頼ってくれ」
兵藤明「俺だけを頼りに生きていれば、ひよりは幸せに暮らしていけるんだから!」
野村ひより「もう、無理・・・」
兵藤明「待てッ!」
怯えて駆け出そうとしたひよりを、明が呼び止める。
ひよりはビクッとして立ち止まる。
兵藤明「健司を探すつもりか?」
野村ひより「もう、私に関わらないで・・・」
兵藤明「こうなったら、もう仕方ないか。 ・・・俺、健司の居場所を知ってるよ」
野村ひより「!? どういうこと!?」
兵藤明「案内してあげる」
〇けもの道
兵藤明「このあたりだったはずだけどなぁ・・・」
野村ひより「・・・?」
兵藤明「ああ、ここだここだ」
明が倒れた木々を持ち上げると、そこには腐乱死体が横たわっていた。
死体の顔は、獣に食べられたのか、無残に崩れている。
野村ひより「キャァァァ!」
兵藤明「驚いた? これはこれで、感動の再会かな?」
野村ひより「う、嘘・・・」
兵藤明「よく見て? 君の旦那さんだよ」
野村ひより「な、何かの間違いよ・・・」
兵藤明「ははは、信じられないか。 こんなに変わっちゃ無理もないね」
兵藤明「こいつも、俺が殺ったんだ」
野村ひより「健司くん・・・。嘘でしょ・・・? 健司くんは、こんな服着てない・・・」
兵藤明「服? この状況だぜ? どっかで調達して着たんだろ」
ひよりは、死体を探り始める。
野村ひより「健司くんのわけない・・・そんなわけ・・・」
ひよりは、死体のポケットに何かが入っていることに気がつく。
恐る恐る取り出すと、それは健司のパスポートだった・・・。
野村ひより「そんな・・・健司くん・・・健司くん・・・健司くんっ!」
兵藤明「ああ、証拠が出てきちゃったかぁ。 かわいそうにね」
野村ひより「いやぁぁぁぁぁっ!」
兵藤明「はっきりわかったろ? 健司は死んだ」
野村ひより「うっ・・・ううっ・・・」
兵藤明「ひよりが生き残るには、俺と一緒にいるしかないんだよ」
兵藤明「この島には、俺たちしかいないんだから」
野村ひより「ふざけないで・・・」
兵藤明「ん?」
野村ひより「ふざけないでよ! 人殺しッ!」
野村ひより「あんたなんかと一緒にいるくらいなら、死んだ方がマシ!」
兵藤明「死んだ方がマシ・・・? 嘘だろひより? あんなに俺を頼ってくれたじゃないか」
兵藤明「俺は、お前に頼られてこそ、生きている意味があるんだよ」
野村ひより「何言ってんのか、わかんない・・・」
兵藤明「お前なしでは、俺の生きている意味が無いって言ってんだよ!」
兵藤明「なぁ、これからも、俺と一緒にいよう」
兵藤明「俺が、何から何まで、お前のお世話をしてやるからさ・・・」
野村ひより「気持ち悪い!」
野村ひより「よくも健司くんを・・・あんたなんか、一人で死ねばいい!」
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